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失恋
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むしろ彼は、甘く、限りなく恋のように甘く、僕を誘い導く天使だった。
「俺が、怖いだろう」
「怖い? というより……焦らされている感じ? 少し意地悪に」
怖いというような、言葉に当てはまるようなことは、どこにもなかった。
根本のところで、彼を信頼していたからか。
信頼していなければ、怖かったかもしれないが。
彼の言っていることと、僕の間には、大きなずれがあった。
「ああ、どうしたらいいか、わからないんだ。ただ、緊張感をまぎらわせたかった。俺は君を巻き添えにしている」
彼は、嘆いて、両手で顔を覆った。
ただ、まぎらわせたかったって?
「どういうこと? 僕のこと好きで抱いてくれたんじゃないの?」
「僕は、どうしようもなかったんだ。君のことを利用しているんだ」
僕は利用されただけ?
初めての恋と天国に上った心地だったのが、一気に地上に突き落とされた。
身体からさあっと血の気がひいた。
「僕は、一人で舞い上がっていただけってこと?」
僕はひどく傷ついた気持ちだった。
しばらくしてから、彼は、言った。
「俺はどうしたらいいか、わからないんだ、助けてくれ」
弓弦さんが僕に助けを求めるなんて初めてだった。
僕は、傷つきはしたものの、まだ彼を愛していた。
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