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「心さん、ありがとうございました」
「いいよ、二人でやった方が早く終わるし」
このままついでに帰ってくれないかな
「紅陽さん、今日はお誘いありがとうございました」
「すまないねぇ、手伝えなくて」
「いえいえ、怪我をしているんですから」
「そうだ、泉の持って来てくれた和菓子を食べておいき」
「えっ、でも」
「無理に引きとめはしないけど」
「でも、ご迷惑では」
そんな会話を聞きながら笑顔で言った
「お茶を淹れてくるからゆっくりして行ってね」
「はいっ!ありがとうございます」
心にも無い事を言う自分が馬鹿みたい
溜息をつきながらお茶を淹れてリビングに運んだ
「あっ、ありがとうございます」
「じゃ、食べようか」
「はい」
彼の持って来てくれた和菓子は、紫陽さんが好きだった和菓子だった
「ここのお店、遠かったでしょ?」
「いえ」
「紫陽さんも喜んでいると思うよ・・・よく一緒に買いに行ったのを思い出しちゃった」
「・・・・・・そうでしたか」
意地悪な事を言う自分が情けなかった
「紫陽さんは和菓子が好きだったしね・・・・後は」
「駅前のケーキ屋さんのシフォンケーキですよね?僕迷ったんですけど」
「・・・・・・・・・・・そうなんだ」
「はい」
知っていたんだ
紫陽さんはどこまで彼に話をしたのかな
すごく悔しいのはどうしてかな
「紅陽さんは和菓子はお好きですか?」
「ああ、好きだよ」
「よかった~」
「じゃ、食べようか」
「はい」
僕はまだ、紅陽さんの好きな物を知らない
知る必要も無いはずなのにね
その後、二人は音響の話をはじめてしまった
僕にはわからない分野だから話に入れない
「あっ、何かごめんなさい・・・つい夢中になってしまって」
「気にしないで」
「紫陽さんと話をしていてもつい夢中になってしまって・・・でも嫌な顔一つしないで話を聞いてくれて」
「彼はそう言う人だから」
「でも、そのおかげで僕は色々な事を学びました」
「そうなんだ」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・紫陽さんはとても優しい人だから・・・恋人の僕が一番わかっているし」
「・・・・・・・・・・で、ですよね」
「うん」
本当に意地悪な僕
「あっ、もうこんな時間だ・・・今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ楽しかったよ」
「じゃ、僕はこれで失礼します」
「気をつけてね」
「はい」
「泉、うちが駅まで送るよ」
「でも」
「もう遅いし、何かあったら大変だ」
「はい、ありがとうございます」
何それ
男なんだから何かあるわけないのに
「じゃ、行こうか」
「はい、心さんおやすみなさい」
「おやすみ」
二人が玄関から出て行くのを見つめ、拳を握りしめた
何だろうこの気持ち
すごくイライラする
「すまなかったねぇ」
「えっ?」
「いや・・・・」
「僕、心さんと紫陽さんの事は知っていました・・・でも」
「紫陽が好きだったのかい?」
「・・・・・・・・・・・はい、僕なんて相手にされない事はわかっていましたけど」
「めぐり合いなんてものはさ、タイミングなんだよねぇ・・・そのタイミングが泉は悪かっただけさ」
「紅陽さんっ・・・・」
「冷たい事を言うようだけどねぇ、紫陽はもういないんだ・・・・・だから泉も前に進まないと」
「はい・・・わかっています」
「いい子だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「泉?」
「紅陽さんと僕は・・・・・やはりタイミングが悪かったのでしょうか」
「うちかい?」
「はい」
「それはわからないねぇ・・・」
「ですよね、今日知り合ったばかりですものね」
「そうだよ・・・焦る事はないだろ」
「・・・・・・・・・・でも・・・でも今度は後悔したくないんです」
「後悔?」
「僕、ずっと紫陽さんが好きでした・・・でも、男が男に恋をするなんておかしいと思い込んでいました・・・・だから何も言えなくて・・・・心さんよりもずっと前から好きだった・・・・初めて会った時から僕はっ・・・・なのに・・・・・なのにっ!」
「ホントに紫陽は罪作りな奴だねぇ」
「だから・・・・・僕」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「紫陽さんの代わりだなんて思っていません・・・兄弟だからとか、そんなんじゃなくて・・・」
「心はまだ紫陽が好きなんだろ?」
「最初はそう思っていました・・・でも何となく気付いてしまったんです」
「気付いた?」
「・・・・・・・・・・・心さんは僕の事が嫌いみたいです」
「おや、どうしてだい?」
「説明は出来ません・・・でも・・・・」
「うん」
「いえ、でも僕は心さんの事を尊敬していますし嫌いではありません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もうここで大丈夫です、ありがとうございました」
「ああ」
「おやすみなさい」
「気をつけて帰るんだよ」
「はい・・・あ、あの」
「ん?」
「もしよろしければ携帯の」
「ああ、そうだね」
「ありがとうございます、じゃ!」
笑顔で手を振る泉を見つめながら微笑んだ
「・・・・・・・・・・・困ったねぇ」
さっきの会話で泉の言いたい事がわかってしまった
でも・・・・心の事をそんな風に考えた事はなかったけどねぇ
「まさかねぇ」
溜息をつきながら空を見上げ、歩き出した
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