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バリーンッッ
おれたちはガラスの割れる音で目を覚ました
「御影、起きてっ」
「起きてる…なんの音」
おれたちは恐る恐る音がした部屋へ向かった
「…ぅ……あ……」
じゅるじゅると何かをすするような音
聴きなれた人の声のような気がした
「……ふ。どいつもこいつも大人の血は美味しくないな」
ガタッ
おれたちの面倒を見てくれてる人が血まみれになってたおれてる
そんな光景を見て思わず後ずさりしたらダンボールに足をぶつけた
暗くてまったく見えなかった奴の顔が、月明かりに照らされてはっきりと見えた
血色に底光りする瞳
銀色の長い髪が後ろで束ねられていて
目を疑うような整った顔
「おや?こんな夜中に子供が起きているなんて。悪い子達だね」
「「だ、誰……」」
赤い目をおれたちに向けて、一歩一歩近づいてくる
おどろいて動けないおれを、満が必死で引っ張る
「はははは。抵抗しても無駄だよ。私から逃れるなんて無理なことを…」
「ねーねー何かすごい音したけどー」
「なんの音だったのー」
「あれ、御影と満?」
「ねー、ふたりともなにが……」
寝ぼけながら起きてきた他の子たちが、電気をつけようとした瞬間
ぶわっと風が吹いたのかと思ったら、おれらの顔に生暖かい液体が飛んできた
「……血…?」
「「「「い、いやぁぁぁっ!!」」」」
じゅるじゅるとまた音がしている
その音の先では、電気をつけようとした子が血まみれに…
銀の髪の男は首元に噛み付いている
その首元に刺さっているのは………牙だ
「き、きゅうけつき!!?」
「やだよこわいよ」
「院長せんせー!せんせーは……」
「え、もしかして……あれ…」
最初におそわれていた人は、院長先生だ
みんなはパニックになり、我先にと孤児院から抜け出そうとする
「逃がさないよ」
また風が吹いたのかと思った
だけど、それが風じゃないことはすぐにわかった
さっきまでさわいでた子たちの声がまったく聞こえなくなったから
「……み、満……」
「御影……」
おれたちはこれ以上ないくらい手をつなぎあいながら、血をすする獣を見つめた
「あー……美味しかった。さて、残った君達はどうしようか」
「み、満には手を出すな!!」
おれは満をかばうように前に出た
吸血鬼は口元だけでバカにしたように笑った
「可愛いね。兄弟が大事なんだ。だけど、それは無理かな」
また風が吹いた。かとおもったら、後ろにあったはずの暖かさが消えていた
「満!!」
満は吸血鬼の手にとらえられていた
やめて、やめて、やめて……!!
またおれから大切なものをうばうのかよ!
吸血鬼は満の首元に噛みつこうとした
「ん……?」
満の首元をくんくんと匂いを嗅ぐ
「君たち、もしかしてあの………」
おれは吸血鬼の動きが止まったときに思い切り棒を叩きつけた
だけど、ぎゃくに棒が折れた
「痛いよ。そっか、君たちがね…。しかたない」
「御影!!逃げ……っ」
「……満!!」
吸血鬼の牙が満の首元にぐさりと刺さった
刺さった部分から血が出てその血を吸血鬼が飲んでいる……
やめ…やめて……
「み、かげ……はやく……にげ…っ」
「やだ……満…満をおいてくなん…か…」
満はさっきおれが吸血鬼を殴った棒を拾っておれに投げつけてきた
「行けったら!!」
「……っっ!!」
満の声に逆らうことができなくて
おれは
家族を、弟を、見捨てて逃げた……
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