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ズレ出す歯車
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「直輝〜、飲めよ〜」
「ああ」
爽の仕事が終わり合流してから
行きつけのバーで飲みだし2時間後
機嫌が良く、飲み足りないと駄々をこねる爽に引きずられて今度は自宅で飲んでいた
足早に2軒目へ行こうとする爽をひっつかんで家に来たのはこいつが酔うと本当に何を仕出かすかわからないから
その後始末をするのも御免だと思って
宅飲みを選んだわけだけどこれは想定外だ
「俺、直輝の事好きなんだ」
「それもう100は聞いた」
「直輝も俺が好きだって言うまで辞めてやらねぇからな〜!」
「……」
爽ってこんなやつだったか……?
酔ったら物凄く面倒くささに拍車がかかるのは知っていたけど、酔うと好きだって言うようなやつだったかと記憶を探る
でもいくら三年前の記憶を呼び起こしても
少しもかする記憶なんてなかった
「お前、飲みすぎ」
「あっ! おい!」
「酔うと一段と面倒くさい」
「なっ……だって、嬉しいし……」
「爽ってそんなキャラだったか?」
「……」
爽の手からグラスを奪ってテーブルの端へと追いやる
ムスッとした爽に少し刺すような冷たい視線を送ると、途端に今度はわかりやすく肩を落とした
「三年ぶりに会えたんだぞ」
「ふっ、そう言っても別れを悲しむ程の仲じゃなかっただろ」
「直輝はそうでも、俺は違う」
「……」
「俺は本当に直輝の事が……っ?!」
「しー」
「んんむ!」
「爽、その先を言ったら俺はお前と普通には接せなくなるよ」
「……」
「それでもいいなら聞く。 けど、この関係を続けるなら割り切って」
アルコールで火照った表情の爽を見つめて
手で塞いだ口を開放する
爽も、俺も、何だかんだこの関係を気に入ってるからこそ終わるような言葉は聞きたくないし言いたくない
「……卑怯だ」
「どうも」
「……馬鹿野郎。 小指でもぶつけちまえっ」
「ふふっ、文句が小学生並だね」
「本当、卑怯だ……くそっ……。 ……直輝が笑うと、ムカつくのに、嬉しい」
「……」
泣きそうな声が隣から聞こえてくる
爽の手から離したグラスから
カラン、と氷が溶ける音が小さく部屋に響いた
「まだ……祥くんが好きなのか……?」
「愚問だね」
「……」
「祥以上の人なんて俺には要らない」
「っ」
「必要としてない。 見つからない見つかるとかの話じゃなくて、要らないんだ」
「……わかっ、たから……もう言わないで」
「そ?」
飄々とした態度をとって
眉を潜めて苦しそうな顔をする爽に気づかないふりをして酒を流し込む
爽が今傷ついたなんて事は分かっている
俺が今爽の気持ちをこっぴどく壊したのも
でも中途半端にして優しさ振りまいて
爽と酒を飲むような仲は続けるつもりもない
もしも今日のこの時間で爽が二度と顔を合わせたくないって言うのなら
それでいいとさえ思う
ただ少し、
飲み仲間が居なくなるのは悲しいとも思う
「……祥くんは、直輝の事どうなんだよ」
「さあね。 あいつは昔から分かりやすいのに大事なことだけは隠すの上手いんだ」
「……」
「だから傍にいたい。 恋人じゃなくなってもどんな形でも、祥が他の誰かと幸せになるまでは見守る」
「……しい」
「ん?」
「俺、いまどんな顔してる?」
「えー……凄い不細工」
「……死ね馬鹿野郎」
「ふっ」
「……祥くんが羨ましい」
「……」
「俺も、直輝に、そんな風に言われたかった」
「爽の事は爽の事で思ってるよ」
「へ?!」
「面倒くさいやつだなって」
「な……っ! 悪口じゃねーか!」
「それでも十分だろ?」
「〜〜っ! 糞、アホ! 嬉しくなんかないからなっ!」
「はいはい」
「い、一ミリも喜んだりとかしてないんだからなっ?!」
「喜ぶか怒るかどっちかにしたら? 忙しいやつ」
「〜〜っ!」
真っ赤な顔して震える爽の口元は
微かに緩んでいて
こんな些細なことでも喜ぶほど爽は
なんて事を考えたら何故なのか胸がほんの少し痛んだ
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