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あの日の続き
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『娼婦も嫌がる程の薬らしいですよ、これ』
立ち上がる事もままならない俺に
意識だけがある事に気づくと結葵君は手にした薬をチラつかせた
どこでそんなもの手にしたのか
どうしてそんなのを飲ませたのか
なんでこんなにも虚しいのか
浮かび上がる幾つもの考えは
大した事もないつまらないものばかりだ
ポッカリした何かがずっと体から離れなくて、そればかりが気になって仕方ない。結葵君に背を向けるのにも一苦労な体を反転させるとやけに冷静な頭では直輝の事ばかりを考えていた
それからどのぐらいの時間が経ったのか
体の震えがおさまって体を起こした時にはもうかなり時間が過ぎていた。汗と精液の匂いがこもった部屋は嫌でもさっきまでの情事を思い返させる
「ッ、いた」
立ち上がろうとすればズキズキと痛む腰はカクンッ、と抜けて膝から崩れ落ちていき内股からは結葵君の白濁液が溢れ伝い落ちてきていた
この後のスケジュールは一体どうなっていたか
結葵君の専属になった一ヶ月は
他の仕事はしなくていいと怜さんに確か言われていた
その肝心な結葵君はもうとっくに居ないし
撮影は明日から、だとすればもう今日は帰っていいのかな
うつらうつらと沈み出す意識の中冷静に仕事のスケジュールを思い返す
・・・・・・心臓が冷たい
手足の先も、体も、全て冷たい
寒くて服を着ようとすれば
香る結葵君の残り香に吐き気がこみ上げてその布を見に纏う事さえ億劫だった
そんな1日も終われば嫌でも明日が
来るし終わっても過ぎても新しい明日が来るのは誰にも止められない
嫌でも直輝の存在を気にしてしまう自分の女々しさが鬱陶しいとさえ思えてきて、直輝が綺麗な女性達と話す姿を見るだけで心の中にはドロドロとしたものがこみ上げてくる
自分でも驚くほど真っ黒に沈んだと思った
こんなにも負の感情に蝕まれた事がないから気づいてしまった
俺がいつでも乗り越えられた裏にはいつも直輝が居てくれた
直輝がいつでも静かに背中を押して支えてくれていた事を前よりもうんと気付かされた事が首を絞めつけてくる
今日もまたそんな光景を見るんだと胸の中で俯きながら結葵君と共にスタジオへ入ると活気ある現場の中で直輝と爽さんが休憩を取っていた
「何見てるんですか?」
「え?」
「ああ、天使さんか」
「……違うから。 支度するよ、こっち来て」
「祥さん」
「なに」
「僕と付き合ってるって天使さんに言っちゃえばいいんじゃないですか?」
メイク道具を一式広げて
無機質な表情の結葵君と鏡越しに瞳を合わせる
その言葉の真意と瞳の色はあんまりにも違いすぎて一体結葵君は何を考えているのか全く分からない
「結葵君さ、俺とこうして楽しい?」
「……はい」
「その割にはつまらなそうだよね」
「そうですか? 楽しんでますよ特に控え室で祥さんを犯した時は久し振りに気持ちが高まりました」
「ッ、あっそう」
「それに……フッ、これからきっと、もっと楽しくなりますよ」
「……どういう意味?」
「さぁ、どうでしょうね。 僕が言わずとも彼が動くだろうし」
「彼?」
「手、止まってますよ。 仕事は待ってくれませんから」
「ッ」
分かっているけど意味深な事を言ったのは結葵君だろ・・・・・・
ちょっと前までは可愛い弟の様に可愛がっていた子に今では大きく人生を握られていると思うとなんだか言葉にできないものだ
「あのさ結葵君」
「なんですか」
「俺と仲良くしてた時も、あれも全部嘘?」
「……」
「俺に話してた本音とか相談とかも全部、全部、嘘だった?」
「嘘……って言ったら祥さんは楽になりますか?」
「……」
「祥さんに好かれるためについた嘘で、同情を買うために吐いた言葉で、全部は祥さんを騙す為だって言えば僕のことを恨んで楽になるんなら『嘘だ』なんて言いません」
「そう」
「終わったならもう行っても構わないですよね?」
「あ、うん。 行ってらっしゃい」
仕上げを終えた俺を見て結葵君は冷たくそれだけを言い放つと立ち上がる
撮影に向かうその背中に反射的にそう声をかけると驚いたように後ろを振り返った後、見た事ないほどの憎悪を浮かべた視線を向けられた
「……行ってらっしゃい?」
「えっ、いやだって……」
「祥さんって本当に馬鹿ですよね。 理解出来ないほど」
「なんでそんなこと」
「なんで? あんたを犯して傷つけてる奴にまで優しくしようとしてるのが理解出来ないって言ってるんです」
「ッ、そんなの……。 じゃあ結葵君を憎めば全部無かったことになって三年前の続きみたいに俺は直輝とまたくっつけるのか?」
「……」
「例えば結葵君が居ようが居なかろうが俺と直輝はもう二度は付き合ってなんかない。 その現実を結葵君を恨んで全てを押し付けて責めるのは違うだろ」
「だから僕を憎まないって?」
「今の現状全てが結葵君の起こした結果じゃないだろ……俺と直輝が三年前に振りまいた種だ」
「あんたの、そういう所が大っ嫌いだ」
「ーーッ」
「まるで優しいぶって、けどあんたは天使直輝しか見てない。 誰にでも優しく出来るのは一線引いたその先で僕達の事をどうとも思ってないからって一体いつになったら気づくんですか」
力強く話すその瞳から視線が逸らせないまま息がかかるほどに距離を詰めた結葵君に荒く肩をつかまれる
ドンッ、と音を立てて壁に押し付けられた体に痛みを感じなくなったのはどうしてなのかなんて事・・・・・・考えるのに疲れた俺はもう辞めてしまった
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