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電話
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いつものように和海の隣でプリンを食べながら話をしていた
和海は俺の零したプリンを拭きながらいつものように笑っていた
「あっ、電話だ」
「はい、プリンは置いて・・・・・はぁ」
着信は心からだった
いつものようにプリンを持ったまま電話に出た
仕事の話だろうと思いながらね・・・・・・
そんな気持ちで・・・・・・・
「楓、プリンが」
そして手に持っていたプリンが床に落ちた
何を言っているのかわからない
電話の向こう側の心は泣きながら俺に言ったんだ
紫陽が死んだと
嘘だ・・・・・だって・・・・・・・・
「楓?」
だって・・・・・まだ時間はあったはずなのに
まだたくさんあったはずなのに
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
立ったまま涙を流す俺を和海は優しく抱きしめてくれた
「和海・・・・・・紫陽が・・・・・紫陽がっ!!」
「はい」
そんなの許さない
最後に話をしたのはいつ?
いつもの笑顔で「またね」と手を振っていたのに
「どうして・・・・こんなの・・・・・・・おかしい」
「楓」
「だって、まだ元気だったじゃない!!どうして・・・?」
「元気なふりを・・・・していたのですよ」
「・・・・・・・・えっ?」
「いつも辛そうでした、でもみんなの前では元気なふりをしていました」
「なんでわかるの?おかしいよね・・・・そんなの」
「特に楓や心の前では元気に振舞っていました・・・・ですから私から声をかけたのです」
「いつ?何て?」
「気付いたのは先月です・・・ですから10日前ですね」
「それで?」
「辛いのなら病院に行きましょうかと」
「・・・・・・・・・・・・・」
「勿論断られました、そして今見た事は内緒にして欲しいと」
「どうして?」
「楓に気付かれたら今以上に心配するのがわかっていたからでしょうね」
「・・・・・・・・・・・当たり前だよ」
「だからでは」
「和海は冷たい・・・・なのにいつもと変わらず・・・・・」
「それが紫陽の最後の願いだと思ったので」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ごめんなさい、私は楓を悲しませたくはなかった・・・・それだけです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は何も気付けなかった
心配していたのに何も・・・・・・
「楓」
「俺は何も知らずに呑気に旅行の話をして・・・・」
「それが紫陽の願いだったのではないのですか?いつもの楓のままでいて欲しいから」
「・・・・・・・・・・・・・・・もういい」
「はい」
「でも・・・・もう少し抱きしめてて」
「はい」
もうそんな事はどうでもいい
今はただ泣きたかった
涙なんて流したのは始めてかも知れない
それが紫陽からのプレゼントだなんて
洒落にもならないよね
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