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────専属ヘアメイク
その名前を聞いた瞬間、
一瞬時間が止まった
「へえ……良かったな。 これで祥も一歩夢に近づいたんじゃないか?」
「ーーっ! え、あ……うん……」
「……夢?」
ソワソワとどこか落ち着かない祥は
肩をびくつかせて慌てながら頷く
その姿を見ていた紺藤結葵ってやつは
夢が何なのか気になったらしい
「俺と昔話した夢。 じゃあ俺はそろそろ帰るよ、またね祥」
「……待って」
「……」
「あ、の……直輝」
「おめでとう」
「へ?」
「……俺は待ってるよ。 祥が話してくれた夢が実現するの」
「……っ、うん」
泣きそうな顔を必死に隠して笑う
祥の頬を撫でる
ああダメだ……
祥を誰かに取られると思っただけでこんなにも
こんなにも胸が焼き付きそうだ
「じゃあ仕事頑張れ」
「……うん。 直輝昨日もありがとう」
「いいえ」
「あと、今も昔も……本当にありがとう」
「ふっ、素直じゃん」
「……煩い。 そう言う気分だったの」
ムッとして笑う祥の頬から手を離す
出来ればずっと触れていたい
いや触れて手を払いのけられなくなっただけでも感謝すべきなのかもしれないな
そのまま祥と別れてスタジオの外でタクシーを拾おうとした時見知った人物を見かけた
相手も俺に気づいたのか
瞳が合った瞬間にぱぁっと笑顔になるなり直ぐに真顔へと変わる
……相変わらず馬鹿丸出しだな
心の中でそう呟くとこっちに向かってくる爽へ声をかけた
「ここで仕事?」
「な、なんだ直輝じゃん……!」
「今目あっただろ」
「もしかして俺に会いに?」
「……。 その都合のいい考えどうにかならないのか」
「な……っ! ただ俺は直輝が俺のこと好きなのかと思って!」
「冗談言うなよ。 好きなのは爽の方だろ?」
「……。 っ?!」
ポカーンとしていきなり固まった爽が途端にブワッと顔を赤らめる
そしてその真っ赤に染まった顔をもっと赤く染めると子供のように大きな声を上げた
「はっ、はぁ?! バッカじゃねーのぉ?! 俺は好きじゃないですけどぉ?!」
「……」
「この俺が直輝を?! それこそ冗談だな! ハハッ、俺がこんなちんちくりん好きなるわけないだろバーカ、バーカ!」
「……」
「……」
「……」
「何か言えよっ!!」
「……恥ずかしいやつ」
「〜〜っ!」
必死に取り繕う爽が逆に哀れに見えた
折角の整った顔も中身がこんなんじゃ意味がないな
まるで小学生男子のような照れ方をする爽を横目に溜息をつくとさっさとその場を離れようと歩き出す
けれどガッシリと爽に手首を掴まれたお陰で結局その場から動くことが出来なかった
「ちょっと待て!」
「待つから離せ。 それと俺に触れる度に10万払えよ」
「え?!」
「1回会話する毎に5万な」
「ちょ、ちょタイム」
「はい20万円」
「払ったら触れさせてくれるのか?!」
「……」
「10万なら払う!」
「お前……馬鹿か」
「へ?!」
「1回触る事だ。 俺に触れる度カウントするんだから10万で済むわけないだろ」
「あっ」
「本当に俺のこと好きな」
「はぁ?! だから好きじゃねーし! 俺はただ直輝をサンドバッグにしようとしただけだしぃ?!」
「はいはい」
本当に爽の精神年齢が小学生のままじゃないのか不安で仕方ない
本気で払いそうな勢いだった爽の手を引き剥がすと何か話があるんじゃないかとズレた軸を戻した
「で?」
「あ、そうだった! おめでとう!」
「何が?」
「映画、主演なんだろ?」
「ああ……。 ありがとう」
「まっ、俺の方が全然かっこいいけどな! 直輝もそこそこ悪くないし、似合ってなくもないけど」
「……」
「……」
「じゃあ、話は終わりだろ? 俺は行く」
「ま、待って!」
「もうしつこいぞ爽」
「だってお前全然俺の事構ってくれねーじゃん!」
「構いたい理由なんてないし」
「なっ?!」
「寧ろ出来れば構いたくもない」
「そんな……っ、こと……言わなくても」
「……」
「直輝は俺のこと嫌いなのかよ」
「嫌いじゃない」
「へ?!」
「でも鬱陶しい」
「な?!」
ガーンなんて効果音がしそうなほどに爽が落ち込み出す
だからそれがめんどくさいんだよお前は
って言いたかったけど
もっと面倒な事になりそうだったからそれは言わずにしまっておいた
「……グス」
「はぁ……。 じゃあ今日の夜飲み付き合うよ」
「え?!」
「俺も飲みたい気分だったし、どうせ今日も飲むんだろ?」
「い、いいの?!」
「嫌なら別に」
「い、嫌なわけ……! じゃなかった、直輝がそう言うなら仕方ないから遊んでやるよ!」
「……もう面倒だからそれでいい」
「じゃあ今日の23時に迎えに行く!」
「分かった」
「寝るなよ?!」
「はいはい」
「絶対にだぞ! 約束だからな!」
「分かったから早く行け」
すっかり御機嫌な爽の背中を押すと
相変わらず騒がしい奴からやっと開放された
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