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信じる3
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その時、携帯に着信が入る
「…佐知?」
通話ボタンを押す
『春斗?ごめん、突然…』
「いいけど、どうかした?」
『…あの、今、栗橋さんっている?』
「いない、けど…」
『そう。』
安心したように息をついて
どうしたんだろ?
『あの、さ…俺が、こんな事言うの…部外者だって分かってる
だけど、俺はお前と友達だし、傷つくの見たくないから…』
「どうした?超、臭いセリフ」
くすくす笑っても、佐知は何も言わない
怒ると、思ったのに
「佐知?」
何かを決心するように、佐知が大きく深呼吸したのが分かった。
『あのさ…俺、栗橋さんの事、お前が心配してたから、勝手に問い詰めようと思って
居酒屋に言ったんだ
そしたら…』
電話口から聞こえた
『お前とは…同情で付き合ったんだって。言ってたのを聞いたんだ。』
ど、うじょう?
同情?
頭の中が冷えていく
目の前がくらくらと回った
「どう、いう意味か…わかんない」
『お前、自分の事傷つけた事あるだろ?
それを見て、可哀想に思ったんだって。父親とうまくいってないのも、可哀想だって』
傷つけた?
もしかして、体、洗った時のこと?
汚いから、洗った、だけなのに?
だけど、あの時の仁は、物凄く寂しそうで
それに怖かった、少しだけ…
『春斗、あいつはお前のこと、好きじゃねーんだよ』
「ち、がう…仁は好き、だよ」
信じたい
好きな、筈だよ
口に出せば本当になる気がした
『じゃあ、好きって言われた事があるのか?』
「それ、は…」
ない。
好きだ
なんて、言われた事、ない
『それにお前の気持ちなんて、大人になったら、忘れるもんだって思ってるみたいだった。
…はなから、相手にされてねーんだよ』
本気にも、してくれてなかった
必死に好きと言った
俺には簡単じゃない気持ちだったのに
『好きでもねーみたいだし、お前とは遊びでつきあってんじゃねーの?』
「…も、やめて…ききたく、ない」
自然と声が震えた。
遊び
遊びで付き合ってたの?
俺の気持ち、疑ってたの?
『はる…』
これ以上聞きたくない
じゃなきゃ、傷ついてしまう
電話を慌てて切る
嘘だ
信じたくない
佐知は嘘をついてるんだ。
でも、なんで佐知が俺の体の事知ってるの?
誰にも言ってない
2人だけしか、知らない事
『好きでもねーみたいだし、お前とは遊びでつきあってんじゃねーの?』
遊び?
じゃあ、キスしてくれたのは?
俺のためだって言葉は?
優しく、してくれたのは…?
「ちが…う…」
蒼さんが、忘れられないから
仁は俺に手を出さないと思ってた
違うんだ
俺の事、最初から…
気持ちなんて、ないから
好きじゃ、ないから
行かなきゃ…
仁に聞こう
仁から聞かなきゃ、信じない。
そう思って、手に持ってたメッセージカードを、机に入れる
そこにあの時買った指輪が転がり出た
捨てられてしまった、指輪の片割れ
どんどん不安になっていく
聞かなきゃ
あの時、ちゃんと聞かなかったから
今、こんなに不安になるんだ。
指輪みたいに、捨てられたくないから
俺は靴を慌てて履いた。
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