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テキーラ・サンライズ
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◆
『ねぇ耀さん』
『どったよ瑞生ちゃん』
『耀さん、俺とずっと一緒に居たい?』
『……ん?』
『耀さんは俺とずっと一緒に居たいのかなって。 耀さんが俺と居たいなら一緒に居てあげよっかな〜て』
そう言ってクスリと笑った瑞生に対して初めて言葉を失ったのはこの時だった。
上手く返す言葉も見つからないまま。
俺のいつもと違う反応に気づいた瑞生はその瞬間どこか悟るような笑みを見せて、それ以来『ずっと一緒に』なんて言葉は俺の前で使わなくなった。
──『耀、俺達ずっと一緒に居ようね』
遠い昔でそう言われた時、その頃の俺はなんと返していたっけか……。
瑞生と変わらない歳の頃、餓鬼の頃から惚れていた夏紀にそう言われた時に俺は確か馬鹿だと分かっていて嘘をついた。
俺と夏紀の間に"ずっと一緒"は成立しない。
お前が他の女と結婚するなら俺は夏紀から離れる。
それ迄はただこの隣に身を置いて生きていく。
それで構わないと決めた二十年以上の時間。
一生なんて言葉は無いとわかっていても、かけられた夏紀のその言葉があんまりにも嬉しくて嘘をついた。
それは後から自分の首を締め付けた約束に変わる事をわかっていて、嘘をついた。
「俺結婚する! 耀結婚式来てな!」
それから直ぐに、分かっていた未来はやってきた。
隣に連れて歩くのは綺麗な女。
どっからどう見てもいい女だ。
流石夏紀。上等な奴を嫁にしたなと煙草を咥えて考えていたのを覚えている。
腹の奥底で灰にまみれた真っ黒な言葉を隠して。
「耀?」
「んー」
「……耀!」
「痛てぇ。 んだよ」
「じゃあこっち向けよ!」
「……めんどくせぇな」
ムッとして俺の肩を思い切り殴ってきた夏紀に向かってふーっと煙草の煙を吹きかける。
そうすればもっとムッとして睨みつけてくる夏紀が可愛くて、思わずその唇に噛み付いてやって困らせてやろうかなんて感情が芽生えた。
「何で怒ってんだよ」
「ふっ、俺が何でキレる理由がある?」
「……百合が嫌いなの?」
「あー。 まあタイプではねぇけどな。 俺はもっと肉付きのいい女が好きだ」
「そうじゃなくて!」
「……嫌いじゃねぇよ。 お前が惚れたなら俺が言うことはねーだろ」
「でもさ……」
何が不満なのか。
いつまでもべらべらと文句を零す口を本気で閉ざしてやろうかと頭の後に手を回して引き寄せる。
後もう少し、ほんの数ミリで重なり合いそうになったその瞬間邪魔は入った。
「耀〜ムカつくから抱いて〜」
「怜また喧嘩?」
「……」
やっぱりこうなるんだな。
どこか試したこの行為は想像したとおりに遮られた。
もう何度目か、今すぐに無垢な夏紀をぐちゃぐちゃにしてやろうかと思う度にまるでお天道様が見ているかのように邪魔が入る。
それは俺に手を出すなと言うかのようで神だのなんだの一切信用してない俺も少しばかりくだらねぇ噂を鵜呑みにするほどだ。
「なぁー耀聞いてんの?」
「……うるせぇよ。 そこら辺のヤツに抱かれとけ」
「俺は耀がいいんだってば」
「くせぇ……香水は嫌いだって言ってんだろ。 抱いて欲しいんならその匂いやめろ」
「え〜やだっ」
「……」
「俺が女物の香水つけてんのはあんたにマーキングする為なんだからさ」
「……んなもんで牽制考えてるような餓鬼は相手しねーよ」
「っ、餓鬼扱いすんな」
「ハッ、餓鬼」
肩眉上げて嘲笑う様な視線を送れば怜は一段とイラつく。
「ほんっとムカつく! つーか耀が相手した昨日の女全ッ前可愛くないしぶすじゃん」
「お前また俺が抱いた女と寝たのか?」
「悪い?」
「……その性癖辞めろ」
「なんで? 別に良くない? だってもう俺の体抱いてるんだし」
「こ、こら! 怜……」
「夏紀っちも耀に抱かれたら? ハマるから」
「〜〜っ?!」
「っ、痛てぇーよ」
ボンッと顔を赤く染めた夏紀が馬鹿力で殴ってくる。
照れるのは構わねーが俺を殴らないで欲しい。
こんなうぶな反応してまるで害のないおっとりした顔をしていても夏紀はハタチを過ぎる迄不良だったんだ。
そんな殴り慣れてる奴の拳は重くて痛てぇ。
まあ厳密に言えば夏紀は高校を卒業と共に大学に進む時に、遊ぶのは辞めて更生したのだからもう数年前になるが。
相変わらずその拳は人を殴ってきただけの重みが乗せられていた。
「俺と耀は親友なんだからそう言う変な事言わないの!」
「へぇ〜親友ね……そうなの? 耀」
「……怜ついて来いよ」
「ふふっラッキー」
「あ! こらっ、もーほんとに二人は……」
奥の部屋へ怜を誘う俺を夏紀がどうしようもないと目で訴えてくる視線が背中に突き刺さる。
今更、呆れられようがどうでもいい。
結婚すれば俺は夏紀と居るつもりはねーんだから。
「耀……今日は俺が動いていい?」
「俺の上に乗るって?」
「いいじゃん……騎乗位やってみたいんだもん」
「お前が俺の上に乗るなんて笑えねー冗談だな」
「ッ、あっ、ん」
「こんな直ぐに濡れる奴が動けんのか?」
「んぁっ、動ける……ッ、よ」
「……口だけは一人前だなお前は」
「ァアッ! ん、はぁっ、入ってる……」
解して来たのか怜のそこはトロトロに熱い。
指を沈めてみればローションが入っていて気持ち悪くねぇのかとどうでもいい事を考えながら荒く解すと怜の体を貫いた。
「か、っがり……っ」
「キスはしねぇ」
「やっ、ぁん、やだぁっ、キス、キスしたい〜ッ!」
「暴れんなってのチンコが折れる」
「え、それはダメ。 俺の大好きな耀が折れちゃったら困る」
「お前相変わらずだな……」
アンアン言っていたのが嘘のように真顔で怜が話す。
相も変わらず性に緩い俺と怜に、そんな俺達を見て心配する夏紀。
「は〜耀とずっとセックスだけする人生とかないの?」
「頭の中スッカスカだな。 少しは勉強しろ」
「よく言うよ、あんたもろくに勉強なんかしなかった癖に」
「まあな」
どこからどう見ても弾かれ者だった俺達は社会不適合者の集まり。
街で俺達のグループはそう呼ばれていた。
そんなグループが出来たのは俺と夏紀が中学の頃かそんなどうでもいいことは覚えていない。
そもそも俺達が作ったわけじゃなかった。
喧嘩だけがただ楽しくてだらしなく喧嘩をしてどうしようもない怒りの憤りのぶつけ先はいつも殴り合う事で発散していた。
それを繰り返していたらいつの間にか勝手に周りがくっついてきた。
皆、居場所が無い弾かれ者。
どこに生きる場所を見つけたらいいのかわからなくてうろうろとどうしようもねぇ事を繰り返して後悔ばっかりを重ねてきた鈍い目つきの腐ったやつら。
俺と変わらないそいつらは否定も肯定もしない俺の傍でいつの間にか笑うようになって、いつの間にか家族のようになっていた。
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