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子猫と白ライオン
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「何かすっかり直輝に懐いたね」
「動物にもモテるみたい」
「殴るぞ」
「怖い飼い主だねー……ん? そういや名前は?」
「まだ無いんだ」
「なんで?」
「享さんが猫アレルギーで、誰か引き取ってくれる里親探そうかなって。 でも見つからなかったら俺が拾った命だしちゃんと面倒みる」
「ふーん……俺が引き取ろうか?」
「えっ?!」
「姉貴結婚するらしくて、こっち戻って来てるからコイツが大きくなるまで一人にしなくて済むし。 俺も一人で暮らしてるから寂しくなくて助かる」
「でも……」
「それに俺にベッタリだしな」
「そうだけど」
「何か不満?」
「な、無いよ……でも」
「じゃあ決まりな! 名前どうするかなー祥にでもする?」
「はぁ?! 辞めろバカ!」
「祥〜、祥〜可愛いね〜」
「や、辞めろってば!」
「しょーちゃん」
「直輝!」
「わかったよ、じゃあ……しーちゃんにしよっか、な?」
「ミャー」
「え?!」
「お、鳴いた」
しーちゃんって直輝が言った途端
気持ちよさそうに眠っていたニャンコが可愛い声で鳴く
あんまりにもタイミングが良くて
否定することも忘れて驚いてしまった
「コイツは気に入ったみたいよ」
「……」
「祥はしょーちゃんだし、しーちゃんとは関係ないだろ?」
「……もういいよそれで」
「ふふっ、じゃあ今日からお前はしーちゃんだ」
「……」
小さな子猫を優しく抱き上げた直輝が
そう言って嬉しそうに子猫の鼻にキスをする
しーちゃんも、嬉しそうににゃあって鳴いては尻尾がゆらゆらと揺れていた
「ふふっ、お前可愛いな」
「……」
「しーちゃん」
「…………」
なんか……
なんか俺だけ蚊帳の外みたいなんだけど
しーちゃんと直輝が仲良くしてるのを見て何だか胸がモヤッとする
なんでそんな気分になったのか分からないけど直輝が満面の笑みでしーちゃんばっかり構うからほんの少し寂しい……
「……直輝ご飯食べていく?」
「あー、どうしようかな。 迷惑にならないか?」
「一人も二人も変わらないよ」
「じゃあ食べる」
「わかった。 作ったら呼ぶね」
「んー」
リビングに向かうと冷蔵庫の中にあるもので夕飯を作り出す
何だか三年の間が空いてた事が嘘みたいに自然だ……
さり気なく俺もご飯食べるかとか聞いてるし
このまま行けば
俺達本当に普通の友達に変わって行くのかな
「……」
モヤモヤ心に霧がかかる
俺は一体どうしたいんだ
核心の部分は何も変わってないけど
直輝と話すと幸せなのに寂しい
一定の距離がある事に胸がチクチクと痛みを訴えていた
「……辞めた辞めた! 暗くなるなっての」
自分で自分を励まして暗くなった気分を吹き飛ばす
出来上がった料理をダイニングテーブルへと並べると二階で待つ直輝を呼びに行った
「直輝ー出来たよ」
「……」
「……寝てるの?」
机に突っ伏した直輝から返事がない
近寄って顔を覗き込むと
涼し気な目元は閉じられていて
いつもよりも子供っぽい寝顔がそこにあった
「……ご飯できたよ」
「……」
「直輝」
隣に座り込んでユサユサと体を揺さぶる
けれど直輝はうんともすんとも言わなくて
相変わらず一度眠るとなかなか起きない
仕方なく俺も隣に座り込むとテーブルの上に腕をつきながらぼんやりと寝顔を見つめていた
三年ぶりに見た直輝は高校生の時よりも
うんと大人っぽくなってもっと落ち着いた雰囲気を纏っていた
変わらず頭は白髪だったけど
昔の何も手を加えていないままじゃなくて
毛先を緩く遊ばせていてフワフワしている
今日も思ったけど歩く度に髪がふわふわ揺れていて何だか雪みたいだと思った
いや、わたあめ? 雲?
とにかく前よりも大人っぽくなって大人の色気がある直輝がどんな風に変わったのか気になる
向こうでは彼女は居たのかな
好きな人とか一度か二度くらいは出来たんだろうか
直輝は三年間の時間で一瞬でも俺を思い返してくれたのかな……
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