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毎日の続き
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◇
「……ん」
温かい・・・・・・。
懐かしい匂いがして、心地いい感触に包まれて、心までほんのり色づく。
まだ眠りから覚めきらない頭を起こし瞳をパチパチ瞬きさせれば、ぼんやりと浮かんできたのは直輝の綺麗な寝顔だった。
「……、ゆめ……?」
気づけば体は直輝に抱きしめられているし、俺の手も直輝にしっかりとしがみついていた。
また夢を見てるのかと思ったけどペタペタ背中を触っても目の前の直輝は消えない。
ぽや〜としたまま追いつかない頭を働かせていた時、グラリと視界が揺れて唇に暖かい何かが触れた。
「ーーッン?!」
「……んー。 おはよ、祥」
「な……、え……ッ?」
驚く声も出ないままに直輝の唇に塞がれて、パチクリとしたまま思考が止まる。
寝起きの妙に色っぽいハスキーな声で微笑みながら頭を撫でられてジワジワと熱がこみ上げてきた顔は、ボンッと音を立てたかの様に熱くなる。
その刺激のお陰でやっと目が覚めた。
おまけに昨日の全てを思い出した・・・・・・
俺がどんなに我侭で面倒な事を言ったのかも有難い事に一つも零さず覚えてる。
耐えきれなくて枕に顔を埋めて羞恥心に悶えて居れば、俺のこの奇行を黙って眺めていた直輝がクスクスと笑みを零した。
「フフッ、熱はどう? 可愛いネコのしょ〜ちゃん?」
「〜〜ッ」
ほらっ、ほら!やっぱり!夢じゃない・・・・・・
夢であって欲しいなんて願いは呆気なく散っていく。
俺が取った行動も、何一つ夢ではないとわざわざご丁寧に教えてくれる直輝の意地悪な言い草に、尚のこと恥ずかしくて死にたくなってくる。
・・・・・・あれ?でも待って。
俺記憶が途中で消えてる。
直輝の色っぽい声も、このまま食われちゃうんじゃないかってぐらい雄々しい鋭い目つきも、その寸前までのことは覚えてるのに肝心な所がすっぽり抜けてる。
なんで?!俺何かしてないよね?
何かとんでもないことしてたら、今すぐ逃げ出したい。
「な、直輝……?」
「ん? まだ怠い?」
「いや……あの、その」
直輝の心配そうな顔と声に胸がギュッと締め付けられる。
思わず真っ先に体の心配をしてくれている姿にときめいてしまった自分に慌てて喝をいれると、緩みかけたほっぺたを抓った。
「なにそれ何かの挨拶?」
「ち、違う……これはその俺への喝だから気にしないで」
「へえ、それより熱は? お……、結構下がったかな」
「〜〜ッ」
「ふっ、な〜に顔赤くしてんだよ?」
「うっ、煩いッ」
両の手で頬を包まれて直輝とおでこがコツンとぶつかる。
鼻の頭が触れ合う程顔が近くて、トクトク心臓は高鳴り出すし、朝からもう俺の心臓は忙しくてしょうがない。
おまけに一緒懸命ニヤケないように喝を入れたのも意味がない程顔の筋肉はゆるゆるになっていた。
「それにおでこじゃ熱なんか分かんないだろ」
「そう? でも昔からこうやって祥が体調崩した時は見てきたから自信あるけどな俺は」
「……」
そりゃそうだけど・・・・・・
小さい時から俺よりも俺の体の事を直輝は気づいてたし、昔からこうやって熱を確かめてたのも事実で言い返せないけど。
でも恥ずかしくて止まらない気持ちは直輝の言葉とは反対な態度を取らなきゃ落ち着かないみたいで、こんな天邪鬼だったら昨日の俺の方が直輝は好きなんじゃないのかとか不安になってくる。
「それに天邪鬼も復活したいみたいだしな」
「えっ」
「ずっと祥の天邪鬼が恋しかったよ」
「嘘だ」
「本当に。 昨日の祥も凄い可愛かったけど、 やっぱり俺が惚れた祥って素直じゃない天邪鬼だから」
「……趣味悪い」
「最高の趣味だろ?」
「煩い」
なんでこうも分かっちゃうのかなぁ
こんなピンポイントで俺が今気にしたことを、口にしていないのに表情一つで読み取る直輝はずるい。
急にこんな沢山幸せを感じていたら怖くて逃げ出しそうだ。
ふと見つめた先の直輝は大人っぽくて、前とはまた違う余裕のある雰囲気とかがやけに落ち着いて見えるせいなのか息をするのが、ほんの少しだけ震えた。
「今日仕事は?」
「オフだよ。 きっと今頃ニューヨークにでも着いてるって思ってるだろ」
「ッあ、そうだよね……俺」
「いいから。 本当にそれは気にするなよ。 それよりも祥とこうやって過ごす時間の方が大切だ」
「……」
「これからのことはゆっくり後で話そう?」
「うん」
「先ずは朝飯しっかり食べて、早く良くなる事だな」
クシャクシャと少しだけ乱暴に頭を撫でると直輝がベットから出ていく。
俺も続いてぐしゃぐしゃにされた髪を直しながら起き上がると部屋の中はいつもよりもうんと寒くてぶるっと体に鳥肌が立った。
「なんか寒いね今日」
「もう12月も半分超えたしな。 それとも俺に抱きしめてって告白だった?」
「ば、馬鹿じゃないのか! いつまで寝ぼけてんだよバカ!」
「二回も馬鹿って言わなくていいよ」
「うるさいバカ直輝!」
「三回目〜」
ヒラヒラ手を振りながら飄々な態度を取って先に階段を降りていく。
サラサラな白髪が揺れる後頭部を半ば睨みつけながら、そんな口喧嘩をしていつもと同じのような違う朝を迎えた。
昨日とは違う、何も変哲のない一日だけど、目の前に大切な人がいる大切な一日が。
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