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クリスマスは延期
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「ふー……、お疲れ様でした!」
クリスマスのつぎの日は
いつもなんだか寂しくなる
賑やかであんなにキラキラしてた街は静けさを取り戻し出すし、
赤や緑や白やカラフルなカラーは消えて
冬らしい少しどこか寂しさを残す景色
そんな日でも人は休みなく働くわけで
俺も例外なくシフト通りにサロンに来て
今日1日の業務を終えるとバックヤードに戻った
「祥も上がり?」
「あ、瑞生さん」
「お疲れ様」
「お疲れ様です。 今日は瑞生さんと同じ上がりだ」
「……あれ、元気ないね?」
シフトが書かれているボードを見て振り返った時、前髪をサラリと撫でられる
髪で隠れた瞳を覗き込むと
瑞生さんはそんな事を言っていた
「元気なら有り余ってますよ」
「嘘はダメだよ」
「……」
「今日このあと暇?」
「え?」
「飲みにでも行こうよ。 俺の奢り」
「いやそんなの悪いですっ」
「いいのいいの、最近ある人のお陰で食費代浮いててさ。 ね? だから行こうよ」
「……」
「ふふっ、決まり」
静かに品よく瑞生さんが微笑んで
バックを持つと早速行こうよって手をひかれる
俺もバックを慌てて手に取ると
腕をひかれるまま裏口からお店を出た
「どこ行くんですか?」
「んー、あ! そうだ俺の知り合いの店いく?」
「知り合い?」
「そ、耀さんって俺がお世話になってる人の店」
「俺はどこでも大丈夫です!」
「じゃあそこにしよ。 奢ってもらお大人に」
「み、瑞生さん……」
悪戯に笑ってそう言う瑞生さんに
思わず苦笑してしまう
でもその人きっと瑞生さんと親しいんだな
何となくだけど
瑞生さん人に奢られるとか
人に貸しを作るのとか凄い嫌いそうだけど
今普通に奢ってもらおって言ってたし
わざわざその人のお店に行くほどだし
なんだか珍しい
「何考えてるの?」
「へ……?」
「俺のこと考えてたでしょ」
「か、考えてないですっ」
「……祥って嘘が下手だよね」
「う……直輝にもよく言われます」
「直くんは嘘が上手そう」
「あいつは嘘が十八番ですからね」
「……ふっ、でも直くんは祥には弱いんだろうね」
「そ、ですかね……どうだろ」
「そうだよ。 直くんの世界には祥しか居なさそうだし」
直輝を思い返しながら
瑞生さんと話をする
駅に着いて、
電車を待つ間も乗ってる間もずっと頭の隅には直輝がいて
今日も会えないのがなんだか寂しくて
冬のせいなのか胸の奥がキュッて締め付けられてるみたいに寒い
「ここだよ」
「わぁー……お洒落ですね! 俺入っても大丈夫ですか……?」
「んー、俺が居るし大丈夫」
トン、と優しく背中を押されて瑞生さんが笑いかけてくれる
ほんのりその笑顔に胸が暖かくなって
俺も笑顔を浮かべるとお店の中へと足を踏み入れた
「いらっしゃー……て瑞生かよ」
「こんばんは。 俺に会えて嬉しいでしょ」
「へいへい、嬉しいですとも」
「今日ね、俺の後輩連れてきたんだ」
「んー?」
外見だけじゃない
中も一つ一つの装飾が凝っていて
緩やかに流れるお洒落なジャズと
暗く薄暗い店内はなんだか緊張してしまう
店内の奥、淡いブルーのライトに照らされているカウンターに「カガリさん」と呼ばれた人はいた
「いらっしゃい。 瑞生の後輩なんだろ? 好きなだけ飲んでいきなよ」
「あっ、は、はい! ありがとうございますっ」
「おい本当に瑞生の後輩か?」
「なにそれ失礼」
「瑞生の後輩とは思えないぐらい純粋でいい子だな」
「俺が純粋じゃないみたいな言い方だね」
「……。 だろ?」
「祥、せっかくだし高いお酒沢山飲もっか?」
「お、おいおい瑞生!」
知的そうなクールな人だと思ったのに
話してみるとそうじゃないんだと驚く
話し方は落ち着いているし
声は心地よい低さで大人の余裕を感じる
でもとっつきにくいとかは全くなくて
寧ろ笑った顔は無邪気で何だか最初のイメージとは大違いだ
「祥こっちおいで」
「あ、はい」
「おー……暗いところじゃ分かんなかったけど、明るい下でみるとかなり美人だなぁ」
「祥には手出さないでね」
「ばっ……! お前な!」
「……」
「……瑞生は後で覚えとけよ」
「知らなーい」
瑞生さんに呼ばれてカウンター席の端っこに腰掛ける
さっきよりも明るいライトの下に座ったらカガリさんにそう言われて苦笑いしか出来なかった
「俺は黒江耀って名前で、ここのマスター兼オーナーだ。 よろしくな」
「よろしくおねがいします! 小日向祥です、瑞生さんとは学校も美容院も同じでお世話になってます!」
「ん? こひなた、しょう?」
「はい」
「……あれ、しょう君、弟居るか?」
「え、弟?」
「なに新手のナンパ?」
「だー! 瑞生は黙ってろ!」
所々とけどけしい視線を向ける瑞生さんに
耀さんが困ったようにそう答える
一方瑞生さんは特に変わった様子もなくて
寧ろ耀さんをいじめて楽しんでるようだ
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