アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
「じゃ、行って来る」
「うん」
俺は葵の言う事を聞いて、家に居る事にした
スタジオに行っても何も出来ないしね
「気をつけてね」
「ああ、終わったら速攻で戻るからな」
「わかった」
葵が玄関から出て行くのを確認して、鍵を閉めた
「はぁ・・・・・・」
一人って寂しいな
こうして一人になった事がなかったから余計にそう感じるのかも
「何をしよう」
掃除も出来ないし洗濯も無理
仕方なく、ソファーに座りテレビをつけた
「面白くない」
テレビなんて余り観ないし、情報番組はつまらない
「あっ・・・・・なんか曲が浮かんだ」
浮かんだけど、どうしようもない
ギターは弾けないしね
「寝よ」
こういう時は寝るのが一番
時間も経つし、無理してでも寝るしかない
しばらく雑誌を読んで、程よく眠くなったのでベッドルームに向かい、そのまま寝る事にした
「みんな練習頑張ってるのかな・・・・・・」
何も出来なくても一緒に行けばよかったかな
ぼんやり目を開けながら、そんな事ばかり考えていた
「ん?」
誰だろう・・・・・
葵じゃないよね
仕方なく体を起こし、玄関に向かいドアを開けた
「心?」
「華さん、どうですか?」
「うん、でもどうして?」
「楓さんが」
「楓?」
「退屈してるだろうから話し相手にって」
「そうなんだ」
「はい、仕事も今日は終わりましたので来ちゃいました」
「とにかくどうぞ」
「はい」
参ったな・・・・・・
楓はそういう人だった
「あっ、これはお見舞いです」
「ありがとう」
「後で食べましょうね」
「うん」
「それと、食事も僕が作りますから」
「ごめんね」
「いいんですよ、華さんはDahliaの大事なギタリストなんですから」
「心」
「雑誌も買ってきました」
「ありがとう」
「僕、お茶入れますね」
「うん」
キッチンに向かう心を見つめ、テーブルの上に置かれた雑誌を手に取った
「週刊誌・・・・?」
女性週刊誌なんて初めて読むかも
ページをめくり目を通しながら意外と面白いと思ってしまった
「おまたせ~」
「ありがとう」
「意外と面白いでしょ?」
「うん、半分は広告だけどね」
「あはは」
コーヒーを飲みながら記事を読み続けていると、心が言った
「僕もその記事読んだんですけど、50万の借金で自殺って・・・・」
「うん」
「命はそんなに安くはないのに」
「でもさ、ここにも書いてあるけど死んでから周りの人間はいかにもみたいに相談して欲しかったとか言ってるでしょ?」
「ええ」
「死を考えると言う事は、生きているときに相談しても誰も聞いてくれなかったからじゃないのかな」
「成程」
「そして死んで初めて罪悪感みたいなものが出てきてこう言う事を言うみたいなね」
「それも何だか・・・・・う~ん」
「お金の価値は金額じゃないと思うんだ・・・・・1万でも100万でもその人にとっては大金だと思う」
「そうですね」
「人間の嫌な部分だよね・・・・・死ななければ気付けない」
「お金って難しいですよね」
「そうだね、友達を失うかも知れないし恋人同士なら亀裂が入るかも知れない」
「でも、華さん」
「ん?」
「もし、何かあったら必ず相談してくださいね?」
「あはは、そうだね」
「真面目な話です」
「うん・・・・ありがとう」
「お金の話だけではないですよ?」
「わかってる」
いきなりおかしな空気になってしまった
そのまま雑誌を閉じて立ち上がり、キッチンからクッキーを持ってテーブルの上に置いた
「これ美味しいよ」
「ありがとうございます」
「そう言えば、心がマネージャーになってもう何年かな」
「あっという間でした・・・・・本当に感謝しています」
「今ではみんなが心に頼っているしね」
「はい、嬉しいです」
「仕事も完璧だし、本当にすごいと思うよ・・・・・・楓が居るのに感心する」
「あははっ、確かに楓さんは何をしでかすのか謎過ぎて大変ですけど・・・・・でも、ここぞと言う時にはとても頼りになります」
「うん、そうだね」
「はい」
確かにそうだ
普段の楓は掴みどころがなくて困る時もあるけど、動くときには一番早く動いてくれる
「華さん」
「ん?」
「楓さんを嫌いにならないで下さいね」
「ならないよ、今回は俺が悪かったんだし楓の気持ちにも気付けなかった」
「そうですか、よかったです」
「みんなと出来ないのはすごく残念だけどね」
「あっ!」
「な、なに?」
「大事な事を伝えるのを忘れるところでした」
「大事な?」
「はい、楓さんからの伝言です」
「うん」
「華のファンの為に、来月もライヴをやるからそれまでにしっかり治してね・・・との事です」
「えっ・・・でも、Dahliaのライヴは追加とか」
「するらしいですよ?華さんとファンの為に」
「・・・・・・・・・・どうしよう、すごく嬉しい」
「華さんは必要な人なんですよ?楓さんもみんなも同じ気持ちだと思います・・・もちろん僕もです」
「うんっ・・・・ありがとう」
まさかそこまで考えてくれていたなんて・・・・・・・
それなのに俺は一人で拗ねて八つ当たりして最低だ
「じゃ、僕は夕食の買出しに行って来ますね」
「うん」
「華さんは少し休んでいて下さい」
「ありがとう」
心に引っ掛かっていた物が消えたみたい
俺を必要としてくれている事が嬉しかった
「眠っ」
さっきまで全然眠くなかったのに、今はすごく眠い
昼下がりの太陽は眠気を誘い、どこかで聞こえるチャイムの音がどんどん遠くに聞こえた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 473