アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
体育祭の季節
-
頭に突き刺さるような視線を感じてチラリと目だけを動かしそちらを見る
視界の隅によく見慣れたシルエットを見つけた
祥だ
陽とハルも一緒にグラウンドの奥に他の人達に紛れて座っている
1人で百面相してるのか
ヘラ〜と口元を緩めたり頭を振ってはしかめっ面になったり忙しそうだ
ああ、早く祥のところに行きたい
体育祭なんてどうでもいいし
聖夜の話なんて聞き飽きた
初めの頃はあの聖夜が教壇の上に立って真面目な顔して話す姿は新鮮で面白かったけど今はもう見慣れた
弄るネタにもならないし
そう思って俺達生徒と向かい合うようにして綺麗に横一列に並んで立っている教師へと視線を向けたら七聖先生を見つけた
……あの人も大概分かりやすい
いつもと何ら変わらず品良く立っているし
雰囲気もどことなく人とは違う色っぽさがある人だ
聖夜が惚れたのも納得する
そんな先生だけど聖夜が壇上に立っている間だけいつもどこかしらソワソワとしているんだから
二人揃ってムッツリだな
まあ俺にとっちゃどうでもいいし
聖夜と七聖先生が上手くいってくれる事に越したことはない
ほんのり頬を染めてる七聖先生と
それを知らずに俺達に届くよう真っ直ぐ話をする聖夜
お互いに思い合ってるのにいつもズレてる2人を見ていて馬鹿だなと思う
そんな心配しなくても
あんたら2人はしっかり思いあってるよ
ま、そうは言っても他人から見たら簡単に分かることでも本人になった途端にどれだけハッキリした答えでも分からなくなるのが人の気持ちだ
それは俺と祥も同じだし
厄介なものだ
そう宙を仰ぎながらつまらない話を聞いていた時不意にジャージの裾を引っ張られた
「直輝くんっ」
「……」
チラリ見下ろした先、
隣のクラスの女が服を握っている
めんどくさいな話したこともないだろあんた
そんな事言うわけにも行かなくて
もう一度横目で祥を確認すると口端を密かに上げ咳払いで誤魔化し笑顔を浮かべた
「どうしたの?」
「ねぇねぇ、ちょっといい?」
「うん、いいよ」
身長差があるから聞きやすく腰を屈める
ふわり、香水の甘い匂いがした
甘い匂いは嫌いじゃない
甘いものは寧ろ好きだ
だけど何でこんなに不快な気分になるのか
祥以外の他の誰かの甘い匂いを
体が拒否している
甘い猫なで声も、お強請りも、お誘いも
どれもすべてどれだけの美人でも
どんなに可愛らしくても祥じゃないならジャガイモだ
ゴロゴロしたジャガイモに黒い点とかその他諸々がついてる感じ
こんな事言ったらまた祥に最低だのなんだの怒られて説教されるだろうけど
それぐらい俺にとって祥と他の誰かの差は愕然とするほどの差だった
「あのね」
「あ、待って」
「なに?」
「生徒会様の声が大きくて聞こえないから耳元で話してくれない?」
「えっ、う、うん!」
「ありがとう」
にっこり
微笑んで笑いかけたら同級生の顔が真っ赤になる
離れてる間でも祥に余所見させたくない
聖夜じゃなくて俺を見ていて欲しいし
俺を意識していて欲しい
そんな子供染みた独占欲で
わざと同級生にそうお願いすると
真っ赤になりながらもどこか嬉しそうな彼女が耳元に手を添えて話してきた
どうでもいい、内容のない話を聞きながら祥の事だけを考える
いまごろ妬いてるかな
距離が近い事にムッとして
でもこれって普通なのか?とか一人で自問自答繰り返してキャパオーバーになってんだろう
可愛いなぁ
拗ねてる時の祥を思い浮かべてクスリと笑みが零れた
早く抱きしめてキスをしたい
ツンツンして一人で暴言吐いて
俺が傷ついたとか思ってシュンっと反省してる祥が可愛くて堪らない
だから虐めたいし泣かせたくもなるし
その後はうんっと甘やかせて沢山笑顔にさせたくなる
祥を抱きしめた時の感触を手のひらに思い返して同級生から離れると今度は目だけじゃなくて
体ごと祥の方へと向けて笑いかけた
ドキッと驚いたような顔をした祥を見てクスクスと笑いがこみ上げる
そんな驚いちゃって本当に顔に出やすいんだから分かりやすい
これが終わったら弄ってやろうと思った時、祥が立ち上がり何処かへと消えていく
トイレ、か?
それとも飲み物でも買いに行ったのか
ナンパされたりしたら困るからあんまり動き回って欲しくない
自分がどれだけ人の注目を集めてるのか自覚がないから尚のことだ
どうせすぐに帰ってくるだろ
そう思ったけど祥は開会式が終わってもグラウンドに戻って来なかった
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
212 / 507