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クリスマスは延期
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「弟なら居ます、二個下が1人」
「その子の名前って陽ちゃんか?」
「え!」
「やっぱりかー」
グラスを磨きながら
落ち着いた声で一人頷き納得しているカガリさんを俺は驚いたまま見つめていた
「あ、いやなその陽ちゃんが好きで好きで堪らない餓鬼がここで働いてんのよ」
「……ハル、君?」
「そーそー! そのハル君」
「え、そうなんですか! 世間って狭い」
「昨日ここでデートしてたよ。 陽ちゃんもなかなか美人だったけど、二人揃って美人だねぇ」
「耀さんオヤジ臭い」
「だーから年齢のことは言うんじゃねえよ」
「祥、何飲む? 遠慮しないで好きなの頼んでね」
「おいこら、人の話は最後まで聞きなさい」
カガリさんを無視して俺に話しかける瑞生さんは何だかいつもと違う人みたいだ
おかしな話だけどわざと冷たくしたりするのが瑞生さんの甘えてる態度みたいで、野良猫みたいだなぁなんてそんなこと思ったり
そうこうしてる間にカガリさんも色々とつまみと言うにはお洒落で豪華な料理を持ってきてくれて
お仕事お疲れ様でしたなんて言いながら
瑞生さんと乾杯をした
「それで? どうして元気なかったの?」
「……元気は、本当にありますよ」
「でも胸に突っかかるみたいな顔してる」
「……」
「直くんでしょ」
「……はい」
「上手くいってないの?」
「あ……いや、そんなことは……」
「ふーん」
しばらく経ってから瑞生さんが聞いてくる
うまく答えられなくて口を結んだとき
カランとタイミング良く氷が溶けて音をたてた
お酒に溶けていく氷と
グラスを伝う雫を見つめると
静かに口を開いた
「本当に上手くいってないとかじゃないんですけど、最近全然時間合わなくて」
「忙しいもんね。 年末近いし、彼人気だし」
「……」
「人気なのが苦しい?」
「ど、ッなんですかね」
「……泣きそうな顔しちゃって。 そんな悲しい顔してたら俺が横から盗っちゃうよ?」
「えっ……!」
「このままどっか行っちゃう?」
「なっ、み、みみ、瑞生さんっ!」
「……」
お酒が入ってほんのり熱っぽい瞳
あの日と同じ瞳をした瑞生さんが
俺の首の裏を撫でる
ゾクリと粟立つ肌に震えた腰を引いて
その手から逃れようとした時思い切り抱き寄せられた
────まずい!
ぎゅうっと目をつぶって口を手のひらで抑える
だけどいつまでたってもその感触はやってこなくて代わりに耳元で楽しそうにクスクスと笑う声が聞こえた
「ふふっ」
「……っ、み……ずきさん」
「何もしないよ。 それに痛いぐらいこっち見てる人が1人居るし」
「へ……」
チラリと瑞生さんが視線を向けた先
他のテーブルから戻って
こっちに帰ってこようとしていたカガリさんが血眼で俺達を見ていた
「ふっ、あははっ! 祥も耀さんも可愛い」
「み、ずきさんー!」
「ごめんね、怒らないで? でもさ、本当に直くんにそう伝えておいてね」
「……」
「俺の可愛い祥泣かせたらもらうって言ったよね?って」
「……そんなのいつ」
「それは俺と直くんの秘密だよ、祥」
ふわりと微笑む瑞生さんは
クラクラするほどかっこいい
俺がこんな人から本当に好かれていたなんて嘘みたいだ
「俺も瑞生さんみたいに大人になれたらいいんですかね」
「ん?」
「色っぽいっていうか、なんていうか……」
「おかしな事考えなくても祥は十分色っぽいよ。 瞳の下にある泣きぼくろもセクシーだし、華奢な腰も肩も抱き寄せたくなる。 薄ピンクの唇は優しく啄みたくなるし……繊細に見えて案外強気な所もいいね」
「〜〜ッ?!」
「直くんもかっこいいけど、引けを取らないぐらい祥は美人だよ。 男がよってたかって欲情するほど、ね」
「瑞生さん……っ、顔近い……」
「……試しにキスしてみる?」
「へ?」
「前はあんな形だったけど、今度は同意の上。 浮気もそそるよね、燃える」
何が本当なのか冗談なのか
全く瑞生さんの考えてることはわからない
グラスを握る手の上から瑞生さんの手が重ねられて
驚いてそっちを見た俺の顎を優しく掬われる
お酒のせいとかじゃなくて
心臓がバクバクと五月蝿い
息つく暇もなく
手繰り寄せられる優しい力に
どう抗えばいいのか頭を働かせていた時
不意に体が後ろへと引っ張られた
「ストップ。 俺の許可なしにあんま触らないでください」
「ふっ、あと少しで祥とキスしてるところだったよ直くん」
「……な、お……?」
嘘だ……
そう、信じようとしない心と裏腹に
願う人がいる事に期待して振り返る
「ッ!」
見上げた先には
カウンタ席から落ちそうになるほど俺を後ろから抱きしめてほんの少し怒ってる直輝が立っていた
「祥もいくら俺と会えないからってこいつとキスなんてするな」
「酷いね、こいつだって」
飄々と交わす瑞生さんに
直輝が冷たい視線を送る
そこに耀さんも戻ってきて
もう頭の中はこんがらがったまま
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