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真実と膿む傷
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真っ直ぐに足を運んだ先
そこへ向かう間は一寸の迷いもなかった
信じていた
ずっと、ずっと、信じていた
三年前のあの日も今も
世界中で祥だけを心の底から愛していた
嘘なんてなかった
命を秤にかけて祥を選ぶなら
進んで命だって落とせる
そんなどこかのくさいラブストーリーみたいな言葉さえ心から言えるほどに
祥の事を愛して信頼していた
だから嘘をついているかもしれないなんて
そんな詮索をするやましさは欠片もなかったんだ
祥が夢の為に頑張りたい、そう言うならそれが真実だと
例え周りが嘘だと罵っても祥が真実だと言うなら俺にとってはそれが嘘から真実にも変わるし、真実が嘘にもなるんだ
だから足元をすくわれたんだろうか
恋は盲目だと良くある言葉だ
本当にその通りだと冷めた心の中では
俺の馬鹿みたいな忠誠心を恋心を少しでも信じた滑稽さに嘲笑さえ溢れた
「ゆあっく、んぅっ、ぁあっ!」
「祥好き?」
「すきぃっ、だいすきぃっ、あぁぁ、もっとぉ」
「僕とずっと、っ、一緒に居てくれますか?」
「う、んぅっ、居るっずっと……っ!」
だからこんな結末一ミリだって想像もしていなかった
夢のためじゃなくて
新しい他の誰かの隣に居場所を見つけていたからあんな嘘をついたんだってことに
優しい祥の事だから急に現れたら元恋人の俺と、今こんなにも切ない声をあげさせる事のできる彼との間で板挟みになっていたんだろうか
もしも・・・・・・
もしもそれが理由であの言葉が、夢の為だと言ったあの理由が、全て嘘なんだとしたら。それが祥にとっての優しさなんだとしたらそんな優しさを俺は求めてなんか居ない
どれだけ辛くてもそんな人を弱める優しさなんて望んで居なかったのに――
「すきっ、好きぃ……っ!」
「僕も、好きですよ祥」
「ーーッ」
扉に手をかけたのその手は行き場を無くして振り下ろされる
この扉の先にある二人の行為に吐き気さえ覚えた
祥の甘い声が好きだと繰り返す言葉が
三年前迄俺にだけ注がれていた時とそっくりで体が拒否をする
嘘じゃないんだとその声を聞けば強請り方を聞けば分かるんだ
三年前は俺だけがその幸せ過ぎる言葉と甘い声を浴びるように聞いていたんだから
ただずっと立ちぼうけたまま
頭の中は驚くほど冷静だった
一歩、一歩、扉から後ろへと後ずさる
ジリジリと痛み出す事しか出来ない心臓の不快感に苛立ちさえ感じた
今すぐ扉を開けて乗り込んでなんてそんなことする勇気はもう三年前にとっくに失ってしまった
動き出そうとすればするほど
足掻けば足掻くほど
ドロドロとした真っ黒い沼に飲み込まれていくように
祥への気持ちが重くて仕方ない
頭の中を繰り返し流れる祥の声と彼の声が止まらなくて掻き消す為に走り出したままどんよりと暗い空の下へ飛び出した
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