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あれからずっと、考えていた
心に事実を話すべきか否かを
「ん?誰だろう」
知らない番号だけど・・・・・・・
「ただいま・・・・っ、ごめん」
心が帰って来たけど、私が電話中だったのでそのまま部屋に向かった
そして・・・・・・・・・
「紫陽さん?」
持っていた携帯を床に落とし呆然と佇んだ
「どうしたの?電話は誰から?」
嘘だろ
これは嘘だ・・・・・だって突然すぎるだろ
確かに最近は忙しくて姉さんに連絡すら入れていなかった
前に電話で話した時は、最近飲みすぎだからお酒を控えなきゃとか笑いながら話していた
「紫陽さん!しっかりして、どうしたの?」
心の声で何とか倒れずに済んだ
「・・・・・・・・・・・姉さんが死んだ」
「えっ?」
「今、病院から電話が・・・・・・どうしてっ・・・・何でだっ!」
「とにかく、僕は和海さんに連絡を」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「すぐに戻ります」
突然消えると言う事はこう言う事なのか
何だこの耐え難い悲しみは
まだ話したい事もたくさんあった
もうすぐ誕生日だから一緒に祝おうと思ってレストランも予約していたのに
全て・・・・・一瞬で消えた
伝えたい事や話したい事
それすら言えないまま
「姉さんっ・・・・・・・」
この悲しみが突然消えると言う悲しみなのか?
だとすれば、心にも同じような悲しみを与えてしまうと言う事なのか?
何が、悲しませない為だ
そんなのは愛でも何でもないじゃないか
「紫陽さん、その・・・今言うのは心が痛みますが、葬儀の手配は和海さんが全てやってくれるそうです・・・・とにかく病院に向かいましょう」
「ああ」
本当に死んだのか?
冗談じゃないのか?
ずっとそんな事を考えていた
でも・・・・・・・・・・
地下の霊安室で横たわる姉さんを見た瞬間、涙が溢れ出した
「姉さんっ!!」
医者の話では、肝臓癌を患っていたらしい
仕事をするのもきつかっただろうに、そんな病気の事も一言も言わずに
私達はもともと薄命なのかと考えながら今の自分と心を重ね合わせていた
もし、姉さんに残された命の時間を知っていたならもっといろんな事をしてあげらてたのに
もっともっと・・・・・残された時間を大事に出来たのに
「紫陽、大丈夫?」
「・・・・・・・・・・・楓」
「後は和海に任せて、紫陽は少し休んだ方がいい」
「いや、大丈夫さ」
「そんな顔色では今度は紫陽が倒れてしまう」
「・・・・・・・・・・・後悔だらけだよ、本当に参った」
「紫陽」
「突然消えると言う事がこんなに辛いとはね」
「そうだね」
「それと同じ事を私は心に・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「クソッ!こんな時に・・・・・いっ!」
「心!」
楓が心を呼んでいた
多分私の考えていた事に気付いたんだろう
「どうしました・・・・紫陽さん!しっかり!!」
「俺は和海といるから心は紫陽を」
「はい」
「楓」
「何?」
「葬儀はいいよ・・・・・どうせ来るような知り合いはいない」
「でも」
「そういうのは好きじゃない人だからさ」
「・・・・・・・・・わかった」
「すまないね」
「うん」
葬儀をしても喜ばないだろう
このまま静かに眠らせてやりたい
「いっ・・・・・ううっ」
「紫陽さん!嫌でも薬を」
薬・・・・・・
もう薬に頼らなければいけないのかい
「ああ、頼むよ」
「はい」
心に薬を飲まされ、しばらくすると痛みは引いて来た
その間、ずっと膝枕をして私の背中をさすってくれていた
「心・・・・・ありがとう」
「何いってるんですか!当たり前でしょ?」
「ああ、そうだね」
そして家に帰って来た姉さんは次の日小さな箱に入って戻って来た
仏壇もない部屋
部屋に残されていたのは私宛の手紙と通帳
手紙には一言、ごめんねとありがとうの文字
どんな気持ちでこの手紙を書いたのだろう
墓は和海さんが手配してくれた
すぐに私も入る事になるだろう
姉さんが死んで三日後、Dahliaのライブがあった
もちろん私は仕事をした
そして決めた
自分の決意を変える決断をしたんだ
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