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会長と日野 猫カフェデート その1
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高校最後の夏休み。一学期の期末テストも終わり、受験もひと段落した今年の夏休みはゆっくりと過ごせそうだ。
とは言っても、進学先に提出するレポートを書かなければならないのだけれど、期日まで余裕があるから焦る必要はない。
生徒会の仕事も今じゃ新たちに受け継がれ、僕はようやく普通の一般生徒として学園生活を送る事が出来ている。
前のように仕事に追われる日々から抜け出す事は出来たが、なんだか物足りない感じがする。
「いっちゃぁぁぁあああん‼︎」
そうだ、この馬鹿がいないせいだ。
「うぉおおん!会いたかったでぇー!」
空港に着いた途端にコレだ。
待ち合い室の扉の真ん前で待ち構えていたこの馬鹿は、僕の姿を見つけるなり大粒の涙と滝のような鼻水を垂らしながら容赦なく飛び付いてくる。
「日野、僕の服が汚れる…」
「ええんっ……あとで桐島に洗わせるぅ」
「桐島さんはここにいないでしょ。それにいつまでも桐島さんに頼ってちゃダメだよ」
「あだっ」
いつまでも離れようとしない日野の額に渾身の一撃、デコピンをお見舞いしてやる。
日野は少し大きめのボストンバッグを背負い、ここへ戻ってきた。
予定では、来週から日野は忙しくなるらしい。
正式に組の長になる為の準備が進んでいる中、今日から一週間、日野と僕は初めて二人で旅行へ行く。
目的地は……
「鎌倉ー‼︎大仏ぅー‼︎」
「日野うるさい」
「あ、ごめん…」
海外に行くわけでもないのに、ヤシの木がプリントされたTシャツに短パン、加えてサングラスを掛けて僕の前をウロウロする日野は見ていて恥ずかしい。
という割には、今日は僕も変に気合いが入ってしまい、「日野ならサングラスを持ってきそうだ」なんて推測までして、挙句、僕もサングラスをちゃっかり購入してしまった。
「いっちゃん?」
どのタイミングで出す……それともこのまま鞄の奥底に仕舞っておくべきなのだろうか。
「な、なんでもない…それより電車乗らないと」
「……?」
そうだ。これから地下鉄に乗るというのにサングラスを出すのはおかしい。何より、僕がサングラスを付けることによってこの馬鹿が余計に調子に乗るかもしれない。
一緒のものを付ける……サングラスを日野と……
「んふふ、いっちゃん髪切った?」
「え」
「なんか幼くなったなぁ〜」
「……そ、そうかな」
この馬鹿は呑気でいいな。
僕はサングラス一つに頭を悩まされているというのに。
「電車の中だよ…サングラス取りなよ」
「いーや。だってこれ外したらいっちゃん襲ってしまいそうやもん」
なにを訳のわからない事を言っているんだ馬鹿。
「はぁーっ、鎌倉楽しみやけんど、はよう夜にならんかなぁ」
馬鹿の発言に、まんざらでもない僕も馬鹿なのだろう。
「ん?いっちゃん?」
「……僕は君の馬鹿さ加減から目を背けるよ」
その為に、僕はサングラスをかけるんだ。
「俺とお揃いやん‼︎」
「うるさい」
前にいる子連れの親子が変な目で僕たちを見ているが、この際僕は気にしないぞ。
光を遮断するサングラスから見える風景。
隣には、僕の肩に頭を乗せてニヤニヤと嬉しそうに笑う馬鹿がいる。
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