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愛し方の選択
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「ごめん! 遅れたッ」
「お疲れ、祥」
「本当待たせてごめん……寒かっただろ? 先に中入ってて良かったのに」
ゼェゼェと息を切らしながら
隣を歩く祥が申し訳なさそうに顔を歪める
仕事帰りでヘトヘトだろうに
祥の上半身の2倍は横に大きな馬鹿でかい鞄を抱えて走って来てくれた姿を見たら待ち合わせ時間に遅れた事なんて気になるわけがない
寧ろ走らせて悪かったとさえほんの少しこちらが罪悪感を感じるくらいだ
「ところで聖夜! 今日は綺月先生も来るのか?」
「ああ。 仕事が終わったら来るって言ってたな」
「ふふっ、久し振りだな〜楽しみだよ」
そう言って微笑む祥の笑顔を見て
心臓のあたりがチクリとした
今日は久し振りに祥と、綺月さんと、俺と、直輝の四人で懐かしいメンバーで三年ぶりに集まる予定だったんだ
だけど数時間前に来た直輝からの行けないと書かれた淡白なメッセージを見て、ここ数年ずっと続く溜息がまた零れた
「直輝は来ねえって」
「そっか」
「……」
「……何で聖夜がそんな顔してるんだよー」
「お前らどうなってんの?」
「……」
店に向かう途中
堪え切れずに口から零れた質問に後悔する
このタイミングで聞くべき内容ではなかった
せめて酒でも飲みながら
心が落ち着いた頃に聞くべき事なのに
どうにもそこら辺は俺は配慮が足りない
反省してももう遅いんだけど
「どうにもなってないよ」
「……悪い」
「聖夜が謝る事じゃないだろ!」
「ああ……、……悪い」
「アハハッ! 本当相変わらずだなぁ」
冬の風に頬を赤く染めて
首元のマフラーに顔を埋めながら祥が笑う
また無理して笑わせてしまった
俺が聞いても祥は本心を話した事は
この3年間1度だってなかった
いつもはぐらかされるか、
俺が聞く前に察知して話を逸らす
もうそれだけでも充分
祥が聞いて欲しく無いこと何だと知るには足りるサインで、俺も泥を付けずに聞く術を知らないから口を閉ざしていた
「いらっしゃいませ」
たどり着いた予約してある居酒屋について扉を引くなり暖かい暖房が寒さに冷えた体を包み込む
案内されたテーブルに着くと
綺月さんが来るまでの間、
久し振りに祥と乾杯をした
「うっ……わー! お酒が美味しいとか思う日が来るとは思わなかったな〜」
「……不味い」
「聖夜はお酒苦手だしね」
「ああ、不味い」
「あははっ」
向かい合い座る祥が頼んだ生ビールを飲みながらへらりと笑みを浮かべた
三年前なら、いやもっとそれよりも以前から
この笑顔の隣には必ず腹立つ程整った顔をしたいけ好かない笑みを浮かべるやつが居たのに
今はその光景が見れない事が物足りないと感じて少し寂しく思う
まさか直輝のむかつく悠然な態度を恋しく思う日が来るだなんて中学生の頃の俺は想像なんかしてなかっただろうな
「聖夜も就職先決まったしね! いい事多くて嬉しい」
「まあぼちぼち順調だな」
「綺月先生とも相変わらず仲いいみたいだし」
「綺月さんは、まあ……」
「……照れてる」
「照れてねぇよ」
「また直輝にムッツリって馬鹿にされるよ?」
「あいつは俺を玩具にしたいだけだろ」
「確かにね、だって直輝だしさ」
「……」
当たり前の様に直輝の話をしても祥は表情を崩さない
何一つ変わっていないかのように流れる会話はやっぱり俺にとっては不快だった
いくら普通にしてたって
この場に直輝がいない事は異常に違い無いんだから
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