アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
毎日の続き
-
「あ」
リビングに降りてまっさきにカーテンを開けた直輝が何か外を見て声を漏らす。
気になった俺は作りかけていた料理を止めて顔を上げると同じタイミングで直輝に名前を呼ばれた。
「祥こっちおいで」
「何かあったの?」
「見たら分かるよ」
言わるままに直輝の元へ行くと眩しいその光に少しだけ目の奥が痛んだ。
でもそんな痛みも気にならないぐらい気持ちは急上昇していって、サラサラな白髪の向こう側に、同じく白に染まった景色が窓の外に広がっているのを見て自然と笑顔が零れた。
「え……!」
「どうりで寒いわけだ」
「直輝! 外ッ、外!」
「落ち着け」
ドキドキッと鼓動が速くなる。
直輝は少しだけ面倒くさそうな声を出していたけど俺は嬉しくて舞い上がるのも無理ない。
だって雪なんて久しぶりだから。
直輝とふたりで見る雪は何年ぶりになんだから。
真っ白な雪景色に心が踊り出し嬉しくなって駆け出そうとすれば直輝の腕に腰を掴まれて阻止されてしまった。
「外出るなら暖かい格好してから」
「大丈夫だよ!」
「だいじょばないの。 こっちおいで」
「……ケチ。 子供扱いするな」
「犯すよ?」
「ッ、分かったよバカ!」
肩眉あげて整った顔で下衆な事を言う直輝にドキッとした自分が憎らしい。
本音言えば、別に、構わないけど、とかなんとか……もじもじする。
でもそれを言えるだけの勇気が俺にはないから断念して腕をひかれてしぶしぶ後を着いていく。
むすっとしながら歩いて居たけど何気なく手を握られている事に気づくと、今度は頬が緩んできて、バレないために下を俯いていた。
この時間が嬉しいなぁ。
また当たり前の様に直輝が傍に居るのが嬉しくて、直輝の体温を感じれるのが幸せで。
今日がいつもよりもうんっと寒い日で良かったなんて思うんだ。
沢山寒かったら、もっともっと直輝が暖かいって分かるから。
握られた手のひらがどこよりも何よりも暖かくて、冬ってやっぱり好きだなぁなんて思った。
「何ニヤけてんの?」
「ニヤけてないしこっち見んな!」
「朝からやらしい〜」
「なっ、俺は直輝と違う」
「そう? てっきり祥も聖夜と同じでムッツリさんだと思ったんだけど」
「ち、違うから! 何で俺がムッツリ何だよっ」
「自分で考えてみたら? 思い当たる節あるんじゃないのか」
「だからこっち見んな!」
「はいはい」
繋がれてない反対の手で直輝の目を覆う。
そしたら流れるように直輝も空いた手で俺の手を掴んできて、そのまま手首にチュッとキスをしながら俺を熱っぽい瞳で見てくるもんだから繋がれた手から、唇が触れている肌から、この緊張と期待がバレないかと自然と息を潜めてしまう。
「本当はここで今すぐ抱いて欲しい?」
「ーーッ」
「このまま抱きしめて、乱暴に唇を奪ってさ。 激しくされると祥は直ぐに腰抜けちゃうから、立てなくなった体を抱き上げてリビングに戻って……。 ね、想像した?」
「う、るさい……っ」
「俺が聞いた答えはそれじゃないけどね」
「……っ、はぁーッ、直輝」
薄く形のいい唇が動く度にその言葉を追いかける。
頭の中に囁かかれたハスキーな声が響いてクラクラしてくる。
言われた通りの行為を頭の中で浮かべただけなのに悩ましい吐息に直輝を呼ぶ声はまるで女の人の様に猫なで声だった。
思わず恥ずかしさで口を塞ぎたくなるのに、それが出来なくてもっと顔が熱くなる。
初めからこうなる事を想定していたみたいに俺の両手は直輝の手でしっかりと塞がっていた。
あながち想定していたみたい、は間違ってはいないだろうし、正しく言うなら「みたい」は要らない言葉だ。直輝は想定していたんだろう。
朝目を開いた瞬間から俺がもっともっと深い奥のところで直輝を求めてる事を直輝はお見通しで知らないふりをし続けていたんだと思うと、この意地悪でドSな幼馴染みに腹が立ってきた。
「ふふっ、祥ー?」
「意地悪……いつも意地悪ばっかだ」
「そうかな。 俺、祥にはかなり甘いと思うよ?」
「……嘘。 直輝は俺に意地悪だよ」
ううん、俺の方こそ嘘だ。
知ってるよ直輝が俺にめちゃくちゃ甘いなんてこと。ドの付くほどに過保護なことも。
でも、もっと甘やかして欲しいなんて欲が溢れる。
俺が例えば上手く甘えられる子だったら直輝はもっと喜んでくれた?
俺がちゃんと好きを口に出来る素直な子なら直輝は今の倍俺に好きをくれた?
でも俺はいくら頑張っても何度後悔しても、結局はいつもこんな、可愛くない甘え方しか出来ない。
「直輝は、意地悪だよ」
「そう?」
優しくされてる事なんて分かってるのに。直輝が俺に甘いのなんて分かってるのに。
もっともっと直輝に可愛がられたくてキスされたくて。沢山直輝を愛したくて。
こんな可愛くない甘え方をする。
「じゃあもっと優しくしなきゃ」
「……シてよ」
「いいの? シて」
「……意地悪、やだ」
でも直輝は素直じゃない俺の曲がった甘え方を受け入れてくれるから。
「優しくしたいから、キスしてもいい?」
「……ッ」
「ふっ、これも意地悪に入る? 案外優しくするのって難しいね。 祥の事大好きだから困った顔も泣きそうな顔も見たくなる」
そう言ってすぅと頬を撫でる手は優しい。
熱くなった顔を直輝の胸に沈めると、トクントクンと優しい鼓動が聞こえてきて、そのまま目を閉じるとこの胸の中が俺の居場所なんじゃないかってぐらいすっぽりと収まる。
「大好きだよ」
「……っ、ん」
「祥の事誰よりも」
「うん」
「愛してる」
「ーーッ、俺……も」
「ふふっ」
くすぐったそうに笑う直輝の吐息が髪にかかる。何度も愛でる様に髪をすかれて。撫でられて。
その後に繰り返されたキスは、あんまりにも優しいものだから悲しくなんてないのに何故なのか涙がこぼれ落ちた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
328 / 507