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変なものがいっぱい?
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「由香子!何これ!」
「それは大昔、人間を飼いならしたと言われている時代の純血の君の像です」
「由香子!これは?!」
「それはヴァンパイアが貧血になった時にいつでも補給できるようにとあちこちにセットされている……点滴のようなものです」
「由香子っ」
「それは人間模型。人間をより知ろうとした研究者によって造られました」
「由香…」
「それは……一部の層が自分の欲で研究しまくったものの展示馬ですね……」
すっごい変なものがいっぱいだ!!
ヴァンパイアも人間みたいに研究してるし、なにより意外なものがありすぎて凄い!
像を造ってる時点で人間らしさはんぱない!
「あれ……でも、ヴァンパイアは人間になりたいわけじゃないのに人間を知ろうとするの?」
「それは、歴史の勉強になりますが……いいですか?」
「うっ」
歴史の授業はどうしても眠くて寝てしまい、テスト前になっていつも悠に泣きつくのだ
でも……日本の武将がなんやらとかはどーでもいいけど、これは知りたい!
「いい!」
「では……今からちょうど1500年前に、王権制度の最後の王、ツェリメイラ様という女王様がいました。ツェリメイラ様は、純血の君。当時は純血は城の外には出られなかったのですが、それにキレたツェリメイラ様は城を飛び出し、しかもそのはずみで人間界へ落ちてしまったのです」
「えっ!?」
由香子は頷き、続きを話す
「ボロボロになったツェリメイラ様を助けたのが、平助という武士の男でした。ツェリメイラ様はヴァンパイアであることを隠し、ヴァンパイア界への帰り方もわからないので平助のものにいることにしました。そして次第に二人は惹かれ合い、恋人になりました」
「おぉ……」
「しかし、純血の君は吸血行動を一般の吸血鬼より抑えられるといっても、そんなに万能なものではありません。10年経ち、それは抑えられなくなりました。一方の平助も、全然老いていかないツェリメイラのことを少し不審に思いました」
「あ……」
「ある日の晩、ツェリメイラに平助は聞いたのです。『ツェリ、おまえは全く老いていかないが…妖怪なのか?』と。ツェリメイラ様は悲しそうに笑い、頷きました……」
「そ、それで…っ」
「平助は笑い、ツェリメイラ様をぎゅっと抱きしめます。『何そんな不安そうな顔してるんだよ。俺はツェリが好きなんだ。何であろうと変わりはしないよ』ツェリメイラ様は涙して喜びました。しかしその言葉がツェリメイラ様の血を呼び起こしてしまいます。吸血行動が抑えられずに、平助を食らってしまいました」
「へ、平助さんは……」
「平助は生きてます。血をすすられてもツェリメイラ様への想いは変わらないと…。ですが、物事はそううまくはいかないものなのです」
「え」
「ある夜に、目を覚ましたツェリメイラ様は辺りが真っ赤に燃えていることに気がつき、隣にいる平助を起こします。二人で慌てて外に出ると、村人たちが火を放ち、石を投げていました。『この化け物!平助、おまえはこの化け物に騙されているんだ!!』平助は大好きなおじさんにまでそう言われ、悲しくなり、ツェリメイラ様を連れて山奥に逃げ込みました。ですがそこで、ツェリメイラ様を探していたヴァンパイアに出会ったのです」
「えっ」
「ヴァンパイアは平助を見るなり自分の爪で平助を切り裂こうとします。ですが、ツェリメイラ様が身を呈して平助をかばったのです」
「…っ」
「平助は血を流して倒れるツェリメイラ様に駆け寄ります。しかし、逃げてきた方向からは村人たちの声がしました。村人はヤリを動けないツェリメイラ様に向けて放ちます。平助はとっさにツェリメイラ様をかばい、心臓近くを刺されました。傷が回復したツェリメイラ様は、平助が死にかかっていることを嘆き、壊れてしまいました。それほど愛していたのです……」
暖かい雫が自分の頬を伝った
「狂った純血の君を止められるヴァンパイアなんて居ません。ツェリメイラ様は敵意ある村人を全て八つ裂きに殺し、そして、力尽きました。次に目を覚ませば、また城の中でした。ですが、もうツェリメイラ様も大人。むしろ、普通のヴァンパイアたちよりも知恵の優れた純血の君となりました。ツェリメイラ様はみんなに呼び掛け、人間とは戦わない。これだけは守って欲しい……そう言い残し、姿を消したそうです」
「……っ、ツェリメイラ様って……っ」
溢れ出てくる涙が止まらない
「貴族たちは、純血の君をこれほどまでに変えてしまう人間は研究に値すると考え、それからは人間をよく研究するようになり、人間をよく知った者たちの多くは人間と子を成したりするようになり、今では純血が希少とされるほどに減った……そして、人間に憧れるヴァンパイアが増えた…ということです」
「…そっか……じゃあ、人間とヴァンパイアが争うことはないんだよね」
「……それが、そういうわけではないのです」
「えっ?」
「純血の君が決めたルール。ならば、同じ純血の君ならばそのルールを変えることができてしまうのです。今までそんなことをしてきた人はいませんでしたが、これからは分かりません……」
「…なら、俺が絶対にさせないよ。悠たちと戦いたくないから」
「……そうなることを願っています」
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