アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
近づく距離、阻む手
-
「祥、起きな」
「ん……」
「そろそろ時間じゃない?」
「な、んじ」
「朝五時」
気持ちよく眠っていたら誰かに体を揺さぶられて起こされる
目を開けるのが億劫で
未だ瞼を開くことを拒んでいたけど
聞いた時間に驚いて飛び起きたら
今度は目の前に居る直輝にも驚いて
朝から心臓が止まるかと思った
「おはよ」
「ーーッ?!」
「昨日一緒に寝ただろ」
「え?! ね、寝た?!」
「覚えてないの? あんなに熱い夜だったのにな」
「あ、熱いって……?!」
直輝の言葉に寝ぼけたままの俺は頭がうまく回らなくて目が回り出す
俺は昨日ここに泊まって
それで、あれ?
あ、直輝がやってきてそれから……
「って、何もしてないじゃん!」
「そうだけど? 何かしたなんて言ったか?」
「い、今……!」
「ふっ」
したり顔で笑う直輝の顔を見てハッとする
意味深に「寝た」とか「熱い夜」とか言うから俺はてっきり……
「何やらしいこと朝から考えてんの?」
「〜〜っ!」
「祥のエッチー」
「こ、のバカ直輝!」
ニヤニヤニヤニヤ笑って朝から本当に腹が立つ
わざと自分だってそういった言葉を選んだ癖に
寝ぼけてたせいもあるけど
俺はてっきり直輝とエッチな事でもしちゃったのかと……
急いで服着てるかとか確認したし
とにかく朝から恥ずかしくて堪らない
「あーもう! 朝から喧嘩してる暇なんてないのにっ」
「勝手に怒ってるのは祥だけだけどね」
「煩い! 直輝も早く出る用意して」
「はいはい」
ドタバタ急いで仕事の準備をする
現場の入りは確か六時だったから
普通に間に合うけど他にも色々する事があるし
それに昨日連絡来てなかったのか
携帯を確認したら数分前に怜さんからの着信が入っていた
「……なんだろ?」
新しい服に着替えながら怜さんに掛け直すと
意外にも直ぐに電話は繋がった
「おはようございます、さっき電話出れなくてすみません」
「おはよ。 朝から悪いんだけどあんたご指名の客出来たわよ」
「え?!」
「専属ヘアメイクアーティストとして祥を指名してる人が居るのよ。 悪いけど早速そっちに行って頂戴」
「へ、でも……今日の仕事は」
「あたしの事務所にいるのは祥だけじゃないの。 代わりはいくらでも居るし他にもチャンスを待ってる子は腐るほど居るわ」
「わ、かりました……! じゃあすぐにそっち向かいます!」
「いいえ、向かわなくて結構。 そろそろそっちに本人が行くはずだから」
こんな朝早くに?
わざわざスタッフである俺を迎えにくるなんてそんな物好きどこにいるんだ……
そう考えた時、
頭に一人だけ心当たりのある人物が思い浮かぶ
そしてその予想ははずれること無く
まんまと的中した
「おはようございます、祥さん」
「……結葵君」
「今日から僕の専属ヘアメイクさんとして改めて宜しくお願いしますね」
「……」
「専属?」
「っ!」
落ち着いた声で可愛らしい笑顔を浮かべて
話す結葵君の言った言葉を繰り返したのは
俺じゃなくて、
俺の後でソファに腰掛けていた直輝だ
このタイミングで何故だか直輝も居ることにどくんと心臓が嫌な音を立てる
なんだか空気がピリピリとしてきた
「……あれ?」
「……今なんて言った?」
「おはようございます。 天使さんですよね、僕紺藤結葵って言います」
「ああ、宜しく。 それよりも今専属って言った?」
「はい。 今日から一ヶ月の間ですけど祥さんにお願いしようかと」
可愛い顔立ちには似つかないほどに
落ち着いた静かな口調で話す結葵君
反対に一瞬驚いた顔をしていたけど
直ぐにいつもと変わらない飄々とした態度を取った直輝
ただ二人が話をしているだけ
たったそれだけの事なのに
なんでなのか俺はヒヤヒヤとしていた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
264 / 507