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四季折の羽:パロディ【白椿の花言葉】
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あの医者を探して、都の中を歩き回った。
人目を気にして、目の色を指摘されないように成海の羽織りを頭から被り通りを歩く。
ぎゅるるる、と、もう気にも留めなくなった腹の虫が鳴る。
足元ふらふらして、暑さで今にも倒れてしまいそうだった。
それでも歩き続ける。医者を探して、薬を求めて。
「………金…」
ぽつりと呟くと、足がそこで止まってしまう。
俺は、何も持たず都に来てしまった。
こんな状態で薬を下さいなんて言っても貰えるはずが無い。
「………」
リン、と簪に触れると鈴の音が鳴った。
もう俺にはこの簪しか売れる物が無い。
ゆっくり簪を髪から引き抜き、手の平の上に乗せてみる。
綺麗な白い椿の造花。小さくて綺麗な音色を奏でる鈴。
「………」
手を傾けてみるとまた、リン、と幸せな音が鳴り響く。
これだけは、どうしても手放す事が出来ない。
これしか売るものが無いのに、お前の命が掛かっているのに…俺は、これだけは手放したくない。
「ほぉ、お嬢ちゃんいい髪飾りを持ってるねぇ。」
「⁉︎」
簪を眺めていると、大きな影が俺を覆った。
見上げると、一人のお爺さん?が簪を見てにこにこと笑っていた。
「白椿の造花は珍しいねぇ。」
「……あの…」
俺……お嬢ちゃんじゃない…てか…誰?
「それは貰い物かい?」
「え……」
「貰い受けた物なら、くれた人にお嬢ちゃんはとても可愛がられているね。」
いきなり話し掛けてきたお爺さんは、淡々と話を進めて行く。
話に付いていけなくて首を傾げていると、お爺さんはしわくちゃな顔でにこりと微笑んだ。
「“愛らしい”」
「へ……」
「魅力、美しさ、そして、“愛らしい”」
「……?」
「白い椿の花言葉だよ。」
「……はな…ことば?」
簪を握り締めそう呟くと、お爺さんはコクンと頷き、「愛されているんだね。」と言った。
花言葉……そんなものがあるのか?…
「ところで。お嬢ちゃん。その簪と私の店で作った布生地。交換してくれないかい?これは鶴の羽を使って織った代物だ。きっとお嬢ちゃんに似合うと思んだが……」
「………」
お爺さんは背中に回していた手を俺へと差し出して来た。そして、しわくちゃな手には絵巻のような物が握られていた。
太陽の光を浴びて、差し出されたその布生地がキラキラと輝いている。
「鶴の……羽…?」
「ああ。一枚一枚丁寧に織り込んだ物だよ。その簪。とても珍しいから一目見た瞬間に気に入ってしまったんだ。どうだい?私のこの布生地と交換してはくれないか?」
「…………」
ゆらりゆらりと、煌めくその生地を見せられる。
美しい色を放ち、光沢を帯びるその生地が、鶴の羽を使って作られた物だなんて……。
「…どうやって……」
「ん?」
もう、これしかないと思った。
簪は、手放せないけど
「これ、どうやったら作れますか?」
羽なら、いくらでも手放す事は出来る。
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