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step up
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二人の元に向かうと、怜さんが俺の肩を嬉しそうに叩いた。
「やるじゃないの、さすが私の弟子」
「ありがとうございます。本当は最優秀狙うつもりだったんですけどね」
あははと苦く笑う俺を見て、二人はニンマリと笑いかえした。
「その事なんだが、君さえ良ければ私について三ヶ月ほど働いてみないかい?」
「え?!」
「そういうことよ、祥の答えは決まってるんでしょ?」
言われた言葉に頭がパニックになる。
俺を誘ってくれたのは海外でも有名なアーティストだ。そんな人の元で働くってあまりにも上手く行き過ぎではないか。
「ちょっとあんた! 疑ってるの?」
「嫌だって、なんで俺」
呆然と漏れた本音に二人が笑った。
俺が特別賞だったのは、元のモデルとは少しばかりあっていない印象を受けたからだそうだ。
だから最優秀とはいかないが、それにしても捨てるには惜しい能力を感じることと、恥ずかしいが丁寧で繊細な世界観が高評価を受けたようで、彼──アルベルトさんは怜さんに話をして3ヶ月の修行期間はどうかと話を持ってきてくれた。
俺はその場で頭を下げてお願いをした。
違う道ではあったが、アルベルトさんの元で三ヶ月のあいだ働くなった俺は、奇しくも直輝が出るパリコレの舞台裏で働くことができるようになる。
これがまた新たな出会いと波乱を呼び寄せることになるのだけど、この時の俺はただただ希望で胸がいっぱいだった。
◇
自宅に戻り経緯を説明すると直輝は少しだけ眉間に皺を寄せた。
三ヶ月間もまた遠距離になってしまうことを懸念しているのだろうか?
そう思っていた矢先、予想とは全く関係の無いことを聞かれる。
「そのモデルの子ってどこか事務所に入ってる?」
「え? あ、えっと……多分入ってたかな」
「へぇ、そうか。なるほどね」
ソファに座り足を組んだ直輝が肘掛けに緩くもたれ掛かり微笑んだ。
その悠然とした空気が微かに機嫌の悪さを教えてくれる。
「どうしたの?」
「いや、何も無いよ。それより三ヶ月も離れ離れになるみたいだけど少しは悲しんでくれないの?」
「いやだって、……パリコレに出る直輝を俺は自分の目で見れるんだよ。それってすごい。ずっと遠いと思ってたけど、俺もちゃんと直輝に追いつけてるんだって……嬉しくて」
ポロポロとこぼれ出す本音と思いに目の奥が熱くなる。
「……どうしてそんなに可愛いことばっかり言うかな」
「……うるさいっ。いちいち可愛いとかそういうこと言ってくるなバカ!」
「照れてるのも可愛いけどさ、そういうのはベッドの上で」
「え、ちょ!」
立ち上がった直輝にお姫様抱っこをされる。
悠々と俺を持ち上げた直輝が憎い。いっその事ぎっくり腰になるように太ってやろうか。
そんなことを考えている俺の唇に直輝が優しくキスをした。
久しぶりにベッドの中で抱き合って眠る時間が、何よりも愛おしい。
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