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舞台
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準備の時間はあっという間に過ぎ去っていく。
多忙に多忙が重なるようなそんな目まぐるしい日々だった。
仕事は相変わらずハードだし、それに加えて怜さんは俺をこれでもかと扱いた。向こうに行った時に、現場の熱気に圧倒されて何も出来ない、足手纏いにはならせないと息巻いて。
そうして息をつく暇もなく次から次に与えれる課題や、時間内で終わらせる作業スピードのアップ。
やることは沢山あった。
その隙にパスポートを取ったり、直輝に英語を教わったり。
そうして、四月からあっという間に二ヶ月が経つ。
舞台のパリコレ春夏メンズ部門は六月の中旬に六日間の開催だ。後二週間ほどで本番なのだ。
直輝がランウェイを歩くのは、四大ファッション・ウィークの中で二十ブランドとなる。
ミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンの大都市で行われる舞台に直輝は全て出演するのだ。それがどれほど凄いことなのか……。
この時の俺は本当の意味で認識出来ていなかった。
直輝と俺の間にある歴然とした差に。
「家は三ヶ月と少しの間、ツテで借りてあるから。鍵は後で渡す。コレクションが終わったあと、俺も現地で仕事があるから家にいないことあるけど、絶対に一人の時は他人をあげるなよ」
「それ何度目の話?」
「祥ちゃんはチョロいからさ。何度も言っておかないとつけ込まれるからね」
羽田空港から飛行機に乗り凡そ13時間のフライトを経て、漸くパリに着いた。
右を見ても左を見ても、外国人ばかりで、日本とは全く違う空気に期待と緊張が鼓動をはやく動かす。
迷子防止だと言って俺の手を掴んで離さない直輝はここ二ヶ月ほど耳がタコになるほど同じことを口にしていた。
「日本と同じ治安だと思わないで過ごすんだよ」
「分かったってば。俺、そんなに信用ない?」
「ない」
ばっさりと言い切った直輝は少しも笑っていなかった。
誰かを借家に上げるほど時間に余裕なんてないだろう。
そもそも直輝がいない間に誰をあげると言うんだろう?
言いたいことは山ほどあれど、直輝が不安がる理由も分かるから俺は大人しく頷いた。
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