アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その花に、想いは
-
崩れ落ちるように膝をついて
止まることない涙を流す
黒く冷たいアスファルトの上に
幾つもの雫が染み込んでいく
苦しい
苦しくて痛くて堪らない
大好きなんだ
本当は直輝が大好きで大好きで
愛しくて堪らないんだ
もう二度とあの手に触れてもらえないなんて
死ぬよりも辛くて堪らない
愛してる人の笑顔を隣で
見つめられないのが触れられないのが
こんなにも苦しいことだったなんて
俺に初めて
一人で居る寂しさを与えてくれた人は
一緒に居るだけでその寂しさを埋めてくれた人はもう
もう、俺の隣にはいない
「ごめ……ッ……直輝……ごめんなさ…っ」
最後の最後に嘘をついた
直輝との未来が見えないなんて思った事は一度だって無かった
直輝の大丈夫があれば
俺は本当になんだってへっちゃらだったんだ
好きって聞く度に終りを感じた事なんてなかった
それどころかもっともっと
気持ちは溢れていたし
同性同士が難しくても
ずっと手繋いで乗り越えていく方法
直輝となら見つけられる、
乗り越えられるって
心の底から信じて疑わなかった
だけど、それじゃダメなんだってこと
これが生きてる世界の現実何だってこと
背けていた事実があまりにも大きすぎる
やっぱり俺達は子供だった
どんな事でも乗り越えられるなんて
なんの代償も無しに思ってた俺達は
世間を何一つ知らない子供だったんだ
「……」
ヒヤリ
濡れた頬に冷たい何かが触れる
風の撫でる温度じゃない儚く消えていく温度
見上げた空から白くて頼りないぐらい
綺麗で優しい雪が降ってきた
直輝とみたいねって言っていた雪
積もったら雪だるまも雪合戦もかまくらも
色んなことして沢山遊ぼうねって約束した未来
でも今はただの思い出だ
叶えられなかった暖かくて悲しい思い出
ぐしゃぐしゃに涙で濡れた顔を
乱暴に袖で拭う
……泣いてちゃダメだ
もう俺の涙を優しく拭ってくれる人は居ないんだから
自分で拭わなきゃ、自分で歩くんだ
夢を追いかけるって直輝に伝えた
それだけは嘘にしない為に叶えなくちゃならない
唯一、嘘じゃないその気持ちだけ
もう一度自分に言い聞かせて
座り込んでいた体を立たせると
今度はしっかりと前を見た
「すー……、はぁ……」
胸いっぱいに冷たい空気を吸い込む
ゆっくりと心に溢れるものを溶かして吐き出すとまた一歩足を踏み込んだ
代償の代わりに直輝が幸せになるなら構わない
俺達2人が隣り合わせで一緒に居れなくても
違う場所で直輝が笑っているなら
それが俺の幸せになる
二度と顔を合わせる事がなくても
この馬鹿みたいに広い空のどこかで
俺の大好きだった優しい笑顔を浮かべて
誰か大切な人と笑いあっていたなら
俺も幸せなんだ
そう思えるのは
本気で直輝を好きだったから
俺にこんな誰かを愛する気持ちをくれたのは直輝だったから
本当に大好きだからこそ
今の俺達にとって一番ベストな選択はこれしかなかった
学生から大人へと変わる今しかなかった
時間が経てば経つほど
離れ難くなるから
一つの節目の今が
俺達の関係を終わらせるのには
ちょうどいいタイミングだったんだ
「……ふっ。……だっさいな俺」
直輝に泣くなとか言っといて
離れた途端泣き崩れるとか格好悪すぎる
こんなんじゃ直輝に追いつくなんて
まだまだ無理だ
きっと直輝はもっと上に行く
夢だけは嘘にしない為に
俺だって上を目指すんだ
「……俺も頑張るから」
そう呟いた言葉を自分に言い聞かせて
直輝への気持ちには蓋をした
大切に、大切に
もう一人でも平気だって笑い飛ばせるそのいつかまで
誰にも俺にも傷つけられないように
隠すようにそっと心の奥に閉じ込めた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
245 / 507