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「楓、ずっと起きていたのですか?」
「どうだった?」
「はい、まずは母親から調べてみました」
「うん」
「紫陽の母親は確かに子供を三人出産していました」
「それで?」
「次に、その出産した病院を調べてみました・・・・病院ではなく産院だったので時間がかかってしましましたが」
「うん」
「紫陽達を取り上げた方はもう亡くなっていましたが、娘が後を継いでいました」
「産院?」
「はい、そして連絡を取り話をしました」
「でも、娘じゃ・・・・」
「私もそう思っていましたが、面白い事が」
「面白い事?」
「言い方が悪かったですね」
「いいから、何?」
「ええ、今でもやっているらしいのですがそこの産院では取り上げた赤ちゃんの写真を記念に撮っていたらしいです」
「写真?」
「今から見に行きますが」
「行くよ」
「はい」
こうして今度は紫陽が生まれた産院に向かった
「ここ?」
「はい」
見た感じ、普通の家に見えるけど古びた看板は確かにある
まだこんな家が残っていたなんて驚きだ
築何十年ぐらいだろう
格子戸を抜けると、大きな松の木があった
何だか昔にタイムスリップしたみたい
「よろしいですか?」
「うん」
和海がインターフォンを押すと、返事の後すぐに玄関のドアが開いた
「どうぞ」
「突然申し訳ありません」
「いえいえ」
優しそうな女性が笑顔で迎えてくれた
「本来ならお見せできないものですが、事情が事情なので協力いたします」
「ありがとうございます」
フローリングと言うより、年代を感じる板の廊下を歩き小さな部屋に案内された
「ここに写真が保管されていますが・・・・・」
そう言って部屋の明かりをつけてくれた
古びた蛍光灯が機械的な音を出していた
確かにこの中から見つけ出すのは骨が折れそうだ
でもやらなければ
「箱にその年に生まれた数字が書いてあるのですが、古いので読めるでしょうか?」
「ええ、ではしばらく部屋をお借りいたします」
「はい」
そして埃のかぶった箱を見つめ、まずは紫陽の写真を探す事にした
「ねぇ、和海」
「はい」
「紅陽って生まれてすぐに捨てられたんだよね」
「話が事実ならそういう事になりますが、すぐと言っても生まれてすぐではないかと」
「名前はその時ついてたの?」
「私もそれが気になりましたので、本人に尋ねてみました」
「本人?」
「ホテルの部屋はわかっていますので」
「成程・・・それで?」
「どうやら一緒に手紙が置かれていて、そこに名前が」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
名前まで考えていたくせに勝手すぎるね
「どうされました?」
「名前までつけたくせに、どうして捨てたりするんだろう」
「今はその話は忘れて下さい・・・・ちなみに紫陽の姉の名前は確か・・・・」
「夕に陽と書いてあかね」
「でしたね」
「うん」
みんな太陽には程遠い人生を歩んで来たんだ
誰のせい・・なんて言いたくないけど、今は言いたい
「では、始めましょう」
「後もう一つ」
「はい」
「いくら事情があると言ってもよくここまで産院の内部を」
「彼女はそろそろ引退したかったそうです」
「うん」
「引退してのんびり老後を送りたいと」
「それで?」
「その老後に少しだけ花を添えただけです」
「・・・・・・・・・・・要するに買収?」
「本当に怖い世の中ですね」
「和海が言う?」
「名前一つで何でもわかる世の中です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「楓も気をつけましょうね?」
「俺には最強のセキュリティーがついてるから」
「はい、よくご存知で」
「・・・・・・・・・・・・・・はぁ」
優しそうに見えてもやはりお金には勝てないってわけか
いいのか悪いのか複雑
と言うか、それをあっさりやってしまう和海も怖いけど
でも、昔はここで出産する人が多かったんだな
色あせた写真を見つめ、ひたすら探した
名前が書かれていない写真もあるけど本当に見つかるのだろうか?
「ありました」
「ホント?」
「ええ、紫陽と書かれていますし誕生日も同じですので間違いないでしょう」
「うん」
生まれたばかりの紫陽の写真を見つめ、思わず考えてしまった
この時からすでに、残酷な運命が決められていた事など知らなかったんだと
「首の痣がはっきり見えますね」
「そうだね」
「ここからさかのぼって次は姉を」
「うん」
今度は簡単に見つける事が出来た
「夕陽と書かれています」
「痣は首ではなくて腕だね」
「ええ、でも同じです」
「何だろう、すごく不思議」
「そうですね・・・・・まるで今日の日を暗示するかのように痣がつけられたようにも思えます」
「うん」
「では、最後に紅陽を」
「生年月日は?」
「確認済みですが、誕生日があやふやで」
「どう言う事?」
「どうやら発見された日が誕生日に」
「じゃ、1月から」
「そうですね」
生まれた年がわかっていれば見つかるはず
見つからなければ困る
・・・・・なんて、いつの間にか俺は二人が兄弟であって欲しいなんて考えていたんだ
同じように見える赤ちゃんの写真
みんな真っ赤
古びたアルバムをめくりながら、ひたすら探した
「和海」
「見つかりましたか?」
「うん、紅陽って」
「同じ痣がありますね」
「あるね」
同じ場所に同じ形の痣
そう、今日見た場所と同じところにくっきりとついていた
「では、片付けて戻りましょう」
「うん」
和海は三枚の写真を並べて撮り、箱を棚に戻した
「お手数をおかけしました」
「見つかりましたか?」
「ええ、おかげさまで」
「それはよかったです」
「では、失礼いたします」
「お気をつけて」
何も聞かなければ、優しい女性のままに見えたのにね
でも、今はその笑顔も嘘くさく思えてしまった
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