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オレとおれ。その1
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年が明けて、数ヶ月が経った。
年末に酷い事があって、おれも、那央も、秋人さんも、新さんも、忍も、みんな氷崎のせいでクリスマスは台無しになった。
久しぶりに秋人さんの手料理を食べれるね。って那央と楽しみにしてたのに。
忍とも、パーティーしたらもっと仲良くなれるって思ってたのに。
でも、忍とはちゃんと本当の友達になれた。好きって言われて嬉しかった。もっと忍とも仲良くなりたい。いっぱい遊んで、忍が好きな本の話とか一緒にしたい。
「カワちゃん〜。ね〜ね〜カワちゃん〜。」
「………」
那央が後ろから覆い被さってて、耳元で「構ってくれないと死んじゃう。」ってブーブー言ってる。
今居るのは那央の家。ベッドの上でうつ伏せになっておれは本を読んでる。
最近学校が終わるとよく那央の家に来る様になった。あの事件が起こる前までは、一緒に街をフラついて喧嘩の相手を探してた。
ちなみに、おれも、那央も喧嘩は強くない。
だけど、秋人さんと新さんにずっと憧れてたから、強くなりたくておれ達は毎日喧嘩してた。
「秋人さん、本当に喧嘩やめちゃったんスかね〜?」
「…………」
「なんか…変な感じっス。もう秋人さん誘えねえっス。」
拗ねた声で那央がそう言って、おれはコクンと頷いた。
秋人さんが退院する日、おれ達も病院に駆け付けた。そしてその時言われた。「お前らも喧嘩もうすんなよ。」って。
それからだ。おれ達は言われた通り喧嘩を全然しなくなった。
おれは痛いの嫌いだから、喧嘩しなくなるのは良かったんだけど、那央はちょっと面白くなさそうに見えた。
「カワちゃん〜。ねぇカワちゃん〜。」
「……那央……重い…」
那央が面白くなさそうに見えたのは、きっと目指すものが無くなってしまったからだと思う。
喧嘩してる秋人さんを見る那央は、尊敬する目をして、凄く凄く楽しそうな顔をしてた。
「那央……まだ喧嘩…したいの?」
「ん?」
おれ、もう嫌だよ。
あんな痛い思いするのも、友達が傷付くところを見るのも。
「……秋人さん…忍の為に喧嘩やめた…」
「………」
「那央は、おれの為に喧嘩……やめてくれる?」
本を置いてそう呟く。
忍が羨ましいと思った。
とても大事にされてて、秋人さんの一番の存在なんだから。
「…おれの事…大事?」
那央は、憧れの人の存在が一番大きい。
だから……時々不安になる。
おれは、那央の一番になれるのかな?って。
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