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再開
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「祥君ー! こっちも頼むよ」
「はい! こっち終わったら行きます」
一瞬の休む暇もないほど目まぐるしく回る現場
華やかな舞台の裏には
いつも汗水垂らして縁の下の力持ちや
目立たずとも絶対に必要不可欠な人が居るものだ
高校を卒業してそろそろ三年が経つ
あの日の終りから三度目の冬がやってきた
何とか美容師免許を取得した俺は
相変わらずあの美容院でオーナーや瑞生さんと一緒に正式なメンバーとして一緒に働いている
店に出ない日はこうしてしっかりとヘアメイクアーティストとしての修行も積むことが出来ていた
「祥、遅いわよ。 チンタラしてるならクビ」
「あ、すみません! 今行きます!」
今まさに厳しい声をかけて来たのが
俺を何故なのか弟子にしてくれた五十嵐 怜(いがらし れい)さんだ
見た目はスラッとした立ち姿に艶やかで綺麗な長い黒髪
切れ長で涼し気な瞳に
手足は長くてモデルさんに引けを取らないほどの華やかな男性
だけど一つ変なところがあって
女装癖があるってことだ
「あんた何ボーッとしてんのよ」
「すみません」
「……謝れって言ってんじゃないの。 理由を言いなさいって言ってるのよ」
「……黙秘します」
「なら無理矢理聞くわよ?」
「それより怜さん呼んでますよ、ほら」
「……あんた後でお仕置きしてやる」
「ふふっはいはい分かりましたから、今は先にモデルさんたちのところ行ってください」
ギロリと睨む怜さんの背中を押して送り出す
怜さんと一緒に仕事をして
1ヶ月持った人を見た事がないって最初の頃は色んな人に言われた
お店のオーナーにも
変な事に巻き込まれなきゃいいなって言われるぐらい
この世界で名を知らない人はいないほどの凄い人なんだ。 悪い意味でも
でも、日本だけじゃなくて世界のトップモデルを手がけてる本当に数少ない指に入る凄腕のヘアメイクアーティスト
そんな人に声をかけられて断る理由なんかなかった
チャンスの神様はいつだって直ぐに消えてしまうから掴み損ねる前に掴まなきゃ
って始まった怜さんの元での雑用と言うよりもパシリはなかなかなものだったけど
怜さんに負を劣らずな自己中なやつと小さい頃から一緒に居たおかげで何だかんだやってこれた
もう怜さんと出会ってから二年も経つ
怜さんの元で働かせてもらってからもう二年が経ったんだ
「怜さん今日は、" 男"で来たんですね」
「わぁあっ! ゆ、結葵(ゆあ)君!」
「祥さんおはようございます」
「お、おはよう……後ろから急に来たら驚くだろ」
「隙だらけな祥さんが悪いんですよ。 だから僕は悪くない」
「結葵くん……」
いつの間に居たのか
いつから居たのか
後ろからひょっこりと現れたのは
この仕事を始めて出会った人気タレント、俳優の紺藤 結葵 (こんどう ゆあ)くんだ
零れ落ちちゃうんじゃないかってくらい
茶色くて大きなクリクリの潤んだ瞳に
柔らかいブラウン色のふわふわなパーマがかかった髪
白くて柔らかそうな女の子も顔負けな
可愛らしい顔立ち
だけど見た目の緩さや愛らしさとは
真反対で落ち着いていてしっかりしている性格
俺よりも四つも下なのに
大人っぽい雰囲気を持つ不思議な子だ
「祥さん今日は一緒にご飯食べに行けますか?」
「あ……今日も夜遅くまで仕事なんだ」
「じゃあ待ってますよ」
「ダメだよ17歳の未成年を連れ回してたなんて知れたら俺が結葵君のマネージャーさんに怒られちゃう」
「なら僕の家に来るのは?」
「明日も早いからね、ダメ」
「……祥さん本当にダメですか?」
「……だ、ダメ、だって」
「……そっか。 僕一人暮らしだから誰かとご飯食べたいなって、でも祥さん忙しいですもんね……我慢します」
「……」
それとこのあざとさがまた厄介なのも
流石俳優、とでも言っておこう
「はぁ……分かった。 もし日付を超える前に終わったら結葵君の家に行くよ」
「本当ですか?」
「うん、でも日付を超えるのはやっぱりどうかと思うからその時はまた今度でもいい?」
「はい。 楽しみです」
「……じゃあ仕事戻るよ。 結葵君も頑張って」
「祥さんも。 気をつけて下さいね、セクハラ」
「〜〜ッ?! ゆ、結葵くん……!」
「ふふっじゃあまた夜に」
可愛い顔で笑った結葵君がサラリと言ってのけた言葉
やっぱりこの業界っていろいろとずさんだし闇もある
学生の頃はゲイとかそんなの珍しくて
周りには居ないって思っていたけど
この世界では案外多いもので
俺もこの仕事を初めてから何度か夜のお付き合いに誘われた
当然断ったけど
それだけで済むわけもなくて
やっぱりたまに無理矢理触ってくる人もいたりして
その無理矢理襲われかけていた時に
結葵君に助けられたんだ
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