アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
恐怖
-
僕がシャワーを浴びて出てくると、弓弦さんは、キッチンのテーブルの上を見ていた。
不気味な生き物を見ているように。
僕の携帯が、テーブルの上で、着信のあったことを知らせて光を点滅させていた。
僕は、硬直した。
また震え出したそれを、僕はすばやくつかんだ。
コンマ一秒の速さで。
弓弦さんに気づかれないように。
誰からかかってきたかわからないように、さりげなく。
僕は、さりげなくなかった。
電話の声が言った。
「また明日も会おうぜ」
ぞっとした。
「ちょっと今、話せない」
口がこわばった。
「え、何でだよ。今、家だろう? 違うのか?」
僕は曖昧に答えて電話を切った。
弓弦さんに聞かれたくなかった。
すると、今度は家の電話が鳴った。
僕の心臓は、止まりそうだった。
僕は、青ざめた。
聞かれたくない。
受話器を取ると声は言った。
「やっぱり、家じゃないか。おい、聞いてるのかよ?」
「うん、ちょっと今、忙しいんだ」
極力、なんでもないように、平静を装って応えた。
「おい、そこに男がいるんだろう? 男とやってる最中だったんだろう?」
僕が受話器を置くのを、弓弦さんが怪訝そうに見ていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 82