アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雷鳴と懺悔の言葉
-
ピカピカッ、と光った数秒後に
轟々しい光の線が夜の空を駆け巡る
天気予報のとおり外は大雨だ
さっきから雷も鳴り出して
本格的に荒れだした外は波が高い。
窓から見える景色には今にも波にのみ込まれそうなほど壮絶だった
寝よう寝ようとは思っていても
光を走らせて輝く雷が綺麗で魅入ってしまう
大きな音が気になって眠りにつけなかったけど案外こうして雷を見るのは悪くないなんてことに気づけたのは少しラッキーだとも思えた
「……そろそろ寝なきゃ流石にまずいかな」
ぐっ、と一度背伸びをして
カーテンを締めると再びベットへと戻る
暖かい羽毛布団に冷えた体を埋めると
今日あった光景が浮かび上がる
直輝の演じている姿をまともに見たのははじめてだった
ずっと避けていたし
仕事をしているあいだはカメラに映す為の光や風によって、その時、その時の見せ方を考えなきゃならないからよそ見をしている暇がない
だから何度か確かに現場入りが被った事はあったけども、今日みたいに直輝と結葵君が長く同じ撮影シーンを撮るのは初めてだったから久し振りにゆっくりと直輝を見る事が出来た
・・・・・・久し振りに見た直輝の姿にやっぱりちょっとドキドキしたり胸を痛めたりしないわけがない
相変わらず綺麗な体だなぁとか前よりも大人っぽくなったのは、表情や雰囲気だけじゃなくてしなやかそうな体も同じく色っぽい大人の空気を纏っていたり。そんな事をまじまじ見ていた事に気づいて自分が変態のように思えてくる
「……はぁーいやいや寝なきゃ」
不埒な事を考えそうになってブンブンと頭を横に振ると考えを払い飛ばす
頭の上までズッポリと布団を被ってぎゅうっと目を瞑った時──
コンコン、と部屋をノックする音が聞こえてきた
「……誰だろ?」
深夜のこの時間に部屋にやってくるなんて
この雨で撮影に変更があったのか
それとも中止になった?
そんなことを考えながら扉を開けると
そこにはいつもとは違うラフな格好をした結葵君が立っていた
「……起こしてすみません」
「いや……構わないけど……どうしたの?」
「……」
「なんかあった?」
「部屋入ってもいいですか」
「……俺が嫌って言ったところで入るんだろ」
「そうですね。 じゃあ遠慮なく失礼します」
「……そこは普通帰るところだよ」
呆れたようにそう呟くと
くるりと振り返った結葵君が困ったように口を開いた
「寝れなくて」
「……疲れすぎた?」
「外が騒がしいから」
「ああ……凄いよね、雷」
「……」
「……。 あのさ」
「…………」
「もしかして結葵君……雷が怖くて俺のとこ来たの?」
「……違います」
「……へえ」
「……」
「怖いんだ」
「……ッ」
「ふふっ案外子供っぽいね」
「……煩いですよ」
少し焦ったように否定をする結葵君を見てクスクスと肩を揺らす。背中を向けて笑っていたらぐらりと視界が揺れて、気づけば俺の上には結葵君が覆いかぶさっていた
「……」
「結葵君、重い」
「祥さん隙ありすぎじゃないですか」
「隙も何も普通に男が一々そんなの気にしないだろ」
「……僕に脅されてるのに?」
「ンッ……! こ、らっ辞めろって!」
「部屋に入れたのが悪いんですよ」
「結葵君ッ、……そういうつもりで来たんじゃ無いんだろ!」
「……」
「……俺だって馬鹿じゃないから分かるよそのぐらい」
首筋に残る熱い唇の感触を拭いながら、上に覆いかぶさる結葵君を押し退ける
一々荒っぽい結葵君の力加減の無さには毎回体が持ちそうにないと溜息が溢れた
「別に俺を抱きに来たんじゃないんだろ?」
「……なんでそう思うんですか」
「なんでって……じゃあ抱きに来たのか?」
「違います」
「ならこれ以上の説明は必要ないだろ」
「……」
着崩れた服を直してベットに腰掛ける結葵君に水を差し出す
何かを話に来た
そんな気がしたから中に入れただけ
もしくは────
単に朝の傷痕の残る背中がやけに悲しそうで結葵君があんなに嫌っていた同情心が密かに隠れていたからかもしれない
きっと結葵君がこれを聞いたら嫌悪感丸出しでまた怒ったままに犯されそうだから口にはしないけど
ただ何か理由を探して言い訳をするならば、今晩は結葵君の話を聞いてやりたいと思わせるような夜だったから・・・・・・
「祥さん、僕になんで親切にするんですか」
「……え?」
「今日の事、僕の傷言いふらすことできたでしょう?」
「そしたら俺になにかいい事あった?」
「少なくとも僕の自尊心は傷つけられたと思いますよ」
「……」
「僕が見せたくない事なのは気づいていたんでしょう。 人に言いふらして僕に今迄の腹いせも出来たのに何でしなかったんですか?」
「そんなこと一々考えてなかったよ」
「……馬鹿なんですか?」
「そういう事ばっか考えて生きてる人間ばかりじゃないって事だよ」
「それを馬鹿だって言ってるんですよ。 そんなんだから僕に良いように弄ばれてるのに」
「……」
皮肉なのかそれとも嫌悪なのか
どちらにしろ結葵君にとって俺が取る行動はひとつひとつ癪に障るらしい
今も目の前でぼんやりと雷の光に浮かぶ横顔はゾクリとするほど無機質なもので、結葵君がどんな過去を生きてきたのか気になるのは少なからず彼と関係が良好だった時の情だったり恩があるからだ
まだまだ駆け出しの時
この業界で右も左も分からなくて現実の厳しさにぶち当たっていた時俺の事を励ましてくれたのは結葵君だ
直輝の事を引きずって
美容室での仕事とヘアメイクアーティストとして扱われる仕事を貰う困難さに息詰まっていた時いつも明るい笑顔で真摯に傍で話を聞いてくれていた
その時の結葵君が記憶に未だ残っているから
何もかもを全部嫌いになることは到底難しい話なんだ
嫌いになるよりも先に結葵君からは優しさや親切心を貰っていたのだから
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
297 / 507