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子猫と白ライオン
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「……直輝」
「……」
「起きてる?」
「……」
「向こうはどうだった? 友達とかちゃんと作った?」
「……」
「俺はね色々あったよ……本当に色んな事があった」
眠る直輝の綺麗な大きい手のひらに手を添えて話しかける
聞いて欲しかったこと
聞きたかったこと
沢山、沢山あるんだよ
「……でも一番伝えたい事は俺はね、今でも」
「……」
「……。 やっぱり言えないや」
言ったら壊れちゃいそうで怖い
全部全部崩れていきそうで
その言葉を口にするかしないかがきっと
停止線なんだろうなって
停止線の遥か手前で俺はグラグラバランスもなく立っていて
たった一本の頼りない糸が切れたら
その線を超えてしまいそうだから
怖くてどうしようもない俺はその二文字をのみこんだ
「……起きろー」
「……」
綺麗で長い指に俺の指を絡めてみる
きゅって握っても何も反応がなくて
何だか自分のこの虚しい行動に嘲笑がこぼれた
この暖かい手も
あの優しい眼差しも
宝物みたいな笑顔も
全部昔は俺だけに向けられていたけど
今はそうじゃない
もう昔みたいに
当たり前のように頭を撫でてもらえないし
拗ねて喧嘩した後に優しく手を握ってももらえない
いつも俺の名前を呼びながら意地悪な笑顔で抱き寄せてくることも無いし
その名前を呼んだ唇で口付けを交わすことも
その暖かい腕の中で包まれて眠る事も
俺だけにあった特別は今はもう俺には向けられていないんだ
「寂しい」
「……」
「直輝は寂しく無かったらいいな……直輝が幸せだったら俺も幸せだよ」
「……」
握っていた手から力を抜く
眠る直輝の手のひらから離れようとした時、反応のなかった大きな手のひらがギュッと優しく俺の手を握り返した
「……っ」
「……」
驚いた
直輝が起きたのかと思った
でも本人は未だに瞼を閉じて眠ったままで
無意識に握り返された手を離す事ができなかった俺は
作った夕飯が冷めることも忘れて
暫くの間直輝の手を握ったまま寝顔を見つめていた
「直輝起きろって!」
「……っ、んー」
「直輝! おい!」
「う……っ」
少しの間繋いでいた手を離してから
眠る直輝を容赦なくたたき起こす
不満そうな声を上げた直輝が
寝ぼけ眼のまま俺を見上げると
不意に伸ばした腕で俺を抱き寄せた
「〜〜ッ?!」
「……しょお……」
「な、直輝!」
「んー」
眠そうな声を上げて
俺を抱き寄せた直輝がそのまま後ろへ倒れ込む
お陰で俺も巻き添えをくらって
直輝の上に乗っかるようにして倒れ込むとそのまま腰を手で抱き寄せられた
「な、に寝ぼけてんだよ!」
「うっさ……」
「へ……? え、ちょ……っ!」
不機嫌そうに眉を潜めた直輝が
俺の頭の後に手を添えると驚く間もなく口を塞がられる
「んんーっ!」
バタバタ暴れてもいくら胸を押し返しても
直輝の拘束が緩む気配がない
段々と深くなっていくキスに
直輝との三年越しのキスに
ゾクゾクと体が震えて来たとき
ごろん、と体を反転させられていつの間にか今度は俺が直輝に乗っかかられていた
「んぅ……っ! ふ、ぁ……や……んー……」
「……っ、ん……しょお……」
「な、お……寝ぼけて、あっ……ん」
直輝が寝ぼけた声で俺の名前を呼ぶ
そのまま首元に顔を下ろすとチュッと鎖骨にキスをされて吸われる
途端にピリッと走る甘い痛みに
クラクラと頭の中が一瞬で惚け出した
「直輝……っ」
「……しょ、う」
ぼんやりした直輝の瞳とパチリ視線が絡み合う
段々と顔を再び近づけてくる直輝に
ぎゅうっと目を瞑った瞬間、
どしりと体に重みが広がった
「うっ……!」
「……」
「……な、直輝……?」
「……」
「こ、の! 〜〜っ馬鹿! 変態!」
「っ?!」
まさかそんなタイミングで再び寝落ちするなんて最低にも程がある
あんなキスまでしといて
おまけにキスマークまで残しておいて
それでもう一度寝れるなんて……
ムカムカした怒りのまま直輝を蹴飛ばすと
その衝撃に今度ははっきりと意識を浮上させた直輝がキョロキョロと辺りを見回す
何が起きたのか全く分かっていない顔をして
驚いてる直輝に、もう一発パンチを食らわすと痛がる直輝を置いてさっさと一人でリビングへと戻った
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