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体育祭の季節
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◇◇◇◇
トイレから帰って、
陽達の元へ戻ろうとしたけど足を止める
数メートル先にいる陽とハル君が俺がさっき渡したパンフレットで顔を隠してキスをしていた
けど、裏側は隠せてないわけで丸見えだ
なっ、なんだか見ちゃダメなもの見ちゃったなぁ……。
俺が見られたわけじゃないのに
恥ずかしいやらなんやら……
顔が熱くてきっと真っ赤だと思う
何となく2人付き合ってるんだろうなとは思ってたけど、やっぱりそうだったんだと知って結構複雑だ
歓迎してないとかじゃなくて、
ブラコンと言っても過言じゃない俺にとって陽は可愛くて堪らない弟だったから
何だか寂しいなぁって感情で
子離れとかそういうのってこんな気分なのかな?なんてこと思いながらふたりの元へ戻った
「兄貴おかえり」
「う、うんっ……ただいま」
「何かあったのか?」
「……何でもないよ」
オロオロしてる俺を見て陽がすかさず心配してくれる
何かあったのか?って
何かをしてたのは陽の方だろっ
なんて絶対絶対口に出して言えるわけがない
恋人の横に俺1人居るのって邪魔じゃないかな
離れて2人きりにさせた方がいいんじゃないのかな?
どうしよう……
グルグルとキャパオーバーになりそうな頭で考えていたら、こそりと陽が口元を耳に寄せて囁いた
「兄貴見ちゃった?」
「──ッ」
「……見たんだな」
「ごっ、ごめん!」
ジーッと猫目で真っ黒な瞳が俺を見ていてドキドキと緊張する
一方ハルくんはニコニコしていて
ひとり平和そうだ……
「……どう思った?」
「ど、どうって……」
「……」
「……はぁ」
真っ直ぐとぶつかる視線を一度逸らす
どうもこうもない
気持ちはひとつだ
「陽が幸せなら俺もそれが幸せだよ」
「え……」
「反対すると思った?」
「いや……でも、正直分からなかった」
「そうだよね。 うん、でもお兄ちゃんはいつでも陽のみかた」
「……お兄ちゃん、ありがとう」
「あははっ! お兄ちゃん呼びになってるよ?」
「あ……」
外では兄貴って呼ぶことにしてる陽が間違えてお兄ちゃんと口走ったことに気づいて口を手で隠す
ふわりと猫っ毛が揺れて
そよそよと吹いてきた風が黒くてキラキラ光る髪の毛をいたずらに弄ぶ
なんだか本当に大きくなった
しみじみ陽の姿を見てそんな年寄りじみた事考えてしまう
色々あったから
両親が居なくて享さんて言う
お父さんたちの大切な友達が今は俺達の父親だ
俺には少なくても両親の記憶があるけど
陽にはそれがない
だから父親っていうのは享さんだけで
母親を陽は知らないから
母親の優しさを陽に教えてあげたいって思ってきた
何かあってもずっと優しく傍に居てやりたいってそう思っていたけど
もうその役目は俺じゃないんだな
陽には自分で見つけた
自分を愛してくれて愛せる誰かを見つけたんだって気づく
今はハル君っていう大切な人が居る
もう小さい時の良く泣いていた陽はいない
自分ひとりで考えて動いて生きていけるんだ
何だかそれは少し寂しかったけど
でも何よりも陽にも大切な誰かが居るって事がとにかく嬉しかった
大切な人が居たら少し人は強くなれるから
たまには弱くなって傷つけ合うけど
でもその分ずっとずっと深く繋がれるって思うから
そんな相手を見つけた陽を誇りに思ったし
やっぱり俺はブラコンだなって何だか自分自身を笑ってしまった
「あっ! 聖夜さんだ!」
陽と話していたら隣に座るハル君が少し興奮気味に声を上げる
校庭の真ん中、
本当に人が多い生徒の数
大勢の人達がそれぞれチームごとのカラーバンダナを腕につけて整列している
その中心校舎側にある外に設置されてある壇上に聖夜が立っていた
「怪我のないように。 それぞれチームごと正々堂々と戦うこと」
聖夜がこんなに大勢の生徒を纏めているんだな
いつも直輝に飄々とからかわれて怒ってる時とは大違いだ
中学の頃ヤンキーだった面影なんて全くないほど聖夜は凛とした面立ちで背筋を伸ばして立っている
──かっこいいなぁ
素直にそう思う
お父さん譲りの金色の髪は太陽みたいに綺麗で
芯のある瞳はいつでも力強い
そりゃあ先生も惚れちゃうよね
なんてクスリと笑みが零れてくすぐったい気持ちになる
落ち着いた声で話す聖夜に耳を傾けて居た時
あんな大勢の中から直輝を見つけた
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