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始まる未来、進む道
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「直輝ッ」
「な、んで」
「俺……っ、俺ちゃんと言ってないからっ!」
「言ってないって……」
「俺も……っ、俺も────」
『直輝が好きだよ』
涙で濡れたその言葉に、声が、出なかった。
何も考えられない頭は俺の体に抱きつくその細い肩をめいいっぱいに抱きしめ返すだけで精一杯だ。痛いぐらいに抱きしめても、夢のように消えないと何度も確かめる。きつく、きつく、何度も力をこめれば、俺の耳元で返してくれるように繰り返す「好き」の言葉に、涙が零れた。
「ーーっ」
「俺も、ッ、直輝が好きだよ」
「は、っ……ッ、祥……っ」
「何よりも先に本当は言わなきゃならなかったのにッ、一番に伝えなきゃならなかったのに……怖かったんだ……っ」
「……っ、いい、そんなの、どうでもいいッ。 今聞けたなら、それだけで十分だッ」
「遅くなって、ごめん……ッ。」
大粒の涙を幾つも流して、ぐしゃぐしゃになった顔で精一杯の笑顔で祥が笑う。言葉じゃもう足りなくて、抱きしめるだけじゃ埋められなくて、伝えきれない思いを涙に濡れたその唇へ言葉と共に重ね合わせた。
「ッ、直輝……俺」
「好き」
「ーーっ、うん、っ、うん! 俺も好き、大好きッ」
「夢じゃない……ッ?」
「う、んっ……! 夢じゃない、大好きだよ、俺も大好きだよ直輝……っ、大嫌いなんて言ってごめんッ、本当は大好き、ずっと言いたかった、ずっとずっと本当は言いたかった……!」
大きな瞳から零れるキラキラと光る涙を指で拭っても、またとめどなく光の粒が頬を流れていく。それが綺麗で、必死になって言葉を紡ぐ祥が愛しくて、零れた涙にキスをして微笑えめば、一層顔をくしゃりと崩して泣き出す祥にキスをされた。
「ーーッ!」
「……っ直輝」
「しょう……」
「笑ってくれないと思った……。 沢山傷つけたから、沢山突き放したから、もう遅いってもう嫌われたと思った……でも……直輝ありがとうッ、もう一度笑いかけてくれて、俺を好きでいてくれてありがとう」
「そんなことない……っ嫌いになるわけないだろ」
「っ、直輝ごめんなさいっ、本当にごめんね」
「もう謝るな……っ。 」
耳元で祥の声が聞こえる。伸ばされた腕は俺の首へと回って、首元に顔を埋めて泣く祥を力強く抱きしめた。
聞けただけで十分だ。もう二度と聞けないと思っていた大切な言葉を、もう一度もらえただけでこんなに幸せになれるなんて、こんなにも満たされるなんて、幸せな言葉だなんて思ってもみなかった。
「直輝ッ、──愛してる」
「ーーっ」
ああ諦めなくて良かった。
その一言で全てが変わる。
腕の中にいる祥を愛した事は間違いじゃなかったんだと、とめどなく溢れる思いと共にもう一度深いキスをした。
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