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さすがに疲れた
先週からいろいろありすぎて体より心が悲鳴を上げそうだった
今は一人しかいないライヴ会場
ほんの数十分前まではたくさんの人達がいた
みんな輝いていたねぇ
「さて」
体調も落ち着いてきたし、さっさと片付けて帰らないとね
「うわっ!」
「心?」
思わず立ち上がり、転んだ心に手を差し伸べた
驚いた・・・・・まさかずっと見られていた・・・・まさかね
少し動揺しながら心を見つめたが、どうやら今来たばかりで安心した
嬉しそうな顔で見つめる心
楽しそうに会話をしながら結局手伝ってくれた
「・・・・・・神様は意地悪だよ」
「えっ?なんですか」
「何でもない、さぁ帰ろうか」
「はい」
考える時間ならもう与えただろと言いたいのかい?
これ以上何を悩むと言いたいのかい?
心に告白しようと決めたのは本当の事だけど、少し時間が短くはないかい?
それとも・・・・・・
・・・・・・・私に残された時間がもうすぐ無くなると言う事なのかい?
「紫陽さん、大丈夫ですか?」
「ああ、すまないぼんやりして」
「いえ」
「あそこだよ、落ち着いた雰囲気の店でねぇ」
「はい」
二人でそのまま歩き、店のドアを開けた
洒落た内装とジャズが流れる店内にはカウンター席が10席
すぐにマスターが私に声をかけてくれた
「紫陽、久しぶりだな」
「マスターも元気そうだ」
「ああ、それで今夜は?」
「飲みに来たんだよ」
「そうか、使うか?」
「ああ、すまない」
それだけの会話では何の話をしているのかわからないだろう
心もキョトンとした顔で話を聞いていた
「行こう」
「えっ、僕カウンターでいいですよ?」
「カウンターの照明がね、少し辛いのさ」
「ごめんなさい、でも」
「着いておいで」
「はい」
この店には個室が特別に一室だけある
普通のお客では使えない特別な部屋
マスターとは古い付き合いだから使える部屋
どうしてここを選んだかなんて考えるまでも無い
後数時間後には私は心を泣かせているだろう
真実を聞かされた心を私は見ていられるだろうか?
「すごい・・・・・綺麗」
「気に入ったかい?」
「はい、とても」
落ち着いた個室から見える中庭には小さな滝と桜
その滝はブルーの照明で映し出されていた
「何だか不思議で落ち着く部屋ですね・・・・すごく癒されます」
「そうだねぇ」
店内とは違い、この部屋は和風造りで畳が敷いてあった
金魚柄の提燈が部屋をぼんやり照らす
だからここを選んだ
なるべく心の泣き顔を見れないようにしたかった
自分勝手なのはわかっているさ
でも、私も泣いてしまいそうでねぇ・・・・・・怖かったのさ
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