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会話
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「ただいま~~っと・・・・心?」
どうして心が?
「おかえりなさい」
「お見舞いに来てくれたのか?」
「はい、もうすぐ食事が出来ますからね」
「何かごめんな」
「いいんです、あっ・・・華さんはまだ眠っていますので」
「そっか、じゃ先にシャワーを浴びてくるよ」
「はい」
驚いたな
まさか心が家にいるなんて
「心~!」
「はい」
「お前も一緒に食って行けよ」
「でも、紫陽さんが」
「じゃ、呼んじゃえば?」
「ここにですか?」
「そそ、イオもそのほうが嬉しいだろうしさ・・・・ここには余り客とか来ないし」
「そうですね、では連絡をしてみますね」
「おう!」
いつも二人の食事だった
ツアーの時はみんなと一緒だけど、それ以外はいつも二人きり
それが嫌とかじゃないけど、ツアーから帰るといつも食事の時元気がなくなるのはイオだった
俺達に友達はいないし、ここに呼ぶような親もいない
怪我で落ち込んでるだろうし、食事は賑やかに食べた方が美味しいに決まってる
シャワーを浴びて、リビングに戻ると心が電話をかけていた
どうやら大丈夫そうだな
話し声でわかる
電話を切った心は笑顔で俺に言った
「紫陽さんオッケーです」
「そっか、よかった」
「でも、いいんですか?」
「勿論」
「では、食事の支度が終わったら迎えに行って来ますね」
「あっ、じゃ俺が行くよ」
「えっ?」
「会社だろ?」
「はい」
「任せろ」
「では、お願いします」
「イオを頼むな」
「はい」
家の鍵を取り、玄関を出て駐車場に向かった
紫陽さんとは一度ちゃんと話をしたいと思っていた
楓の様子も何となく変だったし、まさか病気が進んでいるんじゃないよな・・・?
ずっと、そんな事を考えながら会社に向かい玄関の近くに車を止めた
しばらく待っていると、紫陽さんが玄関から出て来た
「気付いていないな」
急いでクラクションを鳴らそうとして手を止めた
「えっ・・・?」
玄関から出て来た紫陽さんは、辛そうに目を押さえていた
あんな顔をするほど痛むのだろうか
そんな姿を見つめながら車を降り、そっと肩を貸した
「葵?」
「大丈夫か?」
「ああ、夕陽がまぶしくてねぇ」
「今日は曇りだ」
「・・・・・・そうだったね」
「とにかく車に」
「ああ」
そっと助手席に乗せてドアを閉め、急いで運転席に戻った
「痛むのか?」
「大した事はないよ」
「でも」
「薬を飲めばすぐに治まる」
「・・・・・・・・・・・少し車を走らせるよ」
「すまないねぇ」
「水でいい?」
「ああ」
スタジオの帰りに寄ったコンビニの袋から水を取り出してそっと渡した
「冷やすか?」
「いや、大丈夫さ」
「遠慮しなくてもいいから言えよ」
「・・・・・・・・・本当に大丈夫」
「わかった」
冷やすと逆に痛む場合もあるし、無理に冷やしても仕方がないので窓を閉めてそのまま車を走らせた
「なんか悪かったな・・・・・無理矢理呼んだみたいで」
「いやいや、私は楽しみにしているんだよ」
「でも」
「葵の家に行くのは初めてだしねぇ」
「そっか」
「華の様子も気になるし」
「それは心が来てくれたからさ」
「そうかい、楓が心の仕事を全てキャンセルして午後から休みにしたのはそういう事なんだねぇ」
「えっ・・・?」
「ホントに楓はわからない奴だ」
「・・・・・・・だな」
「でも、嫌いにはなれないしむしろ好きだからねぇ」
「ああ、俺もイオも同じだ」
「それはよかった」
・・・・って、今は楓の話をしている場合じゃない
「なぁ」
「どうしたんだい?」
「俺、まだ信じられないんだ・・・・・でも、受け入れなければいけない事だからさ」
「私の病気の事かい?」
「ああ」
「すまないねぇ、心配をかけてしまって」
「それはいいんだ、紫陽さんはもう家族みたいなものだし心配ならいくらかけてくれてもいいけど・・・・・・でも」
「ありがとう、葵」
「本当に・・・・・見えなくなるだけなのか?・・・・ごめん、変な事を尋ねたりして」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうなんだよ?勿論、紫陽さんの目が見えなくなったとしても付き合いは変わらないし、ずっといい仲間でいたいと思ってるんだ」
「ああ」
「だからキチンと話してくれよ・・・・・本当に失明するだけなんだな?失明するだけなんて言い方は申し訳ないけど、ごめん言い方が悪くて」
しばらく窓の外を見つめていた紫陽さんが静かに言った
「心を見てどう思う?」
「心?」
「ああ」
「心はいつもと変わらないような・・・・いつもニコニコしてるし」
「そうだね・・・・最後に見たいものは心の笑顔だから彼はいつも笑顔でいてくれる」
「最後って・・・・どう言う意味だ?見えなくなる前って事だよな?」
「葵」
「うん」
「私は後数ヶ月しか生きられない」
「えっ・・・・・・・?」
嘘・・・だろ
どうしてそんな顔で言えるんだよ
全てを受け入れたような顔で・・・どうして
「・・・・・・・・・・楓は知っていたんだな」
「ああ、でも私が口止めをしたんだ」
「どうして」
「心を悲しませたくなかったから・・・・でも、その考えは間違いだった」
「どうしてだよっ・・・・なんでっ!」
「私の姉が突然この世から去った時、私も同じ事を言ったよ・・・・どうして?なんで?ってね・・・・・何も知らずに残された方が辛いと知ったんだ」
「当たり前だろ・・・・・そんなの・・・・そんなっ・・・」
「だから心にも話したんだ」
「えっ?」
話したって・・・・・
なのに心はいつも笑顔で
「すまないが葵・・・この事は華達には言わないでおくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「本当に悲しませたくない人だけに話すつもりだったんだ」
「ふざけるな!俺達は悲しまないと思ってるのかよ」
「そうじゃない・・・・・最期の時は静かに逝きたいんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「頼むよ」
「ごめん・・・・もう少しこのままで」
「ああ」
イオに知られてはいけないと思った
でも、涙が止まらないんだ
楓はずっと一人でこんな気持ちのまま・・・・・・・
まだ全て理解出来たわけじゃない
でも、理解しなければいけないんだ
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