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今日はスタジオが静かだ
「楓さん、おはようございます」
「桜蘭、今日は静かだね」
「そうですね、昨日は騒がしかったけど・・・・・きっと歌夜がいないからでは?」
「そっか」
「今日は新曲のレコーディングらしいです」
「頑張ってるね」
「そうですね」
もしかして桜蘭なら・・・・・・
「ところで、盆栽に興味ある?」
「えっ・・・・・いきなりまた」
「よくよく考えると盆栽ってすごいよね」
「何がですか?俺にはおじーちゃんの趣味と認識していますけど」
「だって、あの大きな木があんなに小さくなってるんだよ」
「・・・・・・・・・確かに」
「盆栽は小宇宙だよ」
「・・・・・・・・・・・はぁ」
「どうやって作るんだろう」
「あっ・・・・じゃ、そろそろ練習なので」
「うん」
何だか逃げられた感が半端無いけど
プリンを食べながらぼんやり小宇宙の作り方を考えていた
「おや、楓」
「紫陽、もう大丈夫なの?」
「ああ、明日は紅のライヴだからね」
「そうだけど」
「痛みは、頻繁には来ないから大丈夫さ」
「そう」
でも、それって
確実に病気が進行しているって事じゃないの?
「昨日は心がずっと看病してくれたし、本当に助かっているよ」
「紫陽、あのさ」
「楓、私の気持ちは変わらないよ」
先に言われてしまった
やはり、心にはずっと隠し通すつもりなんだ
「ごめんね」
「何がだい?」
「もっと二人で居たいよね」
「このままでいいのさ」
「でも」
「思い出は楽しいものばかりとは限らないだろ?」
「・・・・・・・・・・・・そうだね」
二人で過す時間が多いほど、思い出も辛くなるって事かな
「でも、私には楽しい思い出がたくさん出来たよ・・・・・楓とのセッションも楽しかったしねぇ」
「俺もだよ」
「楓はもう私を超えた素晴らしいギタリストさ・・・・・私が認めるよ」
「俺はまだ」
「楓には楓の世界がある、それを大事にするんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ダリアのライヴは来月だったね・・・・・楽しみだ」
「うん」
来月までそうやって笑っていられるよね?
まだまだたくさん生きられるよね?
「じゃ、行くよ」
「紫陽!」
「まだ死ねないだろ?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「そういう事さ」
どう言う事なんだよ・・・・・と聞いてもきっと笑ってはぐらかされてしまうんだね
「あっ、楓さん」
「心、どうしたの?」
「紫陽さんを見かけませんでしたか?」
「今まで居たけど」
「もう!薬をまた飲まずに」
「薬嫌いなんだね」
「でも、今朝辛そうだったし」
「そう」
「とにかく捜して来ます」
「うん」
辛そうだった・・・か
全然そんな風には見えなかったし、気付かなかった
だから怖いんだ
突然、消えてしまいそうですごく怖い
「俺はまだまだ追いつけていないのに・・・・・・」
静かに忍び寄る死の恐怖はどんな感じなんだろう
それなのに笑顔の紫陽
泣きたい時に一人で泣くの?
本当にそれでいいの?
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