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そう言えば、紫陽さんと出会ってどれくらいかな?
そんなに時間は経ってないけど、すごく長く一緒にいるような気がする
一緒に出かけたりする暇すらないけど、二人でいる事が大切なんだ
どうして僕は紫陽さんを好きになったしまったんだろう
後悔はしていない
でも、理由が思い出せないと言う事は、そうなる運命だったんだ
「ん、どうしたんだい?」
「いえ」
「お待たせ、行こうか」
コートを羽織り、照明を落とした
相変わらず、紫陽さんらしいコートだな
よく似合う
「はい、僕が運転します」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?
どうして無言?
「今日はタクシーで行こう」
「いいですけど」
「心もたまには飲みたいだろ?」
「わかりましたじゃ、そうしましょう」
気を使ってくれたのかな?
タクシーを停めて紫陽さんが店の名前を告げるとすぐに走り出した
すぐ隣に紫陽さんの手があった
触りたいけどそんな勇気はない
「・・・・・・・・・・・・」
でも、先に紫陽さんから手を繋いでくれた
すごく嬉しい
この指が楓さんの憧れる人の指だったんだ
信じられないけど本当なんだね
「あの・・・・・・・」
「なんだい?」
「もう大丈夫ですか?」
「ああ」
「ごめんなさい、大丈夫な訳ないですよね・・・・・」
「心残りはね」
そう言いながら手を握り締めた
「何も知らなかった事・・・・・・黙って置いていかれた事」
「紫陽さん・・・・・」
「辛かったよ、せめてもう助からないのなら何でもやらせてやりたかったと後悔した」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何も知らされていなかった紫陽さんは後悔していたんだ
久しぶりの再会は、病院の霊安室だなんて酷すぎるよ
「心もかい?」
「当たり前です!」
「そうかい」
「でも、紫陽さんには僕がいます」
「そうだね」
「一人なんかじゃありませんよ?楓さん達もいます」
「ああ」
身内を亡くしてすぐに元気になれたら逆に神経を疑うよね
紫陽さんの場合、まだ一週間も経ってないのに僕は無神経すぎる
「ごめんなさい、ほんとうに」
「いいんだよ、そうやって心配されてうれしいんだ」
「はい」
「あっ、ここで」
そう言って、タクシーを降りて少しだけ二人で歩いた
もちろん手は繋いだまま
僕はスーツ
紫陽さんはお洒落なコートを着ていた
どうみても男同士なのはバレバレだけどそんなのどうでもいい
この時間も、大事な二人の時間なのだから
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