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仄かな灯り8
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「仁、…ごめんなさい」
「え?」
ごめんなさい
土曜日、疲れてるよね
川に行きたいなんて、言わなきゃ良かった
「俺、気が利かないから、仁が帰りたいってこと全然気づかなかった」
「何、言って…」
ごめんなさい
我儘言ってごめん
「も、もっと気を使える人になる!
もっと…もっと、大人に…なる、から」
我儘も言わない
傷つけるようなことも、言わない
仁が嫌がること、しないから
だから、指輪みたいに捨てないで
「好きって、言われなくても…いいから」
好きって言って欲しい
「好きじゃなくても、いいから」
好きでいて欲しい
心の中の、望みを消しても
それでも、いい
「それでも、俺は…仁が好き」
「はる、と…」
俺の嘘に気づいて
本音に気づいて
そうじゃないって言って
また、俺は我儘になる
鼻の奥がツンとしてくる
泣きそう、かも。
ここに、いたくない
一人になりたい
「ごめんね。少し、頭、冷やすから…
先に、車行ってて」
「春斗、悪かった…」
手を取られても、俺はそれを弾いた
「大丈夫。少し、したら…普通にできるから、本当に…いつもみたいにできるから」
笑って見せて
でも視界は歪んでゆく
俺は背を向けて、走り出した
「春斗!!」
逃げたい
勝手に期待して、
期待通りにいかないって、寂しく思って…
「ばか。ばか、俺のばか。」
本当は、心の底では分かってる
こんな、情けなくて誰からも、親からも愛されてない俺が…
誰からも慕われる仁に、釣り合うはずない
頭で分かってるのに
それでも
好きな人が
付き合ってくれたことが、嬉しかったんだ
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