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ズレ出す歯車
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「ンッ……ハァ、ハァっ・……」
家を飛び出して真っ先に駅の方へ走ってから暫く
少し距離のある公園にソイツは居た
「おい」
「……」
「おいっ! 糞直輝!」
「……お前、馬鹿?」
「~~ッ?!」
ブランコに腰掛けて上を見上げている直輝に声かける
俺の声に顔を上げて
視界に映すなり眉をひそめる直輝の態度にこっちは疲れやら悲しいやらでもう色んな感情が爆発しそうだ
「お、前が泣いてるかもって迎えに来てやったんだろうがよ!」
「ハッ、爽に迎えなんか頼んだ覚えないけどな」
「~~ッ別に? 俺だって来たくて来たわけじゃねーし!」
「……」
「……。 ……黙んなよ」
「……」
「なんか言えよクズ野郎」
「……帰れよ」
「ッ」
「アホは気温も分からないのか? そんな薄着で汗だくのまま居たら風邪引くから帰れって言ったんだよ」
「あ、あぁ……なるほど」
拒絶をされたんじゃないと知ってホッとする
でもここで
はい、そーですかなんて言って戻ったら元も子もないわけだ
「お前が俺と一緒に帰る迄俺も戻んねぇからな」
「なんだよその子供みたいな発言」
「……俺は子供なんだろ?! 直輝がいつもそう言ってただろ!」
「……はぁ。 可哀想なやつ」
「……」
冷笑をしたままこっちを一度も見ようとしない
ずっと上を見たげたままの横顔が
いつものあの腹正しい生意気な雰囲気を失っているから見ているこっちが悲しくなってくる
「……もういいから」
「何が」
「無理、すんなよ。 いや、つーか俺が無理させるような事にしたわけだけどさ」
「無理なんかしてないよ」
「嘘つくんじゃねーよ」
「……しつこいなお前。 平気だって言ってんだろ」
「じゃあ」
「……」
「じゃあ何でそんな泣きそうなツラしてんだよ」
「ふっ、俺が? 俺が泣きそうな顔してるって?」
「ああ」
「お前酔いすぎだろ」
「……嘘だったんだろ」
「え?」
「俺にさっき言ったの全部、嘘だったんだろ。 俺のために悪いヤツぶりやがって腹立つんだよ」
俺の言葉に直輝が至極驚いた表情でこちらを見る
やっと、やっと俺の方を見た直輝は
やっぱり泣きそうな程弱々しくて
秋の匂いを運びながらも
どこか冷たい風は冬の温度を感じさせて
直輝の綺麗な白髪を夜の黒に輝かせる
キラキラ、キラキラと
さっきまで雲に隠れていた月光が直輝を照らしていてコイツが何処かに消えるんじゃないかって儚いその姿にまた泣きそうになった
「俺、お前が好きだよ」
「ーーッ」
「それは変わんねーよ。 でも! でも……勝ち目ないのとかとっくに知ってるからさ」
「……」
「普通に振ってくれりゃあ良かったんだよ」
「……出来るかよ」
「え?」
「もし俺があの時やり返すとか子供じみた事しなかったら泣かなくて済んだかもしれないだろ」
「……」
「三年間もって爽言ってたけどさ……」
「ああ」
「三年、って長いよな。 なのにまだ三年しか経ってないのかなんて思うし、本当……キツイな」
「ーーッ」
月を見上げて何を考えて居るんだろうか
諦めた様に笑う直輝がまるで独り言のように言葉を漏らす
直輝は今も祥君が好きなんだな・・・・・・
大好きで愛してて恋しくて愛しくて
俺が直輝を思うような気持ちじゃ足りないほど
直輝は祥君を愛してる――
初めて人が誰かを想って笑う姿を見て
泣いてるように感じてしまったのは
ぽっかりと浮かぶ月の光が
あんまりにも綺麗なせいなのか
それとも目に見える涙が
全てじゃない事に気づいたからなのか
心の中で三年前からずっと
止まることない涙を直輝が流して居るんだとしたら
お願いだから祥君・・・・・・
君はコイツにとって
かけがえのない大切な人だから
直輝の傍にまた帰って来てくれはしないだろうかなんて願わずには居られなかった
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