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ズレ出す歯車
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「だったらいい案がある」
「またしょうもない事なんだろ」
「いいからツラ貸せ」
「何だよ」
力無い直輝の傍迄歩み寄ると満面の笑みで直輝を見下ろす
俺の笑顔を見て鋭い勘を働かせては
距離を取ろうとする直輝の肩を掴むと
顔をずいっと近づけた
「それはな……」
「爽、なにしーー」
ふわり、直輝の白髪に指を通して頭を引き寄せる
「……ふはっ」
「お、まえ……」
「こういう事だ!」
「馬鹿野郎……ッ」
目を見開き驚く直輝の唇から唇を離すと
してやったりと胸をそってわざとらしく嘲笑ってやった
そうだ、これでチャラにしてやる
俺はあのスーパーモデルな爽様だ
ただずっと振られっぱなしで終わらせてたまるか
俺だって大人な男なんだよ
今迄色んな子と遊んでも来たんだ
身の引き方ぐらい
一つの恋の終わらせ方ぐらい
自分でケリつけられる
好きなヤツの背中ぐらい押してやれる
直輝はこんな錆びれた公園で
くすぶって終わるような男じゃないんだ
俺が初めてプライドよりも優先するほど
惚れたかっこいい男なんだから
「今ので精算してやるよ」
「な、に馬鹿なことして」
「俺バカだから構わねぇし。 つーかお前も三年前こうして腹いせしたんだからおあいこな!」
「……」
「あ、もし今のキスでときめいて俺のこと好きになっても」
「ならねえよ」
「最後まで言わせろよ!」
「……」
「俺のこと好きになっても遅いからな。 もう俺は今のキスした瞬間お前なんかゴキブリ以下だ」
「お前の頭はゴキブリ以下だろうな」
「なっ?!」
「ゴキブリの方が賢い」
「う、うるせえっ!」
なんで直輝相手だとこうも俺はかっこよく決まらないのか・・・・・・
結局最後まで直輝にいいところ邪魔されるわ
ゴキブリ以下だと冷たく言われるわ
さっきも今も超だせぇ・・・・・・
「……爽」
「んだよ?!」
「……ありがとうな」
「……え、キモ」
「お前殺虫剤かけるよ?」
「あ、いや、気持ち悪いですね」
「言ってることは同じだろ」
素直に謝る直輝になんだか急に恥ずかしさがこみ上げて悪態をつく
すかさず笑顔で本当にやりかねないような脅しをかけてくる直輝から距離を取るとやっと、わだかまりが消えたような気がした
「あ、それと今度女紹介して」
「俺に紹介出来る女居ると思うか?」
「直輝が声かけたら誰でも着いてくるだろ」
「そんな尻軽でいいのかよ。 俺の次に惚れるならそれなりにいい女にしろよ」
「……直輝ってマジ腹立つ性格してるよなぁ」
「ふっ、それでも俺が好きだったんだろ?」
「いや幻でも見てたのかもしれねぇわ」
「俺に惚れたんなら頭は悪くても趣味は悪くないな」
「っお前! いい加減にしろよ!」
「ふふっ」
からかって遊ぶ直輝の肩にパンチをするとクスクスと楽しそうに笑い出す
俺も、なんだか釣られて笑ってみたら
急にまた涙が溢れてきた
結局俺は友達としてじゃなきゃ
コイツを笑わせてやれねーんだよな
でも不完全なコイツの笑顔を
本物に変えられるのは俺でも友達でもなくて
コイツの埋まらない溝を埋めてやれるのは
楽しいことでも面白い事でもなくても
祥君じゃなきゃ出来ないんだ
笑いながら涙を流す俺を見て
直輝が少しだけ苦しそうに顔を歪める
痛くて堪らないのは
直輝への恋心が咲く事は無いんだと与えていた水が途絶えたから
でも何処か安心してるのは
直輝との関係は終わらないと新しい光が見えてるから
まだ少し直輝の唇の感触が残っていて
冷たいその口づけは痛いぐらい胸を突き刺したけど後悔はしていない
蔑ろにして無理矢理押し込んで消す選択をするよりもこうやって馬鹿みたいに玉砕する方が俺らしいや、なんてそんなこと
考えてしまうのは
振られてもやっぱり直輝が好きだからなんだろう
恋心としてだけじゃなく
友人として、仕事仲間として、生意気な後輩として
こいつとまだ馬鹿やれるなら
新しい関係築き直すぐらいヘッチャラだって思うほどには失いたくない存在らしい
だけどやっぱ直ぐには歩き出せそうに無いから
立ち止まった直輝の横で一緒に休憩すんのも悪くねーかなと思ったんだ
「寒~帰ろうぜ」
「ああ」
「お前、帰ったら俺の家の掃除手伝えよ」
「壊したのは爽だけどな」
「お前も同罪だろうが!」
「分かったから少しは静かにしろよ」
「~~ッ腹立つなぁ!」
「静かに出来ないなら口輪でも買ってあげようか」
「誰が犬だバーカ! カス!」
まだお互いほんの少しよそよそしいけど
直輝も俺も、もう一度元に戻れるように
不安定な夜の道を今度は笑いながら歩き出した
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