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運命の選択?
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たどり着いたビルの玄関は広く、たくさんの人達が行き来していた
ガラスのドアを開けてすぐに悩んだ
そう言えば、昨日は夜だったしどこのエレベーターを使ったのかもわからない
仕方がないので受付に座っているアンドロイドみたいな人に尋ねてみよう
「あの」
「はい」
「社長さんに会いたいんだけどねぇ・・・・」
「社長・・・ですか?」
「ああ」
「失礼ですけれどお名前は」
「うちの名前?」
「アポは?」
「は?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「アポ?」
「・・・・・・・・・・・では、お名前を」
意味がわからない
とりあえず名前を告げると、いぶかしげな表情でどこかに電話をしていた
社長に会うのってこんなに大変な事なのかい
「お待たせいたしました、社長はただいま会議中ですので」
「おや」
「また日を改めてお越し下さい」
「それは困るねぇ・・・・どうしたものか」
「申し訳ありません」
全然申し訳無さそうな顔で言われても困る
「何時に終わるんだい?」
「ですから、また後日」
「それは困るんだよねぇ・・・・」
どうしようか
このまま待つか、このまま挨拶をしないで消えるか
「う~ん」
「売り込みでしたら・・・・」
「いや、違うよ」
何の売込みなんだか・・・・・
「あの」
「ん?」
「そこは他のお客様の迷惑になりますので」
「そいつはすまない」
他って・・・・・
誰もいないじゃないか
やはり教え込まれた事しか言えないアンドロイドだねぇ
「それと、一応ご忠告までに」
「なんだい?」
「社長にお会いになりたいのなら普段着はどうかと」
「おや」
なかなか厳しいねぇ
でも、荷物は駅のロッカーだし
やはりこのまま会わずに帰るしかなさそうだ
何だか警備員もこちらを伺っているしねぇ
仕方なく玄関に向かおうとした時
「紅陽さん」
「楓さん」
聞きなれた声に呼び止められた
「そろそろ来るかもと思って・・・・・もしかして追い返されそうになった?」
「いや」
「俺も最初はそうだったしね」
「そうなのかい?」
「でもよかった、行こう」
「でも、会議中では?」
「嘘だよ」
「えっ?」
「和海は部屋にいるし、きっと秘書に連絡したんじゃない」
「おや」
「俺の時もそうだった」
「成程」
とにかく助かった
これで約束を破らずにすみそうだ
エレベーターに乗りながら小さな溜息をつき、つい言葉が口から出てしまった
「スーツねぇ・・・・・」
「会社ってさ、見掛けで判断するから」
「でも、仕方ないのかも知れないねぇ」
「どんなに賢くても大卒が優先される・・・どんなに才能があっても音大出にはかなわない」
「ああ、確かに」
「そんな社会にムカつくけど、どうしようもないのが現実だね」
「そうだねぇ」
全ては肩書き社会ってことなのかねぇ
本当に嫌な世の中だ
「昨日は紫陽の話が出来た?」
「ああ、料理も美味しかった」
「そう・・・・・よかった」
「あの部屋は、まだ紫陽がいるみたいでね・・・・・食器や小物もそのまま置かれていたんだ」
「心らしいね」
「愛する人を簡単に忘れられるはずもない」
「うん」
「でも、いつまでも思い出の部屋に閉じこもっていてもいけないけどねぇ」
「そうだね」
「いつか本当に笑える日が来ればいい」
「うん」
昨日の笑顔は痛々しくて見ているのも辛かった
本当に早く元気になって欲しいと思った
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