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愛し方の選択
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考えてみれば本当に直輝と祥はいつでも一緒だった
何かと目立っては噂の耐えなかった
中心の的である直輝が
唯一大人しくなるのは祥の隣だけで、
その祥だって周りからはいつも羨望の眼差しを受けていた
生まれつき金髪なんて髪色のせいで
何かと弾かれた挙句ひねくれて不良なんかしていた俺とは真逆に祥は誰にでも優しかったし関わらずとも強い奴なんだと分かるような芯のある不思議なやつだった
それがある日声をかけられた事がきっかけで祥と仲良くなって、初めは俺をぞんざいに扱って歓迎していなかった直輝ともそれなりに話すようになって気づけば何するにもどこいくにも三人でつるんでいたんだ
「聖夜?」
「あ、悪りぃ。 昔のお前ら思い返してた」
「中学生の頃?」
「まだ直輝があんな派手な髪色じゃねー頃」
「本当、急に茶色の髪が真っ白に染まった時は俺も流石に驚いたよ」
「学校の先生は目を見開いてたな」
「あははっ、そうだったんだ。 俺周りまで見る余裕がなかったな〜」
「なんでだ?」
「あー……ふふっ、うん。 直輝の雰囲気が変わった事が何よりも気になっててさ、髪の毛よりも急に飄々とした態度取り出した直輝が何か物凄く距離を感じて……あの時本当に悩んだよ」
「……そうだったのか」
「今は懐かしい話だけどね」
昔の思い出を肴にお酒を飲む
くだらない事で笑ったり
苦い顔をしたり今更後悔を吐き出したり
祥との時間はあっという間に過ぎていて
女でもないのに気づけば店に入ってから1時間近く経っていた
ふと前を見つめれば、
記憶を思い返す様に遠い目をした祥の瞳が潤む
長いまつ毛によって影のかかった瞳は
いつもの強い意思が篭っている目に力が無いように見えた
「……気になるんだろ?」
「ん?」
「俺と直輝が一体どうなってるか、気になるって顔してる」
「……」
「心配かけてたのに何も話せなくてごめん聖夜。 ……今日聞いたことはずっと胸の中にしまっといてね」
「えっ?」
「俺もたまには愚痴りたくなるのかも。 だから独り言漏らしたくもなるし、さ?」
「……」
祥の言葉に驚き過ぎて戸惑ってしまう
アルコールによってふわふわしていた頭の中が一瞬でクリアになる
あんなにも本音を漏らすことを拒んでいた祥があっさり口を開こうとしているから酔ったせいでみた妄想なのかと思ってしまうほど驚いた
「酔っ払いの戯言だからな!」
「お、おー」
「明日には忘れろよ!」
「……ああ」
わざとおちゃらけて話す祥の
お酒で赤く染まった目尻が
わらうたびにもっと垂れ下がる
目元にある泣きぼくろを見つめて居ると
酔っているのかほんの少しばかり舌足らずになりながらゆっくりと話し出した
「俺さ、初めは美容業界行く気なんてゼロだったんだ」
「そうなのか?」
「うん。 俺も直輝と聖夜と同じ学校に願書も出してたし」
「そんなの初めて聞いたぞ……」
「俺も人に言うの初めて。 直輝にも言ったこと無いよ」
「……そうだったのか。 でも、じゃあなんで進路変えたんだ?」
「陽がさ、急に高校行かないって言ったんだよ」
「陽が?」
「そう。 働いて一人で暮らすって家を出るって。 あいつも頑固だから一度言ったらなかなか意見変えなくてさ、しかも理由教えてくれなくて」
「……」
「だけどまあそのうち理由は分かって、それ聞いて俺が早く自立しなきゃって思った。 もともと俺達の本当の両親は死んでるし、父親代わりに俺達育ててくれた享さんの人生と引き換えに面倒見てもらってたしさ」
言葉を探しているのか
詰まりながらもゆっくりと祥が話す
祥の家が訳ありなのは知っていた
あまり自分のことも家のことも話さない祥が家庭の事情を話してくれた事がまた驚きで俺もただ頷くしか出来ない
「それで色々見てたら美容専門のブライダルに惹かれて、最初は結婚式場で働きたいって思ってた」
「……」
「見学に行ったらさ、本当に素敵な場所で……。 人生で自分の為に人が集まるのって生まれた時と、死んだ時、それと唯一集まってくれた沢山の人に笑顔でお礼を言うことの出来る結婚式の3つ何だって知って、そんな時間に携われるとか素敵だってドキドキしたんだよね」
「……祥なら確かにいろんな奴の笑顔作れそうだな」
「アハハッ! なんだよそれ、褒めても何も出ないぞ!」
「……お世辞じゃねーよ」
「ふふっ、ありがとう……でもね本当素敵だったんだよ。 皆幸せそうな顔しててあんなに綺麗な笑顔見たことないって、いつか俺の大切な人達の思い出の1日にこんな笑顔を作ってやりたいって俺も絶対ここで働くった決めたのにさ……。 直輝が言ったんだよ」
「何を?」
「当たり前の様にさ『俺のヘアメイクアーティストになればいい』ってケロッとした顔で。 それから『そしたら俺達大人になってもずっと一緒だな』とか、もう凄い嬉しそうに笑うから……俺、その直輝の言葉とか笑顔が嬉しくて、何よりも大人になってもずっと一緒に居てくれるんだ! なんて事に浮かれちゃって……それからはご存知の通りまんまと直輝の言ったままヘアメイクに就いちゃったよ」
「……っ」
「ずっと一緒なんて無理なのにね……いつか終わることなんて知ってる筈なのに信じきってたんだ。 でも。 もうそれも叶わないんだろうなって思う。 この前直輝に大嫌いって言っちゃった、あははっ、直輝の方が傷ついてる筈なのに言った俺は楽な筈なのにさー……ッ」
「祥……」
「俺決めたんだよ三年前に。 簡単に復縁する位ならちょっとした気持ちで別れない……。 本気で悩んで死ぬほど悩んで今でも後悔するほどで……でも俺の横に直輝がいたって直輝が俺を一番に考えたってそれと代わりに色んなもの無くして誰かに悪意のある眼差し受ける中で生きて欲しくない。
それに直輝だけじゃない……直輝の家族だってきっと面白興味で集まった人達に傷つけられる」
「ッそれは。 分からなくもねぇけど……でも直輝の幸せは祥が決める事じゃねーだろ?」
「……。 綺月先生が世間の笑いものになるのを聖夜はただ黙って守られてばかりで耐えられる? 俺も男だから好きな人は守りたいのに、俺といるともっと状況が悪化するのをただ目をつぶって見過ごすなんてこと俺は……無理だったよ」
「……悪いッ、もう少し考えるべきだった」
「いや……俺こそごめん。 こんな事話されても迷惑なのに、やっぱりこんな話は辞めて何か別の話でもしよ!」
「それは違う……ッ!」
「……」
「俺も綺月さんと付き合ってるから大概の気持ちも、ぶつかる壁も分かる。 けど確かに俺達は自分達の努力で隠して行けるけど直輝は……芸能人だからもっと壁が高いのも理解してる。 だからこそ話せよ……他に話せる奴が居ねぇなら俺にぐらい相談しろ。 俺は上手いことフォロー出来るやつじゃねえけど初めて祥の本音とか聞けて、その、嬉しいんだし、何でも一人で背負い込むな」
「ッ、……ごめん……ありがとう」
悲しそうに笑う祥を見て胸のあたりが重くなる
今でもやっぱり好きなんだ
祥は直輝が好きなんだな
そんなにも恋しそうな目をして
苦しそうに今迄隠してた祥の想いを聞くのはあんまりにも酷で俺じゃあ何一つ力に慣れない事が歯痒くて堪らなかった
頼り方を、甘え方を知らない祥が
唯一本音を漏らせたのはきっと
直輝の隣だけだったんだ
「なんか想像以上にしんみりしちゃった……でももう終わった事だから! 俺も直輝もそのうち仲直りするだろうし、きっとお互いに納得する」
「……祥」
「なに?」
「そのうちってそれは未来はってことだろ?」
「へ……? あ、うん、そうだね」
「だったら、じゃあ今は? 今はどうなんだよ」
「……」
「今はまだ好きなのか?」
「それは──」
目を見開き俺の質問を予想していなかったのか祥が驚き言葉を詰まらせる
それから少しの間を置くと、
静かに話すその言葉にやっぱり胸のあたりが重くて重くて堪らなかった
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