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苦悩の先の答え
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今日は心が仕事なので一人で病院に来ていた
病院に来たところでどうなるものでもないけど心が心配するし仕方がない
行ったと嘘をついてもバレそうだ・・・・・
診察を終え、ロビーで会計を待っていたが当分無理そうだ
いつも思う
こんなに混雑する程、病人が多いのかと
まだまだ順番が来そうにないので屋上に行く事にした
あそこにいたら風邪を移されてしまいそうな程、風邪をひいている患者が多かったしねぇ
空いているベンチに腰掛けて、屋上からの景色を見つめていた
青い空、白い雲、眩しい太陽
風に揺れるシーツやタオル
乾燥機よりも太陽の下で乾かした方がいいに決まっている
「あっ!」
その風に飛ばされてタオルが足元まで飛んで来た
「元気なタオルだねぇ」
「ありがとう」
タオルを拾い、笑顔が可愛い女性に手渡した
年齢は20代後半ぐらいかな
髪を束ねて綺麗なバレッタで留めていた
「綺麗な彫刻だねぇ」
「これですか?」
「ああ」
「新婚旅行で主人がプレゼントしてくれた物なんです」
「そうかい」
「高いのに無理して・・・・・・だから大事な宝物です」
「大切にしなくてはいけないねぇ」
「はい、貴方は誰かのお見舞いに?」
「いや、診察さ」
「ごめんなさいっ!でも、こんなところに居て大丈夫なんですか?」
「ああ、これ以上病気をもらいたくはないからねぇ」
「確かに、今風邪がはやっていますからね」
「そうだねぇ・・・・・・君は患者には見えないけど」
「ええ、私は主人が入院しているので」
「そうかい」
「正直、病院には無縁な人で、病気になった時、どうして主人なの?って毎日思っていました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「主人ったら、嘘が下手な人で・・・・・・」
「嘘?」
「はい、もう長くはないそうです」
「えっ?」
「なのに私の前ではいつも元気なふりをして・・・・・」
「きっと、悲しませたくないからじゃないのかい?」
「だと思います・・・・・でも、何も言わないまま消えるのは卑怯です」
「卑怯?」
「はい、辛いなら一緒に辛さを分かち合いたい・・・・でもそれが出来ないのなら最後まで一緒に居て、貴方と一緒に居られて幸せだったと伝えたい・・・・・無理して笑って欲しくなんかない・・・・・・突然消えるなんて辛すぎる・・・・・覚悟だって出来ていないのに、その覚悟すら与えてくれないまま・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・どうしてもう無理だと?」
「見ていればわかります、それに薬を調べればどんな病気かも」
「そうかい」
「だから私は彼が本当の事を言ってくれるまで何も言いません・・・・でも、すごく悲しいです・・・・・真実を告げてくれた方が愛されていると思います」
「君を悲しませない為だとは思わないのかい?」
「もう十分悲しみました・・・・・・愛しているからその悲しみを半分に分け合いたいのに・・・・・残される私の事を思うのなら真実を告げて欲しいのに」
「悲しみを分け合う・・・・・」
「そうです、先に消える人よりも残された人の方が悲しいに決まってる・・・・悲しませない為なんてそんなの・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ごめんなさい、私ったら初対面の人に愚痴なんて」
「いいさ」
「ホントにごめんなさい」
「真実を告げる事が本当の愛なのかねぇ」
「私はそう思います」
「そうかい」
「じゃ、そろそろ戻らないと」
「ああ、頑張るんだよ」
「はい、貴方もお大事に」
「ありがとう」
洗濯物を抱え、屋上から出て行く後姿をぼんやり見つめていた
「愛しているから悲しませたくない・・・・・それは私の偽善なのかも知れないねぇ」
「成程・・・・・・ねぇ」
ねぇ、神様・・・・・・私は愛を試されているのかい?
まさかこんな形で考えさせられるとは思わなかった
どうしたらいいのかねぇ・・・・・・
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