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これからのこと
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重なった唇が離れるのが寂しくて、首に回している腕を少しだけ引き寄せると目元を赤く染めた直輝が再びキスをしてくれる。それが嬉しくてほんの少しばかり口を開くと、熱い直輝の舌が潜り込んできて涙の味がした。
「ん……っ」
「しょ、う……まだ熱下がってない」
「……うん……。 でも今はどうでもいい」
「もっと酷くなるだろ馬鹿。 こんな薄着で外出て……本当、なんでいつも心配させるんだよ」
泣いて濡れた頬を直輝が拭いてくれる。少し怒ったように、困ったように笑った直輝がおデコに優しくキスをして、心の奥がぎゅうっと締め付けられた俺はそのまま直輝の胸に顔を埋めた。
「……これからどうするか、決めてるの?」
「ううん、決めてない」
「じゃあ今度は俺と一緒に考えてくれる?」
「……うん」
「ッ、良かった……本当、良かった」
緊張した声で聞いてきた直輝が俺の返事を聞いてほっとした後に肩の力を抜いたのがわかった。
そうだ。大切な気持ちを伝えてもまだ終わりじゃない。寧ろこれからだ、これからきっともっと大変な事ばかりが起きるだろうけど、でも覚悟してる。直輝と一緒にならちゃんと乗り越えて行ける。
だからもう一人で決めたりしない、
今度はちゃんと二人で決めるんだ。
二人の未来のことは、直輝と俺が悩んで一緒に答えを出すんだ。
「……直輝、なんでニューヨーク行かなかったの?」
「行きたい所があったんだ。 行っておきたかった所に先に行こうと思って、だから飛行機には乗らなかった」
「……じゃあ俺」
「バーカ、邪魔なんかしてないよ」
何でわかるんだろう・・・・・・
思った事を言う前に直輝に先読みされて、否定されてしまった。でも少し不安で、本当に?と上目遣いで恐る恐る伺えば優しく笑った直輝が本当に、と言って頭を撫でてくれる。
暖かい・・・・・・。
誰かに頭を撫でられてこんなにも暖かく感じたのは久しぶりだった。トクトク高鳴る心臓迄もが直輝を好きって言ってるみたいで、俺からも直輝からも聞こえてくる心臓の脈が重なる事がとても嬉しい。
「そこに行くよりも祥と一緒に居る方が大切だ。 今は祥と二人になりたい」
「うん、俺も。 直輝とずっと居たい」
「家、帰ろっか」
「うん……ッ」
「一緒に帰ってくれる?」
「フフッ、うん、ッ、もう勝手に居なくならないから」
「……ん。 俺も、もう簡単に離してやんない」
泣きすぎてきっと今下手くそな笑顔しか浮かべられてないんじゃないかと思う。悲しいわけじゃないのにさっきからずっと流れる涙のせいで、不器用な笑顔しか作れてなくて、そんな俺を見て直輝は柔らかい微笑みを浮かべて手を握ってくれた。
「行こう、祥」
「っ、うん!」
直輝が着ていたジャケットを脱いで俺に羽織らせてくれる。その時にふわりと香った直輝の匂いにまた涙がこみ上げて手の甲で必死に拭っていたら泣き虫なんてからかわれたけど、幸せだ。少しだけムッとしてしまったけど、幸せだ。
「手繋ぎたいって言ったら怒る?」
「ーーッな!」
「やっぱ、ダメ?」
「い……一々、聞くなよ」
「ふふっ、うんそっか。 じゃあ、はい」
「……」
そんな悪戯するみたいに笑った直輝に差し出されたのは、綺麗で大きな男らしい掌。俺の大好きで、大切な人の、手。
「……」
「嫌だったらいいよ、無理しないで」
「……今日だけ、だからなっ」
「そうなの?」
「そっ、そうなのっ!」
「アハハっ」
チラリと目線を上げて、手のひらと直輝の顔を見比べると、ゆっくりとその手を握った。途端にぎゅうっと握り返してくれる直輝のその動作に胸がキュンっとして、さっきまであんなに悲しくて辛くてどうしようもなかった気持ちが溶けていくような、そんな不思議で暖かい気持ちが溢れてくる。
「手、熱いな」
「……熱」
「そっか」
「べ、別に緊張してないから」
「別に俺はそんなこと一言も言ってないけどね?」
「〜〜ッ!」
俺の口調を真似してわざとおちょくってくる直輝にムカっとして顔を逸らす。熱くなった顔を冷ます為にそっぽを向いたけど、本当は嬉しくて緩んだ顔を見られ無いために向いたんだ。
三年分のみぞなんかまるで無いみたいに
三年前が昨日の続きみたいに直輝と俺が居ることが嬉しくて。
久しぶりに交わす小さな口喧嘩が嬉しくて、堪らず緩んだ頬にはまた、一筋の涙が伝った。
「直輝」
「ん?」
「お帰り」
「ーーっ!」
「ずっと、言えてなかったけど。 やっと言えたや、えへへ」
「祥〜、あーもう本当に大好きだよ」
「な……っ、わ、分かったから!」
やっと口に出来たお帰りの一言。あの日に求められたお帰りの意味はお互いが別れる為の言葉だったけど、今は違う。 もう一度一緒に歩き出す為のお帰りを口にして、もう一度繋いだ手を強く握りしめて、冬の真っ青で高い高い空の下、また二人肩を並べて歩き出した。
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