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願い事4
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口を開かれて、途端に怖くなる
言われたら、終わりになる?
全部、消え去るのかも
夢のような時間も
シャボン玉みたいに弾け消える
そんなの、やっぱり怖い
開きかけた仁の口を手で塞ぐ
「やっぱり、いいや」
怖い
はっきりさせたくない
中途半端でも、このままがいい
蒼さんの代わりでもいい
仁がそばにいてくれるなら、それで…
「もう、平気だから…」
「春斗…」
「腹減ったな。なんか食べたい」
蒼さんの方が、やっぱり好きだ
そんな風に言われたら、俺は立ち直れない
「先、車いくよ。」
立ち上がって、仁に背を向ける
じゃないと泣き顔を見られる
泣いてるのが分かっちゃうから
ぐるぐるとお腹の中を巡る不安に
押しつぶされそう
「春斗」
ぐいっと手を引っ張られて
その勢いのまま、仁の懐に入る
力強く抱きしめられて
胸に顔を押し当て仁の心臓の音が聞こえる
この体勢が一番好きだ
「じ、ん?」
「お前の…為なんだ…」
仁の声が震えてる
泣きそうで、耐えてるようで
どうして?
「春斗が幸せになる為なら、なんだってしてやる。いつか、ちゃんと…誰よりも幸せに」
何が言いたいのか、わからない
でも仁が、俺の事を思ってくれてる事は
物凄く伝わってくる
力を込めた腕から、じんわりと温度が伝わって
気持ちいい
こんな、安心感
仁以外に、いないよ
いないんだよ。
「っ…っ」
「春斗…泣かないで」
見上げれば、仁の顔が心配そうに歪む
さらさらと流れる清音
風で流れる木のざわめき
その中で静かに輝く、見上た先の星
「…星が、綺麗だ」
不思議そうな顔した仁
「流星、あったら、願い事叶えてくれるんだよね?」
仁は少し困った顔をして
「そうらしいな」
なら
目をつむって、頭の中で唱える
流星、神様
俺にこの人を下さい
暖かい眼差しも、心も、温もりも、すべて
もう、何も望まないから
我儘も言わないように頑張るから
もっと頑張るから
努力するから
だから、ください
この人を俺に、下さい
「あ、流星…」
「うん…」
聞き届けて
俺の願い事、望みがないものでも
もっと頑張るから…
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