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再開
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そんな昔のこと思い返しながら走り出す
結葵君と別れてから持ち場に戻ると
これから撮影をするモデルさんを担当する怜さんのアシスタントとして取り掛かった
ファッション雑誌とか
そういったものでは最近俺一人で担当する事も増えてきて何だかちょっと嬉しかったりする毎日だ
でもまだ大型のイベントとかCMとか
そういう大きな仕事は怜さんの指示なく動くことはできないし
早く俺も一人前になりたい
「祥、これに載ってるもの取ってきて頂戴」
「分かりました」
渡された資料を持って倉庫へと向かう
スタジオを出て搬入口に差し掛かった時
ふと視界に懐かしい影が見えた気がした
……いや……勘違いだよな
見えたその人物がここにいるわけがない
今日は朝から考えていたから
幻覚が見えたのかもしれない
だってアイツはまだ日本には帰ってこない筈だから
浮かび上がるその影を消し去って
言われたものを手に持つと急いでスタジオへと戻った
「怜さん! 持ってきました」
「遅いわよ」
「これも一応補充で」
「……」
「今のはナイスでしたか?」
「調子に乗らないの」
「ふふっ」
くるくる、と少しの無駄もなく怜さんは女の子に表情を付けていく
人間本来が持つ表情とはまた違うもの
お化粧や髪型
それらの色やコントラストで出すもう一つの表情
怜さんは少し変だけど
でも確かに人の魅力を引き出すのは誰よりも凄い
「ボーとしてないでこの時間の中でもやることやりなさい」
「はい!」
見惚れていた俺を横目に怜さんが顎でアイロンを指示する
コンセントに挿して色々と準備をしていた時、後ろに控かえていた皆が何やら驚いた声を上げていた
「いつ帰ってきたんだよ!」
「ほんっと久しぶりだなぁ」
懐かしむように皆の嬉しそうな声
普段から賑やかな現場だけど
いつもよりもうんっと楽しそうで騒がしい
誰かお客さんが来たのかな?
そんな事を考えながら
メイクアップを終えた怜さんと共にモデルさんの最終チェックをする
全て終えてスタジオへと戻ると
その声は一層大きく聞こえてきた
「五月蝿いわねぇ」
「怜さん案外騒がしいの嫌いですもんね」
「案外って何よ? あたしが品がないのは嫌いなこと知ってるでしょ」
「怜さん今日男の格好してるから口調となんだか合わなくて面白い」
「祥……?」
「あっ」
思わず漏れた本音に怜さんが微笑みながら青筋をたてる
ちょっと言ってはならないことを口滑ってしまったなぁ、なんてごめんなさいのポーズをしながら怜さんと距離をとっていた時
耳にする筈のない声が聞こえてきた
「一旦戻ることになったんです」
「いやー俺らは大歓迎だよ! アメリカはどうだった?」
「ぼちぼちですかね」
「かー! この野郎ー遊びたい放題だったかよ直輝!」
……ナオキ?
ピクッと反応を示す体は
頭で考えるよりも先に体が動いていた
振り返って見回したその先に
綺麗な白髪の毛先を遊ばせた背の高い眉目秀麗な男が立っている
ドクン、ドクンと速まる鼓動に
じんわりと湧き上がる汗
あんなにうるさい音が遠のいて
シーンと時が止まったみたいに静まり返る
振り向いた先に立っていた男は
────幻覚なんかじゃない、直輝だ
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