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悪い癖
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未来ある若者。
ああ、違う、そうじゃない。
それだけじゃない。
彼は、単なる学生ではない。
特殊な人間だ。
自分と共通点のある。
特別に傷つきやすい。
掬い取る、おぼろ豆腐のように、甕に湛えた水に映じて揺らぐおぼろ月のように、繊細で儚い彼の心。
竹春は、自分の心を掬い取るように、彼の心を掬い取った。
最初の頃、遠巻きに竹春を見ていた桐生。
あのニヒルな青年の傷ついた心を、私が癒すことはできない。
それは神の仕事。
けれども、私が君に何かしてあげられることがあったら、言ってほしい。
そんな風に思うのは、自分が、その痛みを知っていたからだ。
傷ついた人を見て、見逃しにできなかったからだ。
それが私の悪い癖だ。
悪い癖?
傷ついているのは、彼なのだろうか、それとも自分だろうか。
竹春は自問する。
自分だ。
彼は、写し鏡にすぎない。
彼は、ちょうど竹春のようだった。
潤が竹春のようであるのと同じように。
悪い癖。
自己に対するネグレクト。
自分の痛みを放置する。
いたわらない。
傷の痛みを無視する。
そんな風に批判する。
鞭打って、もっと痛めつけて、痛みを忘れる。
激しい興奮。
傷ついているのは、彼じゃない。
私だ。
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