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傷と噛み跡/オメガバースパロディ【成海×新】4
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「なに? 二人は知り合い?」
動けないでいると、視界にキラキラと光る生徒会長様が映り込んでくる。たじろぎながらも首を横に振るとその背後で突っ立っていた真っ黒な副会長が毅然とした態度で俺に近付く。
「成海、ちゃんと自己紹介っ」
一歩、また一歩とそいつが近付く度に、鼻につくその強い香り。目眩がしてしまいそうな程に頭の中が痺れて、レンズの向こう側、一点の光を宿すその黒い目に吸い込まれてしまいそうになる。
「な、なんだよっ…」
ピタリと目の前で足を止め、見下ろされる。ビリビリと体に走る電気の束。
心臓が、脳が、まるで複数の糸で絡め取られる様にぎゅうぎゅうと締め付けられて苦しい。
「っ…は…ぁ…」
汗が流れ、足に力が入らなくなりそうになる。
それでも必死に踏ん張っていると、目の前に立つアルファはいきなり俺の胸倉を掴んで来た。
「ゔっ」
踵が浮き、首が締められる中、スレスレまで顔が近付く。
「こら成海っ!」
真っ直ぐと俺に注がれる視線。周りの声なんて、全然耳に入らなかったが、生徒会長がこのアルファを俺から引き剥がそうとしているのは分かった。
ジッと視線が交差していると、ようやくこの男は口を開いた。
「…まるで犬だな…」
「なっ」
首にあるオメガである印を差され、吐き捨てる言葉と共に、掴まれていた胸倉を離され地面に尻餅をついてしまう。
「俺は反対。 こんな野良犬に出来る事なんてねぇだろ」
「ケホっ……ちょ、ちょっと待てよ!」
咳き込みながらも、背を向けるこの男の裾を掴む。
「なに」
「っ…」
脳天からつま先まで、俺の全てを射る冷たい目。
言葉の通り、俺を人として見ていないその目は俺が一番大嫌いなものでもあるのに、体が、心が、思考とは反対に無条件にこいつに引き寄せられる。
「か、勝手な事ばっか言ってんじゃねぇぞっ」
それはどのアルファとも違う、特別な何か。
その特別が何なのかは、気付いちゃいけない気がする。
「オメガだからって馬鹿にすんな!この…」
だからと言って、俺はコケにされたまま尻尾を巻いて逃げる様なそんな弱いオメガ達とは違う。
「くそ眼鏡がっ!」
このくそムカつくアルファに、屈してはならない。
「……口が悪い奴だな」
「はっ、ほんとの事言ってやっただけだろが」
アルファだからなんだ。オメガだからなんだ。
「威勢の良い奴は嫌いじゃないけど、お前…自分の立場分かってんの?」
そんなもの、何回だって覆してやる。
「知るか。アルファだからって調子ぶっこいてっと後ろから噛み付くぞゴラ」
「噛み付かれる側の奴が何言ってんの?」
「う、うるせぇ‼︎」
こいつには近付いちゃいけないと分かっているのに、こうして掴みかかるのが、プライドからなのか、それとも、こいつから感じる特別な何かなのか。
「入ってやんよ…生徒会!」
「…………」
「そんでてめぇをそこから引きずり下ろしてやる!」
どっちが強く俺の中で反応をしているのか、分からないけれど、どちらにせよ俺はこいつの事が嫌いだ。
「そういうのウザいんだけど」
「なっ…んだと!」
「樹。俺は先に戻るから。あとこいつが生徒会に入るの俺は断固拒否」
手の甲を俺に向け全く興味が無い素振りを見せ、くそ眼鏡アルファは去って行く。
「もう……ごめんね。成海はあんな事言ってるけど、僕は君に生徒会っ入ってもらいた…」
「くぁーっ‼︎ ムカつく‼︎ ムカつく‼︎ なんだあいつは‼︎」
「え、あ…」
地団駄を踏みながら頭を思い切り掻く。無性に腹が立って頭ん中どうにかなりそうだ。
「会長! 俺、生徒会に入りますから」
「本当?」
「はい!」
胸糞悪いくそ眼鏡。
「……チッ…なんなんだよあいつ…」
あいつの匂いが、体から消えない。
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