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Sieben
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◇◇◇◇◇
翌日、目を覚ます蓮は全身の怠く重い体の痛みに顔を歪めた
腕を見ると点滴が打ってあり気絶をしているあいだに薬を投与して貰ったのだと蓮は考えると腕から針を抜く
「あ」
痛みのない喉を抑えて声を出してみるとしっかりと声が出たことに蓮は胸を撫で下ろした
「………飼い主様にお礼言わないと」
蓮は思い立ってベットから降りると屋敷の中を歩き回るがルイスの姿が見当たらない
「蓮!」
「あ、フィン様」
「何出歩いているんだお前は…」
「ご迷惑おかけしてすみません……」
「蓮のせいではないだろう?謝るな、それよりも体はどうだ?」
「もう大丈夫です、ありがとうございます」
「そうか………」
「…あの、フィン様?飼い主様の姿が見当たらないのですが…」
「ルイス様?……確か書庫に居ると言っていた気がするが」
「…書庫?お仕事ですか?」
「いや……あの人は仕事は何一つしないからな…現に俺がいつもこうして」
蓮は途端に眉間にシワを寄せてやつれた顔をしているフィンに同情をした
確かにルイスが仕事らしきことをしているのを蓮は見たことがないなと思う
「フィン様…肩でも揉みましょうか?」
「いや、お前は俺の奴隷じゃない……あ…済まない、言い方が悪かったな…」
「いえ…事実ですし気にしないでください」
「…………済まなかった…」
「ふふっ来た時はフィン様とても怖かったのに今は全くそんなイメージないです」
「それは俺が弱く見えるってことか?」
「いいえっ!違います、口調は変わりませんが本当はとても面倒見がよくいい人…いい方だと言いたいのです」
「………はぁ…蓮、俺はお前のことは珍しく好いている…だからあまり無茶をするなよ」
ぽんっと蓮の頭にフィンが手を置く
蓮はこの癖も恒例だと思った
フィンは本当に面倒見がいい
フィンにいつも何かと助けられてきた事を蓮は改めて胸のうちで感謝する
「ほら、ルイス様の元へ行くのだろう?」
「…行っても平気でしょうか?」
「大丈夫だろう」
「でわ、失礼します」
「待て一人で平気か?」
「勿論です!フィン様はお仕事ありますし俺一人で大丈夫です」
「………そうか、何かあったら呼ぶんだぞ」
蓮はニッコリと微笑み頷くとふかふかな絨毯がひかれている廊下を再び歩き出した
フィンは白いシャツに身を包み華奢ではあるが気丈な強かな空気を持つ蓮の背中を見てなんとも言えない表情をする
「………誰かが蓮に悪戯をしている」
昨日の出来事のことが未だ解決していないことにフィンはまた頭を痛めた
この城には沢山のヴァンパイアと人が暮らし訪れているため特定するのが難しい
そのあいだにもまた蓮が誰かの手により嫌がらせを受ける前になんとかしないとならないとフィンは思いながら自室へと戻った
そんな新たな悩みの種が自分だと知らない蓮は早くルイスに会いたいが為に足を速めて書庫へと向かう
曲がり角を曲がったときに、
見慣れた黒い髪に赤く光る瞳をした綺麗な男の姿が見えた
「飼い主様!」
「…………」
蓮はタタタと駆け出しルイスの元へ行こうとするがルイスは蓮を見た途端に背を向け歩き出す
「?!か、飼い主様…?」
「…………」
蓮はその行動に驚き不審に思いもう一度名を呼ぶがルイスは答えることなく歩いて行ってしまった
「……気分が優れないのかな」
もう見えなくなってしまったルイスの背中を追うのを辞めて蓮は改めて出直すことにする
大人しく自室に戻り窓の外を眺めては
ここで何かと役に立つ為に始めた勉強をしたりと穏やかな時間を過ごした
そしてまたルイスを探しに城を歩くも、ルイスは蓮を見る度に背を向け何処かへと消えて行ってしまう
さすがの蓮も何度目かのその態度に自分を避けている事に気付いた
「………俺、昨日のことで何か怒らせたのか…?」
夜も更け、今日1日のルイスの行動を思い返して蓮は不安に胸を締め付ける
目を瞑り眠ろうとするもなかなか寝付けなくなり不安と悲しみはます一方だ
ルイスに冷たくされることはあってもああやってあからさまに存在を拒否される事も逃げられる事もなかった蓮はジクジクと痛み出す胸の痛みに顔を歪める
やっと素直になりルイスに突っぱねる事をやめて少しでも開けた距離を取り戻せたと思ったのに前よりも遥に分かり易いルイスの拒否に蓮は堪らなく泣きそうになった
ベットから降りてカーテンを開くと窓の外には真ん丸のお月様が綺麗に輝いている
「……飼い主様みたい」
あの日海でも思ったが、月はルイスの様だと蓮は思った
そしてその月を見ていると初めて蓮がルイスへと憤怒をぶつけた青い薔薇の咲く温室の薔薇園が思いだす
ルイスだけの特別な場所で、特別に好きな時に来てもいいと許されたあの場所
蓮はあの一度以来行ったことがなかったが何となくルイスがいるんじゃないかと思うとカーディガンを掴み部屋を飛び出す
蓮はうじうじ悩むよりも行動した方が自分の性分にあっていると思い今すぐにルイスに今度はなぜ避けているのか聞くために廊下をかけて外へと出た
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